『ユニクロ』が崩す“値上げの春”――『ミスタードーナツ』『吉野家』も低価格へ、レジャー分野は強気続く

ここ数年続いていた“値上げの春”から一転、今年春には『ユニクロ』等、商品価格を引き下げる企業が出てきた。背景には消費マインドの冷え込みがあり、安さで消費者を呼び戻す狙いだ。引き続き値上げする企業も多いが、景気の先行きは不透明で、今が最後のチャンスという読みもありそうだ。 (武田安恵)

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「平日も週末も、毎日お買い求めやすい価格に見直しました」――。『ファーストリテイリング』が運営するカジュアル衣料品チェーン『ユニクロ』のウェブサイトのトップページには、今月時点でこう表示されている。平日の店頭を覘くと、税別1290円だったエアリズムクルーネックT(8分袖)」の通常価格は990円に。2490円だったオックスフォードシャツは1990円で売られている。ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が2年連続の値上げ実施を宣言したのは、昨年春のことだった。「今の品質を守る為には値上げは必要」と理解を訴えた。だが、軌道修正を迫られたのは、値上げによる客数の減少を、客単価の増加で補って売り上げを確保するという構図が崩れたからだ。昨年の後半から客数の減り方が大きく、売り上げも前年割れする月が目立つようになったのだ。売り上げを増やす為、週末の大規模セール頼みも強まっていたようだ。今月以降は、定番商品を中心に平日の価格を引き下げる一方で、セールを抑制すると見られる。ユニクロに求められていた“割安感”に回帰すべく、消費者が納得できる品質と価格のバランスを再構築する。1年前の昨年は円安が進み、原材料費も高騰が続いていた。景気の先行きには楽観的な見方も強く、多くの企業がコストアップを理由に商品・サービスを値上げした。しかし、値上げばかりだった昨年までとは様変わりで、今年は判断が分かれ始めている。ドーナツ専門チェーンの『ミスタードーナツ』も、ユニクロと似た動きだ。同社は、不定期に実施している“100円セール”等のキャンペーンを減らす代わりに、人気商品のポン・デ・リングやオールドファッション等の定番商品の定価を1~2割引き下げる。運営会社の『ダスキン』によると、店舗改装と並行して値下げを進める方向で検討しているという。コンビニエンスストアがドーナツの販売を強化し、競争が激化している事情もある。牛丼チェーンの『吉野家』も、割安品を投入して値ごろ感を演出し、来店を促す。主力商品の牛丼並盛より50円安い1杯330円の豚丼を、定番商品として復活させる。具材が野菜中心のベジ丼シリーズも50~60円値下げした。吉野家は2014年4月以降、2回に亘り牛丼並盛の値上げを続けていたが、今後は低価格志向の強い客の取り込みを強化する狙いのようだ。

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ここにきて価格政策で“割安感”を強調する企業が相次ぐ背景には、「『景気の先行きが不透明だ』と感じる消費者が増えている」(『ドイツ証券』の風早隆弘アナリスト)という要因がある。消費者庁が発表した先月の物価モニター調査結果(速報)では、今後3ヵ月間に前年同期より支出を「減らそう」とする人の割合は57.5%と、前月から3.5ポイント上昇。消費増税直後の2014年4月調査の59.3%以来の高水準となった。消費者は、財布の紐を締める傾向にあるのだ。「♪値上げに踏み切ろう」──。歌声に合わせ、社長と社員たちが一斉に深々と頭を下げる“お詫びCM”が話題となった。25年ぶりに小売価格を60円から70円へと値上げした『赤城乳業』の氷菓・ガリガリ君のテレビCMだ。『ロッテアイス』や『明治』等、アイスの業界では昨年、大手メーカーが挙って値上げした。赤城乳業は1年遅れだ。大手の食品卸によると、「2014~2015年に一斉に値上げしたメーカーは、実際に店頭でも値上げを浸透させ、コスト増を吸収できた。最近は原油安や円高の追い風もあり、値上げは一服している」と指摘する。この為、決して値上げをし易い環境ではない。だが、来年になれば消費増税も計画され、消費不振が鮮明になる恐れがあり、もっと値上げがし難くなるかもしれない。『味の素』のクノールカップスープも、33年ぶりの価格改定に踏み切った。この2つの製品に共通して言えるのは、シェアとブランド力の高さだ。ガリガリ君の販売数は年間約4億本と、アイスの“トップブランド”だ。クノールカップスープの国内シェアも4割弱と高い。「値上げ後も、客離れはあまり起きない」という読みがあるのだろう。レジャー関係では強気の企業が目立つ。『東京ディズニーリゾート』を運営する『オリエンタルランド』は、今月1日から入場券に相当する1デーパスポートを500円値上げして7400円にした。値上げは3年連続となる。「消費の重点が“モノ”から“コト”へと移行している今、レジャー分野は値上げがし易い」と、『SMBCフレンド調査センター』の田中俊アナリストは分析する。ただ、消費支出が減少傾向にある今、連続値上げは一歩間違えれば客離れを引き起こす危うさを孕む。各社の判断が分かれるのは、景気の先行きが一層見え辛くなっていることを反映しているとも言える。企業は難しい判断を迫られている。


キャプチャ  2016年4月11日号掲載


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