【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(62) “敗色濃厚”でもバーニー・サンダース支持者が『SEALDs』とは違う理由

少し前の話になりますが、アメリカ大統領選の指名候補争いのキーポイントと目された“大票田”ニューヨーク州の予備選を現地取材してきました。結果は民主党のヒラリー・クリントン、共和党のドナルド・トランプが勝利したのですが、各候補の集会等を見て回る中で圧倒的に印象に残ったのは、民主党の指名をヒラリーと争うバーニー・サンダースの支持者たちです。サンダース陣営の集会に漲る熱気と希望は、他候補とは完全に異質です。中には以前から民主党を支持しているような高齢者もいますが、支持者の平均年齢は明らかに若く、人種も様々。そして、超高学歴なインテリ層が目立つのです。彼らを熱狂させる御年74歳のサンダースは25年間、無所属議員として活動してきたキャリアを持ち、“民主社会主義者”を自称。行き過ぎた資本主義が生んだ貧富の格差、大企業や富裕層の税逃れを痛烈に批判し、税制改革による富の再分配・大銀行の解体・最低賃金の引き上げ・公立大学の授業料無償化・徹底した温暖化対策…といった政策を主張します。アメリカの政治スペクトラムでは完全に“極左”に位置します。20代のサンダース支持者たちにインタビューしてみると、兎に角、リテラシーが高い。彼らは子供の頃に9.11を経験し、その後のイラク戦争でジョージ・W・ブッシュ政権の欺瞞を目の当たりにした世代で、政府やメディアを信用しません。多感な時期にマイケル・ムーアの映画を見て、もろに影響を受けた人も多いでしょう。彼らは理路整然と、あるべき正義・新しい未来像を語り、その多くは正論。そしてITとの親和性も高く、SNS等で説得力のあるアピールを繰り広げています。

最近、サンダース支持者と日本の『SEALDs』を重ね合わせるような言説も聞こえてきますが、僕から見れば全然違う。SEALDsは主張も手法も、旧態依然とした日本的左翼に立脚し(場合によっては利用され)ていますが、サンダース支持者にはそういう“古臭さ”が無い。理念も分析も非常に明瞭で、相当な知性を感じます。但し、どんな質問を投げかけてもスピーディーに返してくる彼らの言葉は、残念ながら“軽い”。ピンポン球のように絶望的に軽い。各候補の支持者との会話の“速度感×重量感”を比べると、サンダース支持者がスピードに偏った卓球なら、ヒラリー支持者はバランスのいいテニス。トランプ支持者は、スピードは鈍いのですが、巨人がデカい岩を投げ込んでくるような情念を感じました。では、サンダース支持者の言葉は何故“軽い”のか。それは、現実的な解決策よりも理念ばかりが先に立ち、妥協を許さない姿勢があまりにも夢想的だからでしょう。例えば、「大学の授業料をゼロにすべきだ」という議論の中で、彼らは「北欧はやっている。アメリカでできない訳がない」といったレトリックを使います。うん、それはそうなんだけど、分別ある大人なら「『何故できないか?』についても考えようよ…」と、居酒屋で正論ばかり語る新入社員に説教する上司のような気持ちになります(「ドイツは脱原発に踏み出したのに…」という日本の反原発派のレトリックにも似ています)。「ここは北欧ではなく、アメリカだよ」と…。成熟した社会の中に、時代にそぐわない“バグ”があった場合、全体のシステムを壊さないよう慎重に手直しする為の方法を、知恵を出し合って考えていく――。これが、“中道”に近い政治スタンスです。時には汚い取引もしつつ、我慢強く、少しずつ着実に。ヒラリーに投票する人々は、そういう手腕に期待している訳です。しかし、サンダース支持者は“1ヵ月で激ヤセ!”というダイエット広告に飛び付いてしまう人のように、劇的な変化を求める。「生温いことを言っても世の中は変わらない。一気にシステムごと新しいものに取り換えないと、世界は立ち行かない」と言う。リバウンドのリスクも高い筈ですが、それでも一足飛びに“正義の革命”を欲する。




彼らは、こうも言います。「ヒラリーは、この30年間、主張をコロコロ変え続けてきた。しかし、サンダースはずっと変わらない」。でも、シニカルに言ってしまえば、それは現実を見続けてきたメジャーと理想を追い続けたマイナーの差でもある。実際、今回の民主党指名候補争いでも、サンダース本人や支持者は「最後まで戦う」と意気軒昂ですが、数字を見れば、ヒラリーの勝利はほぼ確実と言わざるを得ません。ただ、一方で僕は、サンダース支持者たちにとてつもない可能性を感じてもいます。“今”を見る目は心許無いとしても、知性溢れる彼らは、20年後・30年後の新しいアメリカ・新しい世界がどうあるべきかを真剣に考えている。そこがヒラリーやトランプの支持者とも、日本のSEALDsとも大きく違う。彼らのような層が集まったことに、サンダース出馬の意味があったのだと感じます。ヒラリーは無事に民主党の指名を得たら、11月の本選に向け、何とかサンダース支持層を取り込もうとするでしょう。ラディカルなサンダース支持者の中には「ヒラリーなら本選では投票しない」と言う人も多いですから、ヒラリーは彼らの主張の一部を取り入れたり、或いは彼らの代表に重要ポストをちらつかせるかもしれない。更に、ヒラリー大統領が再選を目指す4年後には、もっと面白いことになります。アメリカの素晴らしいところは、非白人の出生率が高く、少子化が進んでいないこと。4年間、色々な経験を積んだ“元サンダース支持者”の若者たちは、その下の世代を戦略的に巻き込むことで、ヒラリーに自分たちの主張を“呑ませる”だけの政治力を持ち得るのです。そうなったら、アメリカ政治は本当に変わるかもしれない――。そんな希望を抱いたニューヨークの予備選取材でした。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『ユアタイム~あなたの時間~』(フジテレビ系)等に出演中。


キャプチャ  2016年5月23日号掲載




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テーマ : 国際政治
ジャンル : 政治・経済

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