【丸分かり・激震中国】(10) “爆買い”もやがて失速…越境ECビジネスが台頭

訪日中国人の爆買いは近い将来、転換点を迎え、その勢いは鈍化していく可能性がある。 (大和総研シニアコンサルタント 芦田栄一郎)

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訪日中国人の数が増え続けている。円安による渡航費用の割安感に加え、訪日ビザの発給要件の緩和や、LCC(格安航空会社)を含む航空路線や大型クルーズの増便といった入国手段の多様化等が、訪日中国人急増の要因だ。日本政府観光局(JNTO)によると、2015年の訪日外国人全体の数は過去最高の1973万人に達し、消費額(インバウンド消費)は3兆4771億円に上った。その内、中国人の数は約499万人に達し、消費額は全体の40.8%を占める1兆4174億円となり、大量の買い物をする中国人の姿は、テレビ等で頻繁に“爆買い”として報じられた。 爆買いを後押しした大きな要因は、内外価格差だ。日本製品を中国国内で購入する場合、高い関税や、日本の消費税に相当する増値税、化粧品や嗜好品に課する消費税が上乗せされる。更に物流コストや小売店の利益等が加算されると、最終的な価格は日本の価格の何倍にも膨らむことがある。また、2014年10月に外国人旅行者向け消費税免税制が改正されたことで、従来は免税対象ではなかった食料品や化粧品等の商品が対象となり、消費を一層喚起した。一方で、爆買いの拡大による弊害も聞かれるようになった。日本の不動産に積極投資する中国人投資家の中には、購入したマンションを不特定多数の外国人旅行客に貸し出すケースもあり、マナーの悪い旅行客と住民との間で、騒音やゴミの処理等でトラブルに発展している。個人の空き部屋を不特定多数の人に貸すことは旅館業法に触れる可能性があるばかりでなく、不法滞在者の温床となる可能性もあり、今後、更なる住民トラブルへの懸念が強まる。既存の居住者にとっては、マンションの資産価値を下げることにも繋がりかねない。また、東京都内の大型ドラッグストアでは、中国人団体客が店内に溢れ、化粧品や医薬品等を“爆買い”していく。“日本に来たら絶対買うべき12の神薬”という定番リストが中国国内で評判となり、在庫切れが頻発している。一度に大量販売できるメリットがある一方で、観光客の受け入れ能力が十分でない地方の店舗では大混乱となったり、客離れにも繋がっている。

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爆買いはどこに向かうか。全中国人外国旅行者の内、日本を訪れているのは2014年時点で僅か2%であり、訪日数増加の背景を考えると、暫くは爆買いが続くと見られる。しかし、ある転換点を迎えた後は、爆買いブームは失速する可能性があると筆者は見ている。その転換点として、越境EC(電子商取引)の普及が挙げられる。現在、中国では、中国の電子商取引最大手『アリババグループ』の『天猫国際』や代理購入業者を通じ、日本製品が手軽に購入され始めている。経済産業省の『平成26年度電子商取引に関する市場調査』によると、中国の日本へのインターネットショッピングの金額は、2014年で年間6064億円となった。中国国内では、越境ECの優遇を意図した“行郵税”の適用や、関税の徴収を一時的に保留にしたまま商品を指定の倉庫に置いておける“保税地区”の設置等の政策も試みられ、割安に日本製品を購入できる環境が整いつつある。越境ECが今後更に拡大すれば、態々買い物の為に海を渡る必要も無く、好みの決済手段でいつでも日本製品を購入できる為、現在の熱狂的な爆買いブームは失速していくだろう。また、中国は国内の消費喚起の為、今年から輸入関税を引き下げる方針だ。これも、爆買いを失速させる要因と考えられる。しかし一方で、越境ECを活用すれば、訪日の際に買い損ねた商品の購入や追加購入もでき、日本企業にとっては新市場へのビジネス機会が増える。関税の引き下げも越境ECの促進材料だ。つまり、越境ECは爆買いを失速させる要因でもあり、日本企業のビジネス機会を加速させる要因でもある。日本企業の課題は、爆買いを一時のブームで終わらせるのではなく、訪日中国人客を日本製商品等のハード面だけでなく、“おもてなし”文化等のソフト面でも持続的に引き付け、帰国後も越境ECと共存する形で日本製品の購買行動に結び付けていくことだ。今や、インターネット人口もEC市場規模も世界一である中国人の消費者を、今後どう掴めるかが、日本経済にとっての成功のカギとなるだろう。


キャプチャ  2016年2月2日号掲載




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テーマ : 中国経済
ジャンル : 政治・経済

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