【宮崎哲弥の時々砲弾】 リベラル再装填のために part.4

『国際金融経済分析会合』が開かれた。この政府主催の会合では、先ず内外の有識者によって世界経済や国際金融について現状分析や見通しが披露され、それらに関して識者と首相や閣僚らとの意見交換がなされる。5月の伊勢志摩サミットに向けての予備調査という位置付けらしい。兎に角、顔ぶれが凄い。特に、3月16日の第1回会合ではジョセフ・スティグリッツが、22日の第3回会合ではポール・クルーグマンがプレゼンテーションを行ったのだ。当コラムではお馴染みの名前だが、何れもノーベル経済学賞受賞者で、現代を代表するリべラル派である。ご両人の分析と見立ては微妙なところで食い違いも見られるが、日本政府への建言は粗一致している。

①2017年4月に予定されている消費税率の引き上げは時期尚早であり、見送るべきである。
抑々、両者とも「2014年4月の税率8%への引き上げ自体が誤った政策だった」と看做している。私も「若し強行すれば、安倍晋三政権の失策となる」と警告したが、大多数の経済学者・エコノミスト・新聞による「増税の影響は短期にして軽微」の大合唱の前に掻き消された。増税後の長期に亘る個人消費の減少や家計の予想インフレ率の低迷を見れば、税率アップの先送りでも生温く、無期限凍結が当然であり、それどころか消費税の税率を5%に戻す。“減税”こそが妥当に見える。安倍政権にできるのは精々凍結までだろうから、国政選挙を前に、野党リベラル勢力は一致団結して“消費減税”を主張すべきところだが…。ところが、だ。リベラルを詐称する“経済右翼紙”朝日新聞が、またまた糞社説を掲げた(3月17日付朝刊)。分析会合第1回目を受けたものだ。「分析会合でまず意見を述べたノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ・米コロンビア大教授は、世界経済の弱さを強調し、消費増税の見送りを進言した」とあるから、仮に反対の見解を示すにしても、マーティン・ウルフには及ばないものの、それなりに読ませる社論を出してくるだろうと期待していたら…。スティグリッツの内外情勢の分析や、それを踏まえた提言に対する論評は皆無だった!




現況が、消費増税再延期の条件とされているリーマンショック級の経済混乱に当たるか否か等という、全く本質的ではない論点に絞って政局絡みの愚考を巡らし、日本の役人や御用学者から仕込んだ財政危機説を性懲りもなくなぞった挙げ句、「現状は“リーマン級”にはほど遠い。消費増税は予定通り実施するべきだ」ときた(笑)。スティグリッツは、プレゼンに際して興味深い資料を配布した。経済部記者上がりの論説委員は碌に読みもしなかったか、或いは目を通したものの理解できなかったのだろう。でなければ、こんな低レヴェルの社説にはならない筈だ。スティグリッツのペーパーには先ず、「世界経済が大沈滞“Great Malaise”に陥っている」と明記されている。更に、米中欧の現況分析と世界を覆う長期停滞の要因と特質が示される。総需要の不足がその元凶であり、こういう時期にサプライサイドの改革、世にいう構造改革をいくら行っても、「失業を増加させるだけで、経済成長には寄与しない」。アべノミクスにおいて金融政策は十分に実施されたが、それのみでは民間需要の不振を反転させ切れなかった。では、必要な施策とは何か? ここでも、スティグリッツとクルーグマンの見解は一致している。

②大胆な財政出動によって内需を喚起すべし。
そればかりか、最新の『フォーリンアフェアーズ』(2016年3月-4月号)では、ローレンス・サマーズが両者と同様、長期停滞説を唱え、「総需要不足に対抗するには財政政策が有効だ」と説いている。朝日新聞や民主党改め民進党は、どこまでガラパゴス化し続けるのか?


宮崎哲弥(みやざき・てつや) 研究開発コンサルティング会社『アルターブレイン』副代表・京都産業大学客員教授。1962年、福岡県生まれ。慶應義塾大学文学部社会学科卒。総務省『通信・放送の在り方に関する懇談会』構成員や共同通信の論壇時評等を歴任。『憂国の方程式』(PHP研究所)・『1冊で1000冊読めるスーパー・ブックガイド』(新潮社)等著書多数。


キャプチャ  2016年4月7日号掲載


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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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