【儲かる農業】(07) 増えるイノシシやシカをジビエとして食べよう!

20160404 04
「闇肉が多くの店で当たり前のように提供されている」――。21世紀に入って既に15年も経過したというのに、何やら不穏当な言葉が聞こえてくる。これは、イノシシやシカ等の野生動物を食材としたジビエ料理に関わる関係者の言葉だ。一昔前なら「臭い」と嫌われ、一部の好事家だけのものだったジビエ料理だが、今や高級フレンチからハンバーガーまで、美味しくて臭みの無いメニューが増えた。飲食店検索サイトの『ぐるなび』では2014年、“ジビエ”という言葉の検索数が前年比359%に跳ね上がっている。「さあ、これから一般化しよう」という時に、“闇肉”等というフレーズが飛び交うのはどういう訳だろうか? 業界でいう闇肉とは、食肉処理施設を介さずに、猟師が捕獲後に川等で内臓を洗い流したり血抜きしたりしただけで、飲食店に納入される肉のこと。野生動物の皮には様々な菌が付いているし、内臓には寄生虫等もいるから、適切に処理しなくては衛生面で不安が残る。猟師にはベテランもいるが、危険性を十分に理解していない者もいる。家畜と異なり、野生動物の流通は数が少なかった為、これまでは規制も緩やかだった。しかし、ユッケによる食中毒事件等を見ればわかるように、象徴的な事件が起こると一気に規制が強化され、消費者は遠ざかる。関係者は、こうした事態にならないように整備や啓蒙を急いでいる。国も解体処理や調理方法等に対してガイドラインを示したりと、深刻な事件が起こらないように動き始めた。というのも、イノシシやシカの肉を食べてもらえれば、里山の崩壊や農業の停滞の打破に繋がるからだ。今、日本では野生のイノシシやシカが急増している。その数は何と、10年前の2倍。近年、農作物が食い荒らされたり、掘り返されたりする党、その被害額は年間200億円もの水準が続く。被害は農作物だけではない。高山植物の花がシカに食べられてしまった為に、観光が打撃を受けた地域もある。また、木の皮を食べてしまう為に木が枯れ、更には土を掘り返してしまう為に土壌が緩み、土砂崩れが起こる地域も多い。東京都心から近い神奈川県ですら、その被害に悩まされている。被害は人間だけではなく、草や昆虫を食べ尽くすことから生態系にも及ぶ。国立公園の殆どが、シカの害を受けているという。抑々、イノシシやシカは何故増えてしまったのか。温暖化で住み易くなったことや、猟師の高齢化等が挙げられている。

何より大きいのが、日本の法律では保護されるべき動物で、捕獲をすると罰せられる対象だったこと。イノシシやシカは絶滅寸前にまで追い詰められた為、1918年に鳥獣保護法ができ、保護の対象となった。しかし、その期間があまりにも長過ぎた。保護ではなく管理に変わったのは、僅か10年前のことだ。この間、イノシシやシカは増え続けてきた。里山に目を向ければ、増え過ぎた野生動物がいる。その一方で、都心ではジビエブームが起こっている。「それならば、どんどん捕獲して食べてしまおう!」と考える自治体や団体等が増えているのだ。面積の8割を森林が占める岐阜県も、その例外ではない。岐阜大学には鳥獣対策に関する自治体(岐阜県)の寄付講座が開設されているが、これは全国初のケースだ。森部絢嗣特任教授や地元で建設業を営む所竜也さんたちが、岐阜産のジビエをブランド化しようと動いている。2人とも、実際に罠でイノシシやシカを捕獲し、解体まで行い、今では初心者に対する指導もしている。「東京に出荷するだけではなく、地元のレストランで地元のジビエを提供して観光の活性化にも貢献したい」(所さん)。しかし、一方で需要があり、もう一方で野生動物の増加が深刻だからといって、両者を繋ぎ合わせるには現状では課題が多い。先ず、冒頭で闇肉と表現したような流通の問題がある。これまで、個人の猟師と個人が経営する飲食店の間で取引されてきた慣行があるから、食肉処理施設を経ないものが多い。このことが、衛生面での問題を招きかねない。また、肉質を評価する目利きが少なく、価格形成メカニズムが作られていないから、ある所では味が良くないシカが高値で売られたりするという。勿論、その逆もある。更に、猟期が11~2月に限られている為、安定供給ができない。抑々、シカが最も美味しいのは秋とされている。猟期が冬に限られるのは、銃を使用する際に木の葉が無く、見通しが利いて安全とされるからだが、罠を使った猟ならば見通しは関係ないので、猟期を柔軟に定めることも求められるだろう。細かいことを言えば、銃で仕留めたり、罠に掛かったりしてから、数時間以内に絶命させて血を抜く等の処理をしなければ肉質が極端に落ちるが、その方法は狩猟免許の取得時には習わず、先輩猟師から教えてもらわなければならない。こうしたノウハウ伝授のシステムも構築すべきだ。価格が定まらず、「処理が面倒だから」と捕獲の後に廃棄される野生動物も多い。今後、害獣対策は益々進んで捕獲数も増えるだろうから、それを食卓に並べる為にも、捕獲・流通の問題は解決すべきなのだ。


キャプチャ  2016年2月6日号掲載


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テーマ : 農政
ジャンル : 政治・経済

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