【ソニー・熱狂なき復活】(13) 官製再編は産業を救うか?

20160523 01
官民ファンドの『産業革新機構(INCJ)』は今や、電機業界の打ち出の小槌と化している。これまでに、『ルネサスエレクトロニクス』に約1400億円、『ジャパンディスプレイ(JDI)』に約2000億円を出資。足元でも、『シャープ』への出資案や『東芝』の救済プランが浮上している。だが、INCJは本当に電機産業を救えるのだろうか。官民ファンドが設立されたのは、INCJが初めてではない。原型となるのは、2003年4月に発足した『産業再生機構』だ。銀行の不良債権処理を主たる目的として、深刻な経営不振に陥っている企業の再生を支援した。活動を終了するまでの4年間で、『カネボウ』や『ダイエー』等約40社を支援。企業に対する債権を非メインの金融機関から時価で買い取り、メインバンクと共に再生に当たった。取得した企業の株式は全てスポンサー企業や投資ファンドに売却し、約500億円の売却益を国に納めて2007年6月に清算された。活動期間は僅か4年だったが、国主導の企業再生の成功例とされており、INCJの成否を判断する上でも最大の比較対象となっている。再生機構の設立・運営に関わった元経済産業省官僚の古賀茂明氏は、「再生機構と革新機構の最大の違いは、活動期間の長さ。これが組織の性質を根本的に変えている」と指摘する。再生機構は当初から、活動期間を最長5年に限定して発足した。1つの案件に関わる期間も3年が目途だ。組織の寿命を短期間に限定したのは、成果と責任を明確にすることが目的だ。そして、この責任の明確化が一級の実務家を集め、最高の働きをしてもらうことに寄与した。再生機構では、『野村証券』出身の斉藤淳氏が社長、『ボストンコンサルティンググループ』日本法人社長だった冨山和彦氏がCOO、私的整理の権威である弁護士の高木新二郎氏が産業再生委員会の委員長を務めた他、個別の案件を判断するマネージングディレクターが多数いた。これらの実務家の中には年収1億円という人もいたが、再生機構は公費を主たる財源とする以上、払える報酬には大きな制限があり、大幅な年収ダウンとなる人も多かった。それでも、注目度が高く、社会的意義も大きい再生機構で成功すればキャリアアップできるというのは、彼らスター人材の大きなインセンティブだった。

一方でINCJの活動期間は15年と定められている。これでは、「15年に亘って国が身分を保証してくれる」と期待する人材を引き寄せてしまう。一級の人材にとっては精々腰掛け的な職場であり、投資案件をエグジット(売却)まで見ることなく転職する。INCJ発足当時に社長兼CEOを務めた能見公一氏と専務兼COOを務めた朝倉陽保氏は、昨年6月に揃って退任している。2人の退任は政府の意向と折り合わなかったことが背景と見られ、流石にキャリアアップの為ではなかったが、これを機に複数のマネージングディレクターが退職している。ルネサスのような投資済み案件のエグジットが仮に失敗に終わっても、責任を負うべき人は転職済みだったり、抑々誰が責任を負うべきなのかすら明確でなかったり…という事態になることは確実だ。NCJが発足した2009年頃は、金融危機を背景に官製ファンドが多数生まれている。だが抑々、官が関わるほうが企業再生は上手くいくというのは、全く根拠が無い。「情報の収集や分析については官僚のほうが長けている。故に、正しい戦略を構築できる」と考える官僚は想像以上に多いが、官僚のほうが経営者よりビジネスの現実を理解しているとは考え難い。官が民より長けているのは“巨額のカネを動かせる”という点に尽きるが、それすらも実務家の嗅覚に頼って正しく行わなければ意味がない。古賀氏は、「官製ファンドの背景にあるのは、官僚の間に増殖する介入主義だ」と指摘する。介入主義は小泉政権末期、「郵政のような改革がこれ以上進めば、省庁としての存在意義が無くなる」と危機感を抱いた経済産業官僚の間で台頭した。介入主義は“日の丸再編”的な発想と相性がよいこともあり、安倍政権下で一層肥大しているようだ。


キャプチャ  2016年1月30日号掲載




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