【経済の現場2016・揺れる春闘】(05) 統一交渉、電機綻び

20160406 01
「東芝の統一交渉からの離脱を決定する」――。電機メーカーの労働組合が加盟する『電機連合』が2月22日、東京都内の本部で開いた会議。有野正治委員長が各労組の幹部に宣言した。出席者の1人は、「極めて異常だ。影響を広げてはならない」と危機感を露わにした。半世紀以上に及ぶ“大手主導の統一交渉”の異変は、業界に波紋を呼んだ。電機大手の労組は1962年からベースアップ(ベア)要求等を揃え、歩調を合わせて経営側に追る統一交渉を展開してきた。他業種より賃金が低かった時代から、横断的な団結で賃上げを目指した。近年は海外勢の台頭で苦戦する中、労組は『日立製作所』『東芝』『三菱電機』『パナソニック』『富士通』『NEC』の大手6社による統一交渉を依然、重視していた。東芝の離脱は、不適切会計の発覚を引き金とする経営悪化が理由だ。「うちが統一交渉から離れることはあり得ない」。2014年度の税引き後利益が赤字に転落したことを発表した昨年9月。東芝の経営幹部は断言した。東芝の労使は名門意識が強い。電機連合の前身の『電機労連』は1953年、東芝労組等3労組によって結成された。労組は春闘をリードし、経営側には石坂泰三氏・土光敏夫氏を経団連会長に輩出した自負がある。経団連会長を2人出した実績は『トヨタ自動車』に並ぶ。だが、風向きは変わった。年末になって、東芝が2015年度の大幅な赤字予想と計1万人超の人員削減を発表すると、この幹部は「賃上げは難しい」と姿勢を転じた。他の大手労組幹部は、「東芝の状況はわかる。しかし、『離脱していい』とは簡単に言えない」と漏らす。統一の崩壊は、労組の存在意義を脅かすからだ。

しかし、各社の事業は、日立製作所がインフラ(社会基盤)、富士通がシステム等と多様化が進み、業績動向も区々になった。経営側は「事業内容があまりにも違い、(統一回答は)意味が無くなってきている」(日立製作所の中畑英信執行役常務)と、労組の反応に冷ややかだ。統一交渉の難しさは他業種にも表れた。『新日鉄住金』等鉄鋼大手4社は、統一した要求と回答を隔年で行うのが慣行となっている。集中回答日前日の15日午前。4社の交渉担当者が集まり、労組の「2年で8000円の賃金改善」という要求に対し、「2年で2500円」の回答を導いた。例年、集中回答日の数日前には事実上、決着するが、今年はギリギリまで縺れ込んだ。鉄鋼業界で統一の慣行が始まったのは1970年代。業界内で賃金差を設けず、業界全体の発展に繋げるのが狙いだった。だが、鉄を大量消費してきた中国の経済が悪化し、業績格差も生まれており、今春闘は「回答額の統一の存続を巡り、鬩ぎ合う交渉」(労組幹部)になった。自動車大手は、ベア要求額は統一するものの、回答は各社が労組に其々行う。トヨタのベア1500円を目安に、『日産自動車』を除く各社のベアは1100~1500円で決着した。大手の動向は下請けの春闘に影響する。『マツダ』が得意先とする中国地方の部品メーカー。本格化してきた労使交渉で、3000円以上のベアを要求する労組に、経営側が本音を吐露した。「マツダから値下げ要求が強くなりかねない」。マツダの回答額(1200円)を超えれば、「財務に余裕がある」と見られてしまう。そういう意味だ。本来なら、業績に応じて自由に回答額を決められる筈だが、取引先の大手の意向は無視できない。中小は横睨みではなく、縦の関係に縛られるのが実態だ。


≡読売新聞 2016年3月22日付掲載≡


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