【8年ぶりに新大統領が決定】(下) 「メキシコ国境に壁を築け」…暴言王のドナルド・トランプが共和党候補に?

20160428 14
『USAトゥデイ』が2015年9月30日に発表した調査によると、共和党の大統領候補の中で“不動産王”ドナルド・トランプの支持率は23%で、一時よりは下がったものの、相変わらずトップを維持している。トランプが出馬を表明した時、マスコミは「またか」と冷笑した。彼は前回、2012年の選挙でも出馬を表明し、「オバマはケニア生まれだから大統領の資格が無い」等と事実無根の暴言を撒き散らした挙げ句、さっさと撤退した。「どうせ売名行為だから、今回も早々に引っ込むだろう」と予想されたが、何と、このまま指名争いを勝ち抜きそうな勢いだ。トランプは前回以上の暴言を吐きまくった。「メキシコ移民は麻薬の運び人か強姦魔だ」「不法移民を防ぐ為に、アメリカとメキシコの国境に万里の長城みたいな壁を築け。メキシコ政府の金でな!」「私はデブ・ブス・鈍間な女が嫌いだ」「他の候補者よりも私のほうが正直で、私の女たちのほうが(彼らの妻より)ずっと美人だ」…。勿論、「差別だ!」と批判されているが、トランプは謝罪するどころか、「アメリカはPC(政治的公正さ)を気にし過ぎだ。そんなことじゃ中国に負けてしまうぞ」と開き直る始末。ところが、トランプが問題発言する度に支持率は上がっていった。一番困っているのは共和党だ。元々、トランプは共和党員でも何でもなかった。1990年代はクリントン大統領を支持していた。それが今や、他の党員候補に支持率で倍の差をつけてしまった。10月1日のニューハンプシャーでは、3500人ものトランプマニア(トランプ支持者)が集まったのに、ジェブ・ブッシュの演説には僅か200人。投票まであと1年しかないのに。

では、トランプマニアとはどんな人々なのか? NBCが7月に行った調査によると、共和党内のトランプ支持者の91%が白人、「移民がアメリカ国民の雇用や医療保険を簒奪している」と考える人が83%、「黒人が貧しいのは本人の責任だ」と考える人が93%だった。また、CNNによる調査では、男性のトランプ支持者は女性の倍だった。つまり、マイノリティーが優遇されていることに不満を抱く白人男性が、トランプの暴言に溜飲を下げているらしい。トランプのスローガンは「アメリカをもう一度偉大にする」。支持者たちは、アメリカンドリームの実現者であるトランプにアメリカの経営を任せたいと願う。その頼もしいイメージは、2004年から続くテレビ番組『アプレンティス(実習生)』によって作られたものだ。年俸25万ドルでトランプに雇われる座を巡って、20人程の参加者が競い合うゲームショーで、例えば「同じコップ1杯のレモネードを道行く人々により高く売れるのは誰か?」といった課題に挑戦し、その結果を見たトランプが誰か1人を篩い落とす。「お前はクビだ!」の一言で。漫画みたいに非情だが、優秀な経営者を“演じた”トランプを視聴者は憎み、愛した。でも、本当は甘やかされた既得権者に過ぎない。トランプは親の資産を引き継いだだけだし、今まで何と4度も破産し、負債を踏み躙り、免税を受けている。政策にも何ら具体性が無い。「IS(イスラミックステート)を潰すには地上軍を送り込め」と吠えるが、ブッシュ時代から続くイラク・アフガン戦争で疲弊したアメリカにそれができる訳がない。「中国から仕事を奪い返せ」という言葉にも方法が明示されない。9月末、トランプは初めて具体的な税制改革案を発表した。それは徹底的な減税策で、大雑把に言うと、年収2万5000ドル以下なら連邦所得税を全額免除されるというものだ。貧困層へのアピールだが、彼らは今も殆ど所得税を払っていないので、本当は大きな違いはない。




それよりも問題なのは、富裕層が現在払っている最高税率を39.6%から25%に引き下げ、法人税も35%から15%に引き下げると提案していることだ。結局、一番得するのはトランプのお仲間たち。それに、アメリカはブッシュ時代の富裕層への減税と戦費によって、史上最大の財政赤字を背負っている。そこに財源も無いまま減税したら、破綻する以外にない。こんな出鱈目なトランプが支持を集め続けるのは、偏にアメリカ人が既成2大政党に飽き飽きしているからだ。何しろ、共和党の候補者で現在支持率ナンバー2のべン・カーソンも政治家ではなく外科医で、去年、大統領選に出馬する為に共和党に入ったばかり。しかもアフリカ系だ(共和党の主流は白人のキリスト教徒)。対する民主党も同じ。次期大統領候補はヒラリー・クリントン一本で揺るがないと思われていたが、9月初め、ニューハンプシャーの世論調査で支持率トップの座を奪ったのは、バーモント州選出のバーニー・サンダース上院議員(74)だった。サンダースも民主党員ではなく無党派。本人は“社会主義者”を名乗り、増税と再分配による北欧型社会の実現を掲げている。共和党はトランプという右翼に、民主党はサンダースという左翼に人気を奪われている訳で、それほど2大政党による代り映えのしない政治に国民はうんざりしている。「トランプもサンダースもカーソンも、所詮はアウトサイダー。でかい泡沫候補として消えていく筈だ」という見方は強い。でも、この3人が消えたら、2016年の大統領選はジェブ・ブッシュ対ヒラリー・クリントンだよ。ブッシュ対クリントン? 一体、いつの時代だよ!


町山智浩(まちやま・ともひろ) コラムニスト・映画評論家。1962年、東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、『宝島社』に入社。『宝島』『別冊宝島』『宝島30』編集部を経て、1995年に『洋泉社』に出向。1997年よりカリフォルニア州在住。著書に『底抜け合衆国 アメリカが最もバカだった4年間』(洋泉社)・『アメリカのめっちゃスゴい女性たち』(マガジンハウス)等。


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