【丸分かり・激震中国】(12) 日本の食品&外食の善戦・苦戦…八角を入れてカレーを普及させたハウス食品

上海の地下鉄2号線の静安寺駅で降りると、地下で繋がっている久光百貨店に着く。2004年6月に開店したこのデパートは、『香港そごう』と中国企業の合弁会社が運営するが、地下の店内は、日本のデパートの地下食品売り場と見間違うような雰囲気だ。たこ焼きや日本式の食パンも売っている。日本からの輸入品も多く、日本人に馴染みの深い商品名が並ぶ。食品売り場の傍には、日本の商品の店や色々な飲食店が軒を連ねる。無論、客の多くは地元の中国人。中国の富裕層や中間所得層(ボリュームゾーン)の膨張と、日本の食文化が受け入れられていることを体感できる。2014年の中国の食品産業の売上高は2.02兆元(約36兆円)と、2010年の2倍に達した。外食産業の売上高は、2001年の4369億元から、2014年には2.78兆元(約50兆円)へと急成長。日本の外食産業の約2.3倍に上る。外食産業拡大の要因としては、食の外部化・多様化・高級化といった食文化の変化の他、外資系を含めた飲食チェーン店の増加や、大型連休による余暇時間の拡大等がある。

20160509 05
日本の食品産業は、日本の国内需要が減少する中で、中国を始め、アジア諸国への進出を加速させている。中国市場は競争が激しいものの、黒字の日系の食品メーカーが増えてきた。これらの企業は、輸出主体ではない。苦節10年間、現地で売れるまで我慢した後に、売り上げと利益が増加した企業が多い。その1社である『ヤクルト』本社は、“大人が子や孫に飲ませたい、手頃な価格の栄養ドリンク”としてのブランドが浸透。現地のヤクルトレディーも販売に活躍している。工場見学を広く受け付けているのも魅力だ。『江崎グリコ』も利益を拡大している。中国で一大ブランドになったポッキーが安くて美味しくて持ち易いと好評。グリコは年間契約でスーパーの売り場を購入しており、消費者のニーズに合わせて“ご当地ポッキー”“お土産ポッキー”等、頻繁に新製品を提供している。お菓子の販売では『明治』も奮闘している。『キユーピー』は当初、展開する商品をマヨネーズに特化したものの、欧米メーカーの類似品と競合して苦戦。その後、ドレッシング開発とファストフードの業務用製品の投入で高いシェアを獲得し、換回している。『日清食品』も、中国進出当初はカップ焼きそばのUFOと袋ラーメンを展開したが、台湾系大手メーカーの『康師傅グループ』と比べ価格が高過ぎて、売り上げが伸びなかった。その後、日本仕立ての細型カップスードルにシフトして、巻き返している。売れ筋はシーフード塩味。お洒落に食べたい中国女性のニーズにマッチしている。特記すべきは、カレー味を知らない中国で成功した『ハウス食品グループ』本社だ。2005年に中国でカレールーの販売を開始。赤字が続いたものの、「カレーを人民食に」という理念の下、“家庭”“子供”“健康”をキーワードに根気強く展開し、2012年に黒字化を果たした。主力製品であるバーモントカレー(中国語で“百夢多”)に、中国人の味覚に合う八角等の香辛料を加え、徹底的に現地化した商品戦略も功を奏した。更に、試食販売員の養成、スーパーやイベント会場での活動、カレー料理教室の開催、企業・工場の食堂や学校給食での提供等で只管食べさせ、認知度を高めるプロモーション戦略を展開。中国の1万5000店舗のスーパーや小売店にカレールーを広めた。




一方で、上手くいっていない日本企業もある。かっぱえびせんで有名な『カルビー』は、合弁相手である康師傅グループとの関係を解消し、昨年11月に中国のスナック菓子市場から撤退した。原因は、康師傅の営業力と流通力を過信したこと。「新製品を安く売ってはいけない」という価格戦略を順守しなかったことも間違いだった。康師傅と合弁した日系企業の内、中国で成功したのは『サンヨー食品』だ。外食産業では、大連に進出した『餃子の王将』も2014年に中国から撤退した。一因は、焼きギョーザが中国人から敬遠されたこと。中国では、焼きキョーザは水ギョーザの残りを焼いて食べたのが最初で、つまりは残り物。中国人は残り物を温めて食べることに抵抗があり、コンビニ弁当も温めて食べる習慣が無い。もう1つの理由は、メニューの多さ。焼きギョーザが売れないからとメニューを増やし過ぎて、コンセプトがわからなくなってしまった。うどん店では、『トリドール』が展開する『丸亀製麺』や、『はなまる』が展開する『はなまるうどん』が共に20店舗前後を中国で展開している。ただ、両店の和風出汁を中国人は「薄い」と感じており、価格帯も高いので、もう一歩といった状況だ。『サイゼリヤ』は、北京と天津に約50店ずつ、上海と広州に約100店ずつと順調に店舗数を伸ばしている。好調の要因は、圧倒的に安い価格にある。今後は、高級志向の中国人客を取り込めるかが課題だ。牛丼店では、『ゼンショー』が展開する『すき家』が中国で100店舗を超えており、勝ち組と言える。理由はボリュームと清潔感。昨年は成都に進出して評判になっている。『松屋フーズ』が展開する『松屋』は店舗数が伸びていないが、とんかつメニューに注力して、新たな顧客獲得を狙っている。中国での全国展開を目指す『吉野家』は最近、内陸の武漢に出店した。フランチャイズ展開をしており、北京の店舗は堅調だが、上海の店舖は競争が激しく、あまり元気が無い。ハウス食品グループ本社の子会社となった『壱番屋』が展開する『カレーハウスCoCo壱番屋』は、中国でビーフカレーやカツカレーの価格が共に38元(約680円)で日本と同等だが、子供からビジネスマンまで幅広い人気を得ている。因みに、『スターバックス』が中国で販売するコーヒーは、日本での価格より高い。中国の食品・外食産業で成功する為のポイントは、市場開拓で色々な手を打ち、利益が出るまで長い目で見て、我慢することにある。加えて、企業理念が強固で、マーケティングの基本の4P(Product、Price、Place、Promotion)にきちんと対応し、中国人に合った特色あるメニューやサービスができる企業が勝ち組になると言える。 (中央大学大学院戦略経営研究科教授 服部健治)


キャプチャ  2016年2月2日号掲載




スポンサーサイト

テーマ : 中国経済
ジャンル : 政治・経済

Categories
Profile

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR