【儲かる農業】(09) 本誌記者が農場体験にトライ…生産性“至上主義”を実感

農業に興味はあるけれど、未だ行動はおこしていない――。そんな貴方の為に、本誌記者が体を張って農場取材を敢行した。現場でのやりがい・辛さを包み隠さずレポートする。

20160418 07
31歳・既婚男性の記者が農業に関心を持つようになったのは、数年前のことだ。東京に居を構えながら、神奈川県海老名市に毎月3万円で猫の額ほどの農園を借りている。「東京都心で暮らす4歳の娘に自然と触れる機会を作ってあげたかった」というのもあるし、ベストセラー『里山資本主義』(角川oneテーマ21)に感化されたところもあるかもしれない。そんな記者が農場体験取材を任された。少しは農業を齧っている訳で、「得意分野です」。軽い気持ちで引き受けたのだが、現実はそう甘くはなかった。1月下旬、キャベツ、ホウレンソウ、コマツナ等の生産から加工までを一貫して行う『ワールドファーム』の熊本農場を訪れた。当日、ホウレンソウの収穫が行われており、早速作業に合流した。作業の流れ自体は単純明快。ホウレンソウの束を茎から手繰り寄せ、地面から1㎝ぐらい上の位置で鎌を使ってカット。刈り取った束の葉を両手で掴み、大きく揺することで製品にならないものを振り落としたら、収穫用コンテナに積んで次の束に取り掛かる。文字面だけを読むと至ってシンプルな作業だが、実際に体験してみるとこれが中々難しい。先ず、霧の降りたホウレンソウは重みで茎が横になっている為、どこまでが束かを判別するだけで一苦労。刈り取りも、余計な部分を傷付けないよう慎重に鎌を扱うと、どうしても収穫に時間がかかる。しかも! あろうことか作業開始から30分も経たぬ内に腰に激痛が走った。普段はアメリカンフットボールで鍛えているというのに。それから後は、少し作業したら腰を伸ばしての繰り返し。全く先に進めない。慣れない作業に四苦八苦する記者を横目に、スタッフたちは涼しい顔で収穫している。気付けば、彼らは(同じ畑の)2周目・3周目の収穫に入っていた。そんなスタッフの1人、大阪で音響関係の仕事をしていた上野裕さんが、農業に可能性を感じてワールドファームに転職したのは5年前。当時は右も左もわからないまま、試行錯誤の連続だったという。「作物は生き物なので、天候や肥料のやり方等で全く違うものに育ちます。どうすれば大きく味の良い作物に育つか、常に考えて取り組んでいます」。それは収穫についても同じ。現場で働く皆が「どうすれば生産性を高められるか」ということを考えながら、作業に取り組んでいる。例えば一般的には、ホウレンソウの収穫では根元に鎌を入れて刈り取るが、敢えて茎から刈り取るのは、そのほうが何倍も収穫のスピードを速めることができるから。束を揺すって小さな葉を取り除くのも、その後の選別作業にかかる時間を短縮する為だ。一見すると何てことはない1つひとつの動作の中に、これまで培ってきた生産性向上の為のエッセンスが凝縮されている。「農業は奥が深いな」。率直にそう感じた。

朝6時、農家の朝は早い。トマトやサクランボのビニールハウス栽培を手掛ける『サラダボウル』(山梨県)では、農作業の前に1時間程度の勉強会とミーティングを行うのが日課になっている。この日の議題は農薬の運用態勢について。Excelやチェックリストを用いることで、“抜け漏れ”の無い運用ルールが取り決められた。本日の作業は、収穫を終えたトマト畑の整備や肥料の仕分け等、次の収穫に向けた謂わば下準備である。農業というと収穫のような華やかな作業に目が行きがちだが、こうした地味な仕込みも立派な仕事。下準備がその後の作物の出来を大きく左右するからだ。また、同じ畑でも場所によって土壌の性質が異なるので、肥料のやり方も其々に細かく合わせながら行う。この辺りの判断はまさに職人芸で、長年の経験で培われた“目利き”がものを言うようだ。作業の合間に、トマトの育苗工程を見学させてもらった。育苗とは、畑に移植するまでの1ヵ月間、人工的な環境下で発芽・育成させることを指す。1日に4回ほど様子を確認し、室温の調整や水やりを行う。サラダボウルのベテラン作業員である小俣康洋さんによれば、「作物を人間の手でコントロールすることができる、農作業で一番面白い部分」とのこと。今後の成長が楽しみだ。ワールドファームとサラダボウル。合わせて僅か3日の就農体験ではあるが、本当に“収穫”の多い経験だった。何より、実際に大きく育った作物を収穫する喜びは筆舌に尽くし難い。「どのような人が就農に向いているか?」。農場現場の方々に同じ質問を投げ掛けてみた。一番多く挙がったのは、「変化を楽しむことができる人」。生き物を相手にした職業なので、機械工場のように“昨日と同じ仕事”は1つとて存在しない。天候等の条件によって作業が思うようにいかないことも日常茶飯事だ。それを大変だと思うか、面白いと感じられるか――。楽しむことができるのなら、農業に従事する素養があるのかもしれない。東京に戻って数日後、農作業で酷使した腰の痛みは治まりそうにない。記者の場合は、鈍った体を慣らすことから始めなくては…。


キャプチャ  2016年2月6日号掲載




スポンサーサイト

テーマ : 農政
ジャンル : 政治・経済

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR