【丸分かり・激震中国】(13) 「1月の売り上げは減少、2016年は厳しい年に」――『イトーヨーカ堂』中国総代表・三枝富博氏インタビュー

約20年間、北京や成都で小売りの業況を肌で感じてきた『イトーヨーカ堂』現地法人のトップに、中国経済の現状等を聞いた。 (聞き手/本誌 松本惇・中川美帆)

20160523 02

――1996年に中国に進出したが、当初はどのような苦労があったのか?
「イトーヨーカ堂として中国進出は初めてだったので、文化・生活習慣・考え方の違いから、どのような基準で事業を進めていいのかわからなかった。進出後、半年から1年くらい経った時、先に中国に進出していたフランス企業の経営者から、『貴方たちは先進国から来ているから、法律・理性・感情の順番で物事を見るだろうが、中国は感情・理性・法律の順番だよ』と言われたのをよく覚えている。イトーヨーカ堂と取引をしてほしいと思って中国やヨーロッパのメーカー等約150社をホテルに呼んだことがあったが、来たのは20社くらい。殆ど日系企業だった。日本だったら、電話1本すればメーカーだろうが問屋だろうが、直ぐに集まってくる。それだけイトーヨーカ堂の影響力は大きかったが、全く違うということを思い知った」

――どのくらい経ってから手応えを感じたのか?
「2~3年経って、顔を出す頻度だったり、お互いに話し合ったり、そういうものが深まるに連れてだんだん関係ができてきた。そのウェートが高い国だと思った。取引先もお客さんも、社員もそうだと思う」

――北京では2014年以降、4店舗を閉店して5店舗になった。一方で、成都は6店舗あり、好調だ。その要因をどう考えるか?
「成都は都市のど真ん中、銀座の裏通りみたいなところに出店したので、競争相手がデパートや都市部の専門店だった。一方、北京は郊外の新興住宅地に出店したので、価格中心の商売をやってきた。2008年の北京オリンピックまでは中国経済全体が成長していたので、どんなビジネスでも伸びた。オリンピックが終わってから、北京の住宅の価値が5倍・10倍になり、農民工として働きに来た人は家が買えずに、かなり地方に戻った。結果として、 元々北京に住んでいた人だけが残り、北京のイトーヨーカ堂が『安いものばかりでいいものがない』と見られてしまった。北京ではその後も、価格中心の商売を続けてしまった。2008年の売上高は成都と北京で5対5だったが、今は成都7で北京3くらい」




――個人消費は落ちているか?
「かなり悪い。春節の商戦に入っているが、買ってもらえない。旅行等にお金は使うが、既にあるものを買い足すとか買い替えるとかは、よっぽど魅力があるものでないとしない。1月に入って、どの店も10~15%くらい悪くなっているのではないか。1~2月は年間の売り上げの約3割、利益で約4割を占めるので、ここで利益を上げられないと取り返すのが難しくなる。厳しい年になるのは予想できる。北京の小売業上位40社で見ると、昨年1~11月の売上高は前年比92%。自己申告でこれだから、実際は85~86%くらいかなと見ている。成都でも95%で、売上高トップのイトーヨーカ堂でも前年比100%。それ以外で見てみると、売り上げが増えているのは家具販売大手のイケアくらいで、後は軒並み下がっている。成都では信じられないくらい大型小売店の出店が相次いでいる。昨年に成都に進出した大型ショッピングモールは85店舗で、総店舗面積は935万㎢。今年も今のところ、8店舗が開店予定だ。不動産開発とショッピングモールの開発が一体となっていて、不動産を売る為にモールを造っている。だから撤退も多く、去年は4つのモールが無くなった。それでも成都はチャンスがあるので、今後も出店していく」

――消費者の変化は感じるか?
「お金を使う場所が変わってきている。以前は衣食住のウェートが高かったが、健康・教育・旅行等のウェートが高くなっている。中間層がどんどん増えて、大きく変わってきている。高成長から中成長や低成長になると、国民の意識や消費の特徴が変わる。豊かさの基準が変わったのが大きい。お店に来ても、『自分に合っている』とか『その会社の考え方が好きだ』とか、そういうところで判断するようになっている。リアル店舗での消費は落ちているが、Eコマース(電子商取引)は好調。ただ、熱狂するけど冷め易いので返品も多い」

――今後の中国経済の見通しは?
「はっきり言ってわからない。現場から見ると、中間層がどう成長していくかという視点で見ていかないといけない。大きく増える都市のマーケットをどう取っていくか。株価の下落や景気減速を悲観的に見るのではなく、長いスパンで大局的に見て判断しないといけない」

――日本企業は苦戦?
「殆ど苦戦しているんじゃないか。我々が店を閉めるのは、将来的に利益が出せる店を残して身の丈で出店していく為だ。『各店舗がキャッシュフローで稼げ』というのがうちの考え。イケアが成功しているのは、1店舗黒字になったら次の店にいくところ。カルフールやウォルマートストアーズが失敗したのはそこで、どんどんいい場所を取っていったが、半分以上赤字だ。我々も、この2~3年はちょっと厳しいかもしれないが、そこを乗り越えたら、いい局面が出てくるんじゃないか」

               ◇

■ジンバブエで人民元流通、中国48億円免除で支援
アフリカ南部・ジンバブエのチナマサ財務大臣が昨年12月、同国内で人民元流通の促進を表明し、世界的に話題となった。ジンバブエは、長年のムガベ政権の経済・財政政策の失敗により、未曽有のハイパーインフレを引き起こし、2009年には自国通貨のジンバブエドルの発行を停止。以降はアメリカのドルと南アフリカのランドが主な流通通貨となり、2014年には「人民元を法定通貨にする」と宣言したが、国内での流通は進まなかった。しかしここに来て、中国がジンバブエに対する4000万ドル(約48億円)の債権を放棄する見返りに、人民元の流通促進を約束したという格好だ。中国は、ジンバブエ誕生の起源となるローデシア白人政権に対する黒人によるゲリラ闘争を支え、独立後も欧米から制裁を受けるムガベ政権を支援し続けた歴史がある。国際的に孤立化を深めるムガベ政権にとって“命綱”とも言える中国が、人民元の国際化に突き進む中、ジンバブエ政府が中国の意図に従うのは何ら不自然ではない。中国にとっても、鉱物資源が豊富なジンバブエと良好な関係を継続するのは有益だ。同国での人民元流通は、両国の思惑が一致した動きと言えよう。 (毎日新聞ヨハネスブルク支局長 服部正法)

■『一人っ子政策』の弊害、戸籍の無い“闇っ子”
中国政府は、昨年12月に全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)常務委員会で『人口・計画生育法』を改正し、1組の夫婦に2人目までの子供を認める『二人っ子政策』を法制化した。これで『一人っ子政策』は完全に廃止されることになったが、規定違反で生まれて罰金が支払えない為に戸籍が無い“闇っ子”は、同政策に起因する問題として関心を集めている。中国の戸籍登記条例では、新生児の戸籍を生後1ヵ月以内に申告することが定められている。一人っ子政策が導入された1979年以降、2人目の子供が生まれても高額な罰金を支払えば戸籍を取得できたが、罰金を納められない為に戸籍が登記できない闇っ子は、約800万人いると推計されている。子供時代から教育・医療等で差別され続けた闇っ子の多くは、成人しても戸籍が無い為、就職や社会保障で国民の基本的権利を享受できずにいる。国民の権利平等を重視する習近平指導部は昨年12月、闇っ子の戸籍登記を進めることを決めた。また、もう1人の子供が欲しいのに、出産可能年齢を過ぎた為に代理出産を依頼する人が増えており、中国政府は改正した人口・計画生育法に代理出産の禁止も盛り込んだ。だが、潜在的なニーズが高いことに加え、金銭を受け取って代理母を幹旋するブローカーは暗躍したままで、問題の根本は改善されていない。一人っ子政策の負の遺産が中国を悩ませ続けている。 (同志社大学大学院教授 巌善平)

■『一帯一路』を開拓? パンダ外交が活発化
外交の重要局面でパンダを送り出す“パンダ外交”が、習近平政権下で活発になっている。最近貸与した国は、カナダ(2013年)・マレーシア(2014年)・ベルギー(同)。更に、韓国・インドネシア・ドイツ・オランダ・デンマーク・イスラエルとも時期等を調整していると海外メディアが伝えている。気になるのはその成果。実はパンダは、『一帯一路構想』と『アジアインフラ投資銀行(AIIB)』の先兵との見方がある。ここで挙げた9ヵ国の内、親米の韓国とイスラエルを含む7ヵ国がAIIBに参加する。昨秋、パンダが来ると伝えられたオランダは、一帯一路のシルクロード経済帯でヨーロッパ側の起点になる。一方、穏やかでないのが台湾だ。中国は台湾へのパンダ寄贈を1980年代後半から何度か企てたものの、台湾の政権が拒んできた。そして2008年5月、対中融和政策を取る国民党の馬英九政権が誕生するや、パンダ受け入れを決定。同年12月に2頭のパンダがやって来た。だが、1月16日投開票の台湾総統選で、独立志向の強い民進党の蔡英文主席が当選した。「パンダへの風当たりが強くなるのでは?」と一部のファンはやきもきしている。 (中川美帆) =おわり


キャプチャ  2016年2月2日号掲載




スポンサーサイト

テーマ : 中国経済
ジャンル : 政治・経済

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR