【ソニー・熱狂なき復活】(14) 最後に何が残るのか? 『シャープ』解体の末路

20160530 01
復活へ歩み出した『ソニー』とは対照的に、未だに経営危機の最中にあるのが『シャープ』だ。シャープの再建スキームについては、複数の憶測が飛び交っている。最有力視されるのが、官民ファンドの『産業革新機構』によるスキームである。最大の課題である液晶パネル事業を分社化した上で、革新機構傘下にありシャープの競合でもある中小型液晶大手『ジャパンディスプレイ(JDI)』との将来的な統合に繋げる――(右図)。この案は表向き、日本の中小型液晶の競争力確保と技術流出の防止を標榜するものだ。ところが、こうした建前とは別に、このプランはJDIへの援護射撃という見方が有力だ。仮に、台湾の『鴻海精密工業』がシャープの液晶事業を手中に収めれば、JDIは『Apple』製iPhone向けのシェアを奪われてしまう。JDIは国策として、革新機構主導の下、ソニーと『東芝』『日立製作所』の液晶事業を統合して発足した経緯がある。「JDIへの支援策として、シャープとの統合がある筈」というのが業界内の見方なのだ。JDIの大株主である革新機構が、競合であるシャープに出資するのは株主の利益に相反し、「ファンドの世界ではタブー」(革新機構幹部)。また、スマートフォンやカーナビゲーション向け中小型液晶市場は、地域によっては2社の寡占状態にあることから、統合すれば独占禁止法に抵触しかねない。こうしたハードルを越えるには、出資関係の調整に加え、「工場閉鎖等の大リストラが前提」(アナリスト)。更に、銀行による金融支援も不可欠で、現在、利害関係者間で再建スキームについて激しい議論が交わされている最中だ。2月4日の今年度第3四半期の決算発表の際、具体策がどこまで明示されるかが目下の焦点である。但し、両社を統合しても安泰と言い切れないのが悩みどころ。というのも、「Appleが一部のiPhone向けに、液晶に替わるディスプレイとして有機ELを採用する」との見方が浮上しているからだ。そうなれば、スマホの画面は液晶から一気に有機ELに替わる可能性がある。現在、スマホ向け有機EL市場は韓国の『サムスン電子』の独壇場。同じ韓国の『LGディスプレイ』も巨額投資での追随を決めた。「JDIが有機EL市場で勝負するならば、本体の研究開発の強化と、(同じく革新機構傘下の)“JOLED”の技術を生かすほうを、シャープと統合するよりも優先すべきだ」と、『モルガンスタンレーMUFG証券』の小野雅弘氏は語る。巨費を投じて統合しても、スマホのディスプレイ市場が有機ELに置き換われば、再建スキームが単なる既存技術の延命策と化しかねない。

一方、革新機構に代わるシャープの救世主として注目を集めるのが鴻海だ。同社は革新機構に先んじて支援に名乗り出ており、郭台銘(テリー・ゴウ)薫事長は昨年末にもシャープと共同出資する大阪の堺工場を訪れ、「シャープ支援への意欲を改めて社員に示した」(鴻海関係者)。今月中旬には、「シャープ本体に対し、『7000億円規模で買収する』と再提案した」との情報もある。仮にシャープが鴻海傘下に入れば、中国での営業網を生かした液晶再建が視野に入る。JDIの有機ELでの事業拡大が奏功すれば、鴻海-シャープ連合とJDIは棲み分けして共存できる望みも見えてくる。しかし、鴻海救済案にとっての最大のネックは、シャープ内部にある。「今の経営陣には、鴻海と腹を割って交渉できる窓口がいない」。同社関係者の1人はそう打ち明ける。シャープは昨年春、財務担当だった大西徹夫副社長を液晶部門の構造改革担当に就けた。当時、主力支援銀行の『みずほ銀行』と『三菱東京UFJ銀行』から総額2000億円の債務株式化(DES)の金融支援を受けたが、「DESの条件として、大西氏が液晶部門の採算を改善させ、外部への売却に道筋を付ける予定だった」(同関係者)。しかし、第2四半期決算でも液晶部門は赤字で、銀行側の大西氏への信任は低下している。2013年春に再建を託された髙橋興三社長体制下では当初、髙橋社長と大西副社長、更に技術部門トップだった水嶋繁光会長を加えた3人が舵取り役の筈だった。3人は同期入社の間柄。しかし、今や「高橋さんと大西さんは絶縁状態で、目も合わさない」(シャープ社員)。水嶋氏の求心力も「社内では全く無くなった」(同)と言われる。現体制では、高橋社長と共に代表権を持つ役員に長谷川祥典専務がいる。しかし、消費者向け家電部門のトップで、液晶再編に関する発言力は乏しい。目下、シャープの経営を仕切るのは、社員からも方針が見え辛いとされる髙橋社長と、三菱東京UFJ銀行出身の橋本仁宏常務、経済産業省出身の半田力常務の3氏と言われる。つまり、社長を銀行と経産省が取り囲む構図であり、ゴウ氏と膝詰めで交渉できる経営陣はいない。




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シャープの顔だった液晶部門が分社化され、JDIとの統合に同けて動き出したら、何が残るのか――。将来的にも安定した収益が見込めるのが複写機事業である。シャープの複写機は、コンビニエンスストア等の国内法人向けでは一定のシェアを誇る。複写機はメンテナンス料等を継続して稼げるビジネスであり、収益のブレも少ない。「革新機構がキャッシュ化の為に売却対象にする」との見方もあるが、「銀行が支援継続するなら、安定収益を見込める複写機事業の売却は考え難い」と前出の小野氏は指摘する。電子部品事業はiPhone向けカメラモジュールで高シェアを誇る。但し、こちらはソニーに売却するとの見方が消えない。白モノ家電も黒字事業だが、金融支援の前提とするには「エアコンから撤退する等、カテゴリーを絞る必要がある」(アナリスト)。同部門は革新機構主導による東芝との事業統合案も燻るが、消費者に近い白モノには、嘗ての“目の付けところがシャープ”のプライドもあり、規模を小さくしても維持したいのが経営陣の本音だろう。同様に、テレビや携帯電話にも更なる事業縮小の圧力がかかる。一方、社内で“お荷物部門”と揶揄されながら売却の話が進まないのが太陽電池だ。2014年度末、材料関連の引き当てを約580億円計上したが、高値での長期購入契約が残り、売却すれば巨額の違約金が発生する為、身動きが取れない状態が続く。そうなると残るのは、複写機と一部家電、低採算の太陽電池だけかもしれない。シャープ社内では昨年末に、前専務の中山藤一氏がコンデンサー大手の『ニチコン』に移り、元常務の広部俊彦氏も『日本電産グループ』に移った。若手の退職も続いており、頼みの人材の流出が再建に影を落とす。懸案の液晶分離へ向け、山場を迎えたシャープ。しかし、その分離後を見渡しても、視界は中々晴れない。


キャプチャ  2016年1月30日号掲載




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