【震災5年・原発事故のあと】(05) 森林再生へ新たな闘い

20160427 13
福島第1原子力発電所から西に約15~30kmの福島県田村市都路地区。市街地から離れた緩やかな斜面に、戦前に植林されてきたというコナラやクヌギ等が整然と並ぶ。しかし、林業者の姿が見えない。「これほど見事な広葉樹林は他に無い。5年間手つかずなのが悔しい」。『ふくしま中央森林組合』の吉田昭一参事(60)は無念そうだ。全国4位の森林面積を持つ福島県で、同地区はシイタケ栽培用の原木を年間20万本作る特産地だった。ところが、原発事故で森林が汚染され、出荷が止まった。原木には、牛乳と同じ“1kg当たり50Bq”の厳しい安全基準が適用されている。シイタケに濃縮される可能性がある為だ。今は安いパルプ材としてしか木を出荷できない。同組合は、新年度から段階的に伐採を行い、汚染されていない新たな芽が切り株から育つのを待つ計画を立てている。原本として出荷できるのは樹齢約20年。産地の再生に向け、長い闘いが始まる。『日本原子力研究開発機構』の斎藤公明特任参与(63)らが原発80km圏の道路周辺で放射線量を調べたところ、事故後4年余りで2割まで減った。降り積もっていた放射性セシウムが、除染・車の通行・風雨等によって取り除かれたものと見られる。一方、同県内の森林は線量が4割までしか減らなかった。幹から雨で流されたり、落ち葉に付着したりしたセシウムは、土壌の表層部分に吸着されていく。『森林総合研究所』の三浦覚チーム長(56)は、「森林土壌には、冷戦時代の大気圏核実験によるセシウムも半世紀に亘り残っていた。今回の事故の分も、長く流出せずに留まるだろう」と見る。

森林に長く残る汚染は、火災で拡散するリスクを孕む。事故から30年が経つチェルノブイリ原発周辺では昨年、森林火災が相次ぎ、大気中のセシウム濃度が一部地域で基準値を上回ったと発表された。筑波大学の恩田裕一教授(53)は、「日本の森林は湿気が多く、深刻な山火事は少ないが、万が一に備えたリスク評価と防火対策は必要だ」と指摘する。広大な森林を全て除染するのは現実的でない。落ち葉等の堆積物や表土を取り除くと、樹木の成長に悪影響が出たり、土砂が流出したりする懸念がある。この為、環境省の検討会は昨年末、「人が立ち入らない森は除染しない」という方針を纏めた。ところが、福島県等が「山に囲まれた住民は不安を感じている。放置せず、線量低減の調査研究を続けてほしい」と再考を求めた。これを受け、政府は除染範囲の拡大等を再検討している。伐採による木々の若返りは、長期的な線量低減に繋がる。田村市は今月、チップ化した木材を燃料とするバイオマス発電設備の計画を打ち出した。また林野庁は、森林内で除染や伐採等の作業が今後増えるのに備え、作業員の被曝対策を研究。例えば、操作室のある重機で作業すると、被曝線量が35~40%減ることを実証試験で確かめた。同県の林業被害の実態等を調査してきた山形大学の早尻正宏准教授(36)は、「汚染されていない樹木を増やしながら、木材の利用拡大も進めれば、林業・地元社会の復興に繋がる」と強調する。放射線と向き合いながら、どう前進するか。日本の知恵が問われている。 =おわり


≡読売新聞 2016年2月28日付掲載≡




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テーマ : 東日本大震災
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