【儲かる農業】(11) 倍率200倍の人気企業に? 伝統的ブラック産業の変貌

機械化が進んだ今でも、農業には“3K”(きつい・汚い・危険)のイメージが付いて回る。だが、“普通の産業並み”の労働環境を旗印に、優秀な人材を集める農業生産法人も出てきた。

20160502 17
「働き方革命、我々は日本農業を変える集団です」――。昨年11月、早稲田大学で開かれた講演会で、『イオン』子会社の『イオンアグリ創造』の福永庸明社長が、就農希望の学生らを前に農業の働き方を改善することの必要性を力説していた。全国20ヵ所に計300haの農場を持つ同社は、昨年度から新卒採用を始めた。すると、47人の採用枠に対し、1万人もの学生が殺到してしまった。倍率200倍の超難関企業である。だが、この人気の“集中ぶり”は、農業への関心の高まりだけではなく、農業が抱える問題点をも映し出している。「農業に将来性を感じながらも劣悪な労働環境を回避したい学生が、同社に集中したのではないか」という読みだ。事実、多くの農業生産法人は人材確保に苦労しており、離職率も高いのが現状なのだ。その理由の1つが、農業が労働法の適用対象外であり、農繁期には休み無く働くことが当たり前の特殊な産業だからだ。経営規模を拡大し、高収益を上げる農家は、「春から秋にかけての農繁期は2~3日の休みだけで、馬車馬の如く働かなければ成長できない」のが現実だという。農産物は収穫のタイミングを逃すと、最悪の場合、商品にならなくなる。その為、やるべきことは日が暮れてでもやるのが鉄則だ。“儲かる農業”を実現するためとは言え、他産業でこの働き方を強いた場合は「ブラック産業だ」と言われてしまうだろう。そんな中、企業成長と労働環境の改善という“二兎”を追う農業生産法人が出てきた。

前出の福永社長は、「農作業の機械化だけが農業の産業化じゃない。従業員が幸せに働いていなくては」と話す。その為に重視しているのが、女性が働き易い職場にすることだ。例えば同社は、農場に女性専用のトイレを設置した。当然のことのように思えるかもしれないが、農業では珍しいことなのだ。社員の平均年齢が30代と若いことから、子供の体調不良時に休みを取得し易くする等、子育て世代に優しい人事施策も導入してきた。その効果もあってか、正社員126人中、女性は39人と3割を超える。同社で農場長を経験した大塚和美さんは、「重いキャベツを運ぶのは男性に負けるが、作業の丁寧さ・速さは女性のほうが優れている」と話す。現在は農場長のポストを離れ、安全性や環境等に配慮した農場運営の世界的な認証基準である『GLOBAL GAP(グローバルギャップ)』の実践をチェックする仕事をしている。大塚さんは、「会社の中で分業が進み、体制が整えば、出産等で社員が職場を離れても、別の社員がフォローできるようになる」と話す。勿論、殆ど休まずに働いて1000万円以上の年収を稼ぐのも、人によっては“幸せ”だ。だが、価値観の強制はできない。農業の労働環境が発展途上であることは見逃せない事実だ。農業の成長産業化は、“働き方革命”とセットで進められるべきだ。


キャプチャ  2016年2月6日号掲載




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テーマ : 農政
ジャンル : 政治・経済

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