【丸分かり・激震中国】(09) 怒涛の買収攻勢が産業構造を破壊する

中国が次々と半導体企業の買収を進めている。国家主導で産業を育成しようとしているが、狙いはそれだけではない。 (『IHSテクノロジー』主席アナリスト 大山聡)

20160418 06
昨年の半導体業界は、大規模なM&A(企業の合併・買収)が目立った年だった。『NXPセミコンダクターズ』(オランダ)による『フリースケール』(アメリカ)の買収、『インテル』(同)による『アルテラ』(同)の買収、『アバゴテクノロジー』(同)による『ブロードコム』(同)の買収等、何れも100億ドル(約1兆1700億円)を超える大型買収だ。相次ぐ大型の再編・統合が起こる中、特に目立ったのが中国政府系ファンド『清華紫光集団』の動向だ。紫光集団が2015年中に明らかにしている主な買収・提案案件は、アメリカのパソコン大手『ヒューレットパッカード(HP)』の中国子会社である『H3Cテクノロジーズ』の株式51%の取得、アメリカの半導体大手『マイクロンテクノロジー』に対する230億ドル(約2兆7000億円)の買収提案、アメリカのHDD大手『ウェスタンデジタル』の株式15%の取得、台湾のメモリー実装検査大手『力成科技』の株式25%の取得等だ。これ以外にも、正式な発表ではないが、日本の半導体大手『ルネサスエレクトロニクス』の株式69%を保有する『産業革新機構』にも、株式譲渡の打診があったとされる。次々と凄まじい勢いで買収を加速する狙いは何か? 中国の半導体産業は、中国半導体ファウンドリー(受託生産)大手の『SMIC』等、ファウンドリー分野ではある程度実績を上げている企業が存在するものの、中国ブランドの世界半導体シェアは2.7%に過ぎない。中国の半導体産業が外資系企業の実績に依存しており、中国国内の開発や設計の技術やノウハウの蓄積が十分ではなく、産業として根付いているとは言い難い。中国は国家戦略『中国製造2025』で10の重点分野を掲げており、半導体はその中に含まれている。しかし、半導体産業を自力で育成する為には、人材も技術もノウハウも足らず、実現するには膨大な時間を要する。紫光集団は、これを短縮する為、数々の買収を進めているのだ。特に、マイクロンへの買収提案には230億ドルという、中国企業による海外企業の買収としては最大規模の大金を提示しており、中国の気迫が窺える。

マイクロンの世界半導体シェアは4.5%で、DRAM(メモリーの一種)市場では24.6%を占める。中国はマイクロンを買収し、開発技術や製造技術を国内に移管させることで、最短・最速で国内の半導体産業の育成を狙っている。また、マイクロンは軍事用途として使われるDRAMの製造も手掛けており、こうしたノウハウも、将来的に軍事用途に活用したい中国から見れば、極めて魅力的だろう。しかし、買収によって、果たして本当に産業を育成できるだろうか? 買収がいくら成立しても、その企業の技術やノウハウを国内企業の育成に活用できるかは疑問であり、現実的にはそのハードルは高いだろう。アメリカ国内では「軍事利用を見据える中国だからこそ、買収に応じる訳にはいかない」という反発も発生しており、今後は買収そのものが成立し難い状態に差し掛かることも考えられる。既にマイクロンやルネサスについては、何れも交渉が不調に終わっており、今後の交渉には政治的要素が多分に加わり、難航するケースが増えるだろう。また、こうした中国による半導体企業の買収は、半導体の産業構造を崩す新たな弊害を生む可能性が高いと見ている。中国がDRAMに目をつけたのは、DRAMが半導体の中でも極めて池用性が高く、安く大量に作れるメーカーが有利となる製品である為、他の半導体製品に比べて量産効果の実績を上げ易く、設備投資競争に勝てばシェアを獲得できると考えた為だ。しかし、DRAM市場は現在、稍供給過剰で、DRAMを搭載するパソコンが売れない一方で、DRAMメーカー各社の生産能力は増加している状況が続いている。メーカー各社は、現在の需給バランスを分析しながら生産量を調整し、極端な単価下落を引き起こさないよう、慎重な戦略を立てている。そこへ、“DRAM市場で一刻も早く実績を築き上げたい”中国がDRAM工場の建設を強行し、量産を始めれば何が起こるか? 他の産業と同じように過剰生産に陥り、価格が暴落する等、市場は混乱するだろう。




■2018年には液晶パネルでシェア首位に、先端技術でも追い上げ
世界の液晶パネル生産能力は、2000年から2015年にかけて大きく変化してきた。2000年の時点では、日本は48%のトップで独走状態、中国のシェアは最下位の2%だった。しかしその後、日本のシェアは年々減少、順位は大きく入れ替わり、現在では韓国が38%のトップシェアとなっている。日本とは対照的に、2011年以降、中国のシェアは年々増加し、現在では23%まで上昇している。液晶テレビやスマートフォンで世界最大の生産量を誇る中国は、同時に世界最大の液晶パネル消費国であることに加え、中国は国家戦略の『国家製造2025』の中で「先端技術を強化していく」としている為、それに伴い、中国の液晶パネルの生産能力は今後更に増強される。2018年には遂に韓国を上回り、トップに躍り出る見通しだ。その頃の日本のシェアは僅か7%の見通しで、まさに立場逆転である。一方、先端技術のスマホ用高精細液晶パネルにおいては、現在まで日本は圧倒的なシェアを保っている。出荷数量は、2014年は日本がトップの61%なのに対し、中国は5%だ。2015年にかけて中国のシェアは増加しているものの、日本の圧倒的なシェアに変化は無い。しかし、呑気に構えてもいられない。中国国内の膨大なスマホ需要に牽引され、2018年にはスマホ用高精細液晶パネルの生産能力でも44%のシェアで日本を上回る見通しだ。但し、新規参入メーカーが多く、優秀な技術者の確保や、パネル生産の歩留まり(不良品を除いて出荷できる製品の割合)の向上に時間を要する等、生産技術面で不安な点は残る。海外からの優秀な技術者の確保が喫緊の課題と言えるが、一方で中国の中小型パネルメーカー『TIANMA(天馬微電子)』は3年という年月を費やし、中国メーカーで初めて量産を軌道に乗せたという事例もある。将来的にはコモディティー化が進んで、中国の多くの生産ラインでも量産が可能となり、優秀な人材の確保や育成も進み、技術面での不安は解消していくと見られる。 (『IHSテクノロジー』シニアディレクター 田村善男)


キャプチャ  2016年2月2日号掲載




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テーマ : 中国経済
ジャンル : 政治・経済

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