【震災5年・原発事故のあと】(03) 子供の被曝、母親ら支援の動き

20160420 05
福島第1原子力発電所事故による放射線の健康影響について、国連科学委員会は2013年の報告書で「(大半の癌は)増加は見られない」との見解を示した。ただ、子供の甲状腺癌だけは「確固たる結論を導くには情報が十分でない」と指摘した。福島県は2月15日、事故当時18歳以下の県民38万人を対象とした甲状腺検査で、昨年までに167人が“癌”か“癌の疑い”と診断されたと発表した。医師らで作る県の検討委員会は、「現時点では放射線の影響とは考え難い」と結論付けた。放射線に敏感と考えられる幼児の患者が少ないこと等が根拠とされた。過去の統計から推定される発症率の数十倍という患者数で、症状の無い人まで広く検査した為、通常は見つからない“死に結び付かない癌”等を多数見つけた可能性が指摘されている。しかし、見つかった癌が“死に結び付かない”かどうかは、現在の医学では見分けられず、基本的には手術して傷や後遺症が残る。「放射線の影響かどうか、今は結論を出せないが、事故が無ければしなかった筈の検査や手術で、心身に大きな負担をかけている」と、『放射線医学総合研究所』(千葉市)の明石真言理事(61)は言う。「私たちは何故、検査の度に不安にならねばならないのか」。3人の息子を持つ相馬市の女性(38)は語る。2人の息子の甲状腺に“嚢胞”(液体が溜まった袋)があると診断された。周囲の母親や専門家に相談して「癌と関係ない」と知り、今は気にしないようにしているという。

原発事故では放射性ヨウ素が飛散し、甲状腺癌の原因となる。食物汚染が野放しだったチェルノブイリ原発事故に比べ、福島の住民の被曝量は少ないと見られるが、放射性ヨウ素は短期間で消える為、福島では混乱の中、1000人余りしか測定されなかった。データが乏しいことから、県は被曝による癌の増加を完全には否定できず、検査を続ける方針だ。検査を受けた人は、1巡目(2011~2013年度)に比べ、2巡目(2014・2015年度)は減少している。「『受けない』という判断もあっていい」と、福島県立医科大学の緑川早苗准教授(47・放射線健康管理)は言う。しかし、その判断は親や本人にとって難しい。気軽に相談できる専門家が不可欠だ。同大学は、母親ら10~20人の集まりに専門医を派遣する勉強会を数多く開いている。非営利組織『ビーンズふくしま』が県内で開く『ままカフェ』には、仲間や情報を求める母親らが集う。運営に携わる松村美保子さん(47)は、「親が不安を感じるのは当たり前。それを否定せず、受け止めるのが大事」と語る。親の不安に寄り添う地道な活動が重要性を増している。被曝と健康についてのきめ細かな情報は、高齢者向けにも重要だ。被曝を恐れて外出を控えたり、不自由な避難生活が長引いたりして、肥満や飲酒といった癌のリスクを高める要因が増えている。南相馬市では、脳卒中による入院患者の発生率が2~3倍に上がったという。相馬中央病院内科診療科の越智小枝科長(41)は、「放射能ばかり気にせず、様々な健康リスクを総合的に捉える必要がある」と話している。


≡読売新聞 2016年2月25日付掲載≡




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