【18歳・240万人の新有権者】(下) 政治的中立、悩む教師

20160506 27
「『今の政党についてどう思うか?』等と生徒から問われた時、どう対応すればいいのか」――。3月下旬、東京都内の高校で行われた模擬投票の様子を視察した政府の教育再生実行会議のメンバーに対し、校長が問いかけた。同行した文部科学省幹部のアドバイスは、「『私はこう思う』とは言わないように」というものだった。18歳選挙権の実施を控え、現場の教師は悩んでいる。教育基本法は、「(学校は)特定の政党を支持し、またはこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」と規定している。“政治的中立性”と呼ばれ、「多数の者に対して強い影響力を持ち得る教育に、一党一派に偏した政治的主義・主張が持ち込まれてはならないこと」(2011年12月16日・政府答弁書)を指す。関東の高校で教える社会科教師の1人は、「学校で政治を教えることはずっとタブー視されてきた」と語る。18歳の多くは高校3年生であることから、高校での“主権者教育”が俄かに脚光を浴びている。突き詰めれば、「選挙で政党・候補者をどう選ぶべきか?」を教えることだ。教育現場は、必然的に政治的中立性とのジレンマを抱える。沖縄県選挙管理委員会が昨年末、主権者教育に関して希望する研修を尋ねたところ、回答した教員84人のうち73人が「政治的中立性の確保」(複数回答)を選んだ。

政治的中立性が重視視された背景には、戦後、旧社会党支持等イデオロギー色を鮮明にした『日本教職員組合(日教組)』の活動等があったとされる。「教員の大部分を包容する日教組の行動があまりに政治的であり、あまりに一方に偏向している」(1954年の中央教育審議会答申)と指摘されるほどだった。学園紛争が高校にも飛び火した1969年、当時の文部省が高校生の政治活動を事実上禁じる一方、教員にも高校における政治的中立を求める通知を出した。通知は昨年10月に撤回され、校外での高校生の政治活動は原則解禁されたが、“政治はタブー”が教育現場に浸透した。公益財団法人『明るい選挙推進協会』による15~24歳の男女3000人を対象とした「(学校で政治や選挙の)どのようなことを学んだか」に関する調査(昨年6月)。回答のうち、「民主主義の基本」「選挙の仕組み」は全体の平均で7割近くに上ったが、「(具体的な政治課題に関する)ディベートや話し合い」(12.7%)や「模擬投票」(7.3%)等、実践的な教育の例は限定的だった。千葉大学教育学部の藤川大祐教授は、18歳選挙権について「高校等で、政治的な意思決定のトレーニングとして、政治課題について意見をぶつけ合う等の機会が必要だ」と指摘する。漸く世界の潮流に追いつき、18歳選挙権を実現させた日本。だが、若者の“1票の行使”には欠かせない教育の充実には、未だ時間がかかりそうだ。

               ◇

薩川碧・福田麻衣・平田舞が担当しました。


≡読売新聞 2016年5月1日付掲載≡




スポンサーサイト

テーマ : 選挙
ジャンル : 政治・経済

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR