【私のルールブック】(49) ギャンブルは自制心との闘いである

ある高名な作家が、「ルーレットで必ず勝てる法則を見つけた!」と豪語した。翌日、その作家先生はラスベガスへ飛び、1週間程で帰国すると、「やはり法則など無かった」と項垂れた。どうやら、余裕で都内に家が建てられるほど負けたらしい。お世話になっている敏腕プロデューサーの方が、「麻雀で負ける奴は馬鹿だ!」と胸を張った。毎回勝ちに行こうとせず、流れが悪い時は負けを最小限に留める打ち方をすれば、トータル換算で負けることはないと…。これには私も同意見だったが、大金を投じてプロデュースした映画が大コケし、麻雀どころではなくなってしまった。ギャンブル競技の多くは確率の世界である。ということは、麻雀やカードに限って言えば、若しかしたら確実に勝てる法則があるのかもしれない。しかし、実際には都市伝説的に耳にするぐらいで、ギャンブル狂を自負する私ですら、連戦連勝のギャンブラーなど、お目にかかったことはない。

では、100%の確率で勝てずとも、それこそ人生という長い視点で見た、トータルで勝ちを収める方法は無いのだろうか? 私はコレなら、あるような気がするんですよね。突き詰めると、ギャンブルは自制心との闘いである。競艇ならば、12レース全てを買っては勝つ確率が下がるのは当たり前。麻雀にしても、流れが悪い時に無理に追っかけリーチを繰り返したところで、火に油を注ぐだけ。勝負事には必ず勝負所があり、自制心で何とか欲望を抑え込んでいる内に勝負所を見極め、ここぞという時にどれだけベットできるか? それを乗り切って初めて、勇気との闘いのステージに向かえるのである。とある競艇場のロイヤルルームで、度々見掛けるお爺ちゃんがいた。いつ見ても柔和な表情を浮かべ、勝負師というよりも「競艇が好きなんだな~」といった印象。何故ならば、舟券を買っている姿を殆ど見たことが無かったからだ。と、そんなお爺ちゃんがある日、展示航走を見終えるとスックと立ち上がった。風呂敷包みを抱えると、これまでにない険しい表情で券売の窓口へ向かう。気になった私は、失礼とは思いつつ後を尾けると、お爺ちゃんは静かな口調で「2連単で1-3全部」と言ったのだ。風呂敷包みの中には2000万円近くの札束が積まれていた。




2000万ですよ2000万。私、ついつい計算しちゃいましたもん。「当たったら幾らになるんだろう」って。まぁ、2000万の1点買いですからオッズはかなり下がりますが、それでも優に億ションは買える計算ですよ。で、結果なんですが…まぁね、そんなに巧くはいきません。かなり惜しかったんですけどね。残念ながら、2000万の舟券は紙屑となってしまいました。でも私は、この時に思ったんです。静かに水面を見つめるお爺ちゃんの横顔を見ながら、「この方は競艇をやっているようで、実は勝負所を見極める自身の読みや感覚と闘っているんじゃないか」と。その域で勝負してる人だから、競艇場に来ているにも拘らず舟券を買わないでいられる。「強烈な自制心を働かせることができるんじゃないか」ってね。静かな凄味とでも言うんですかね。この方なら、トータルで勝っていてもおかしくないと思える、正真正銘のギャンブラーじゃないかって…。あんな歳の取り方をしてみたいよね~。


坂上忍(さかがみ・しのぶ) 俳優・タレント。1967年、東京都生まれ。テレビ出演多数。子役養成に舞台の脚本・演出等、多方面で活躍中。


キャプチャ  2016年4月28日号掲載




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