【儲かる農業】(06) 熟成肉ブームで赤身に光明…製法無視の腐敗肉にご用心!

赤身の熟成肉が大ブームだ。背景には、消費者の嗜好の変化と、牛肉価格上昇に悩む飲食店の事情があった。一方、“霜降り偏重”だった国内の畜産農家にも大きな影響を与えている。

20160328 08
レアに焼かれた分厚いステーキを噛み締めると、じゅわっと肉汁が溢れ出す――。今、暫く寝かせて旨味を増した“熟成肉”が大人気となっている。“熟成肉ブームの仕掛け人”と呼ばれる『さの萬』の佐野住治社長は、老舗食肉販売店の3代目。きっかけは10年ほど前、アメリカの人気ステーキ店で赤身の“ドライエイジングビーフ”を食べたことだった。肉本来の旨味やその柔らかさ、特有の風味は、日本の霧降り肉とは一線を画し、「これぞ本当の肉だ!」と衝撃を受けたという。折しも、日本の顧客から「霜降りの脂はしつこくて、沢山は食べられない。さっぱりした赤身で、もっと美味しい肉はないのか?」という声を聞いていた。以来、独自に研究を重ね、国産牛のドライエイジングビーフ化に成功。毎月セミナーを開催する等して、その手法を広めている。実は、熟成肉がブームになった背景には、「飲食店にとって都合が良かったから」という事情もある。

近年、牛肉が値上がりしており、小売価格はこの3年で2~4割も上昇した。理由は、需要に対して供給量が減ったから。2010年、宮崎県で口蹄疫が発生。翌年には東日本大震災が起こり、多くの農家が廃業した。そして、国内牛肉生産の1割を担っていた『安愚楽牧場』が経営破綻。これらのトリプルパンチで、国産牛肉の生産が減少している。加えて、オーストラリアやアメリカ産の輸入牛肉は、中国を筆頭にアジア各国の購買力が強くなっている為、日本は買い負けている状況だ。牛肉の調達費用が上がった飲食店は、メニュー価格に転嫁できなければ、「肉の質を一段落とし、安い商品で代替している」(食肉関係者)。この切り替えに際して、比較的安価な赤身肉・熟成肉がぴったりと嵌まったという訳だ。また、熟成肉ブームは、これまで日の目を見なかった牛の畜産農家を救ってもいる。熟成に適したホルスタイン・短角和種・褐毛和種等の品種が脚光を浴びているのだ。ホルスタインと聞くと乳牛のイメージが強いが、雄牛は昔から肉用として飼育されていた。ところが、“霜降り偏重”の国産牛肉市場においては、ホルスタイン雄肉は赤身が多い為に評価が低く、採算が取れずに廃業する農家が後を絶たなかった。しかし、風向きは大きく変わった。赤身肉の需要が高まったことで価格は3~4倍になり、息を吹き返す農家が増えている。ところで、熟成肉を作るのには、大別すると3つの製法がある(上段右図参照)。佐野氏が広めるドライエイジングは、肉に強い風を当て、微生物を付着させて熟成させる本場のニューヨークスタイルだ。厳格な温度・湿度・時間管理が必要で、大変な手間暇がかかる。一方、現在の日本で熟成肉として流通しているものの多くは“ウェットエイジング”と呼ばれ、これは真空パックにした肉を、水分を飛ばさずに熟成させる方法だ。コストも掛からず簡単にできる。佐野氏は、「ウェットの場合、熟成肉の美味しさを引き出しているとは言えない」と強調する。因みに、本誌取材では、大手スーパーや外食チェーンの熟成肉の殆どがウェット製法だった。将又、飲食店の中には、これらの製法に従うことなく、ただ単に寝かせた肉を出している場合もある。熟成ではなく腐敗している可能性もあり、食べるのは非常に危険だ。熟成肉ブームに便乗した怪しい肉には用心したい。


キャプチャ  2016年2月6日号掲載


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テーマ : 農政
ジャンル : 政治・経済

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