「ヤクザと一緒ではないが気持ちは味方です」――元山口組顧問弁護士・山之内幸夫氏インタビュー

凡そ30年に亘り、『山口組』の顧問弁護士を務めたことで知られる山之内幸夫氏が昨年末、その旨のバッジを外すことになった。これまで数百人ものヤクザを救ってきた法曹界の異端児が、その内情を語った。 (聞き手/フリージャーナリスト 鈴木智彦)

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全国各地で大ヒット上映を続ける『ヤクザと憲法』のプロデューサーは、弁護士を“社会との結節点”と表現した。その言葉通り、ヤクザの事件を担当する弁護士は、堅気というコチラ側の住人でありながら、「ヤクザを救う」という職務の為、アチラ側も自由通行できるダブルパスポートを持っている。山之内幸夫元弁護士は、『ヤクザと憲法』でも主役の1人である。映画には、長きに亘って山口組顧問弁護士を務めながら、刑事事件の裁判で有罪となり、劇中で弁護士資格を剥奪されるシーンが映し出される。今、この人は何をしているのだろうか。大阪で『ヤクザと憲法』が公開される直前、山之内弁護士事務所を訪ねた。貰った名刺に弁護士の肩書きは既に無く、背広の弁護士バッジも外されていた。

依頼者が、グラスファイバーで型を取って車の部品を作っている人なんです。14年間、工場を借りて作業しとったんですが、事件屋に絡まれて食い物にされていました。僕のところに相談に来て、「何とか逃れたい。手を切りたい」というのが元々の始まりです。間に入って対決姿勢を見せたら、その事件師は仕事場を封鎖しよった。その日も納品しなきゃいかんものがあったんで、入れないと困る。だから、「割って入ったらいい」と言ったんです。依頼者は変わった男でしてね、気が弱いからでしょうか、何でもかんでも録音している。だから、その現場の音声も録っていた。それが建造物損壊教唆罪という罪名になった。これは罰金刑にならないんです。有罪になれば終わりです。予感はありました。もっとはっきり言いますと、家宅捜索に来た日、ガサ入れのあった夜にね、「弁護士を辞めよう」と思った。こんなくだらんことでも警察は絶対やります。「検察庁も警察の圧力に押されて立件し、起訴するんじゃないかなぁ」という思いがあった。若ければ弁護団を結成して徹底的に無罪を争うんでしょうけど、そんな元気はありません。ならば、弁護士はもういい。今年70なんですが、「仕事を辞めるチャンスなんじゃないか」と思った。起訴されるまでは顧問弁護士と名乗っていないんです。実際、顧問契約はしていたんですが、“元山口組顧問弁護士”という肩書きを使っていた。警察と世間を刺激しますからね。山口組には、僕の他にも親しくしている弁護士さんがおり、実質的には同じでも、顧問と名乗れば弊害が出てきます。今回の事件でも、僕のクビを取りたかったのは間違いない。少なくとも警察にとっては、4課が働いていることを証明するネタにはなります。平成3年、恐喝事件で逮捕された時には、僕を逮捕した府警の班が警察庁長官賞を受賞しました。僕、結構な大物なんですよ(笑)。その時の裁判は当然、無罪です。それだけ恣意的な、馬鹿馬鹿しい事件だったんです。日本の裁判で無罪なんて簡単に出ませんからね。歴史上、日本の弁護士で無罪になったのは初めてだったんじゃないですかね。初めて顧問になったのは、4代目竹中正久組長が誕生した直後です。暫くして、弁護士会から「顧問はいけない」と処罰を受け、形上は一旦辞めとるんですが、僕が逮捕されたので、本当に顧問をできなくなった。昭和59年から平成3年まで。で、6代目山口組が誕生した後、平成18年から27年まで顧問だった。月に20万円、隠すほどでもない額です。元々、ヤクザの弁護をやろうとは思っていなかったんですよ。でも、やっている内に強い興味を持つようになりました。未練も無いし、せいせいしているけど、山口組が分裂しているんで、このことだけが心配です。




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この人は、山口組の激動期の殆どを内部から見てきた。ジャーナリスト以上に詳しい山口組ウォッチャーなのだ。自分の事件については淡々と話していたが、こと山口組のことになると一気にヒートアップする。若き日のギラギラした熱気を感じさせる。

僕は6代目側からも神戸側からも非常に信頼されていると思っている。また、気安く喋れる人間関係もある。だから、双方に「大きな間違いだけは絶対起こしてほしくない」と言っているんです。若しそうなれば、取り返しのつかないことになってしまって、結局、警察の取り締まりによって潰されてしまいます。小競り合いは起こるでしょうが、そこから一足飛びにトップの命を狙うとか、幹部を撃ちに行くということは、絶対にあってならない。そんなことやっても今は誰も喜ばない。行った人間は貧乏くじを引くだけ。まさに、僕が書いた『悲しきヒットマン』(徳間書店)です。警察の捜査が入って、組織ぐるみ・組ぐるみという前提で捜査が入っていくだけで、寧ろリスクのほうが遥かに大きい。山一抗争の時は力で捻じ伏せて、一和会を潰して…という時代だった。その後も抗争が多発し、結局、ヤクザは力なんだということを山口組が立証した。でも、今は大きな事件(殺人)なら無期懲役。有期刑で懲役20年ということもあるとは思いますが、個人的な恨みや因縁が全く無くて、組の為にヒットマンとして走った事件では重いでしょう。弁護士として実感できる罪名だと、覚醒剤・銃刀法はかなり重くなった。そして、組の抗争も重い。昔は、組同士の面子が絡んだ争いで殺したいうても軽かったんです。ヤクザ同士が殺し合う分には被害法益が無いみたいな。ところが、今は「世間を騒がせている」「法秩序に挑戦しとる」「法治国家で大手を振って暴力を振るっている」という、「殺された人が可哀相」というより「秩序に真っ向から挑戦している」ことで重くなる。ここまで刑が重くなり、何の見返りも無いのだから、ヒットマンがいません。

ヒットマンは、動機無くしては行かない。上から命令されても、命令だけでは行けないです。馬鹿馬鹿しくて。さんざ放蕩の限りを尽くして、女房子供の生活を守りたい。その為には自分が仕事(ヒットマン)をして、後の面倒を見てもらう。つまり、生活保障という意味合いで行く場合であるとか、組に対して迷惑ばかりかけてきたんで、贖罪で行く場合とか。昔なら「ヤクザやっているんなら、はよ(懲役に)行ってはよ帰って来て、トップになるんだ」という道もありましたけど、今はそんな計算できない。行ったら終わりです。だから、個人的に行かざるを得ない負の要因があって、その清算の為に行くんでしょう。中には、自分を拾ってくれて可愛がってくれ、人として扱ってくれた兄貴分・親分の為、その人への恩返しということもないとは言えませんが、「行ってほしい」と上が望まないんじゃないか。寧ろ、「大きな事件起こされたらかなわん」と思っているんじゃないですかね。喧嘩しても、いいことなんか1つも無い。だから、僕が話し合えるきっかけを作れないかと思っているんです。弁護士だったらそんなことできませんけども、今は外れたんで却って楽です。話したところでどうにもならんのもわかっているし、そんな簡単にはいかない。でも、具体的には時間を掛けて、棲み分けなしょうがないいうことになるんでしょう。ヤクザの筋目からしたらおかしいのかもしれないけど、何とか解決の道を見つけ、最悪の事態を回避してほしい。何しろ、ヤクザには未だ役目がある。世の中から逸れて、ドロップアウトして、落ちこぼれて行き場の無くなった奴の受け皿だと思っています。そういう人間が身を寄せ、生きていく道を考えてくれるところっていうのは必要なんです。世間は「踏み込み過ぎて馬鹿だなぁ」と思っているんでしょうね。別に、ヤクザと一緒になって悪いことしている訳じゃないんですけど、ただ気持ちは入れ込んで味方になってます。

この人にとって、山口組は戦友なのかもしれない。山之内元弁護士の戦いは終わっていない。


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