【ソニー・熱狂なき復活】(15) 世界で勝つ為の大胆提言! 再編ベストシナリオ

20160530 03
電機業界に再編のうねりが押し寄せている。戦略的なM&Aだけでなく、『東芝』や『シャープ』のように経営危機の中で突発的に浮上するものもあり、それが更なる再編を生み出す。筆者はアナリストとして30年近く、電機業界を見てきた。ここでは、独自に開発した『経営重心®』理論を使いながら、あるべき再編を提案したい。先ずは、経営重心について簡単に説明しておこう。各社は、これまでM&Aの際に技術や市場の類似度合い・企業文化も含めた相性を、勘と経験で判断していた。その結果、電機メーカーが一見似ていても、企業風土や事業の適合性が低かったり、事業ドメインが広がり過ぎたりして失敗したケースは多い。こうした事業や企業の“距離”、経営の“スピード”、事業ドメインの“広さ”を定量化し、経営分析を客観化したのが経営重心理論だ。先ずは、事業サイクル(周期)と事業ボリューム(市場規模)のケタ数を計算して割り出し、事業ドメインの座標を事業重心として決める。スマートフォンはサイクル2年で市場が巨大なので10ケタ(2、10)、FA(ファクトリーオートメーション)はサイクルが6年、6ケタ(6、6)となる(左図)。そこから経営重心を定める。若し、『ソニー』がスマホだけの会社なら経営重心は(2、10)で、事業ドメイン面積は0。重心が(6、6)のFAに参入し、売上高の比率が半々になったら経営重心は(4、8)にシフトする。経営重心から2つの事業重心への距離は共に2となり、ここから広さ(円の大きさ)も定量化できる。経営重心や事業重心の距離が近いと相性が良い。『日立製作所』と『三菱電機』、『NEC』と『富士通』は其々、距離が約1と近い一方、ソニーやシャープと重電系は約6と遠い(左図)。同じ企業内の事業間の相性も分析できる。東芝が主力とする半導体と電力は10以上と遠過ぎ、FAと白モノ家電は2強と近い。事業毎の国際競争力という視点で見ると、完成品ではサイクルが3年以下、事業ボリュームが9(1億台)を超えると水平分業化し、韓国や台湾が強くなる。実際、スマホ、テレビ、パソコンで日本勢は負けた。一方で5~10年で数ケタから9ケタにある複写(コピー)機・FA・車等は日本が強い領域だ。この経営重心理論を判断基準に、各社の再編のあるべき姿を示す。

20160530 04
先ずは、不正会計問題で揺れる東芝について見てみたい。今期は5500億円の最終赤字になる見通しで、バランスシートが悪化する為、メディカル(ME)・白モノ・パソコン(PC)を早い段階で売却し、自己資本を強化すべきだろう。メディカルの事業重心は、製造装置やFAに近い。東芝のメディカルには、デジタルカメラ等の精密機器メーカーや家電メーカーが関心を示すが、距離が遠過ぎて適合性が難しい。故に、一度はファンド等に出した後、類似の日立や国内各社のへルスケアを再編&統合し、世界常識の売上高1兆円クラブとして上場を目指すべきだ。嘗て、『三菱重工』との統合を考えた日立なら国内再編に協力することはあり得るし、得意のIT事業に繋げていくメリットもある。これらの売却で自己資本が1兆円を超え、財務基盤が安定した後は、グローバル競争に勝つ為にセミコン(半導体)の上場が望ましい。経営重心理論で見ると、半導体と電力はかなり距離があり、不安定だ。その間を埋めるのがヘルスケアだったが、売却するならば半導体か電力に集中するのがよいだろう。半導体を上場させると、原子力等電力中心に社会インフラが主力事業となり、日立と似たポートフォリオとなる。傘下の『ウェスチングハウス』の問題も含め、長期的にリスクのある原発を外に出して『産業革新機構(INCJ)』が出資し、更に日立・三菱重工・『アレバ』等も含めた“国際原子力公社”とするという手もある。次はシャープを見てみよう。液晶不況もあり、今期2000億円を超える赤字ならば債務超過のリスクがある。売却先はINCJか台湾の『鴻海精密工業』かと議論が続き、新聞等では液晶を分社化した後、INCJがシャープ本体と液晶分社に其々出資し、最終的に『ジャパンディスプレイ(JDI)』との統合を目指すとされている。だが、主用途のスマホは有機EL化が急ピッチで進む為、共倒れリスクがある。価値があるのは精々、亀山第2工場が持つIGZO液晶の生産ラインぐらいだろう。INCJは液晶ではなく、東芝の白モノ家電等をシャープに統合し、ユニークな商品を出してきたメーカーとしての再生を目指すべきだ。業績好調でグローバルトップを目指す日立も、成長に向けたグループ再編が必要だ。リーマンショック後のリストラから5年が経過。当時の業績を支えた電子材料や建機は、足元が厳しい。一方で電力や都市開発、交通等の社会インフラは育ってきた。日立が展開する事業分野は未だ広く、経営トップもそれを理解している。では、どう再編するといいのか? 社会インフラとITを核としたグループを本体として、子会社は建機・産機・メディカル・装置等の中量産の製品で景気変動の影響が大きいグループ、材料や家電等コモディティー関係のグループ、物流・金融・商社関係等横串機能を持つグループの3つに纏めるのが望ましい。各グループ内の事業間シナジーが強化され、投資家からも理解し易くなる。キャッシュに余裕があれば、社会インフラ向けに『日揮』等のエンジニアリング会社が欲しい。それ以外の電機メーカーも再編が必要なのは同じだ。ソニーはCMOSイメージセンサー等のデバイスとコンテンツに特化する形でいい。『パナソニック』は家丸ごとにフォーカスすべきだ。未だに抱えている液晶パネルは2018年の有機ELの普及、テレビは東京オリンピック後の反動減で手遅れにならない内に切り離したほうがいい。目標として掲げる2018年度の売上高10兆円の達成へ、『船井電機』や『パイオニア』を買収する可能性もある。




20160530 05
企業を業界再編へ動かすものは、新しい技術革新である。昨年はAI(人工知能)・5G(第5世代移動通信)・IoT(モノのインターネット)・ADAS(先進運転支援システム)等が登場した。そうした中でディスプレイ・無線・電源等の“モジュール化”が進み、電子部品・半導体・電子部品・機械部品の垣根が無くなりつつある。中でも、スマホメーカーの有機EL採用は液晶関連業界にショックを与えた。有機ELには、液晶にあったバックライトやセル工程が無い。バックライトを製造する『ミネベア』と電子部品の『ミツミ電機』が統合発表したのも、それが一因だ。モジュール化の影響が最も大きいのは、スマホのRF(高周波)分野。無線の高周波化や多バンド化に伴い、SAWフィルターやパワーアンプの搭載が増加。微妙な周波数特性の維持は、別々の会社が規格によってすり合わせるのでは難しく、1つの会社で全体的なバランスを考慮した設計・生産が必要だ。『村田製作所』等、電子部品メーカーによるパワーアンプやセンサー関連等半導体メーカーの買収や、『クアルコム』と『TDK』の高周波部品の統合、『アバゴ』による『ブロードコム』買収等は、まさにその流れである。半導体業界にはもう1つ、“チャイナチャレンジ”と呼ばれる動きがある。中国が国を挙げて半導体を強化しようというものだ。象徴的な動きが、清華大学をバックに持つ『中国紫光集団』のM&Aである。紫光は、傘下の『ウェスタンデジタル(WD)』を通じて『サンディスク』に出資し、『マイクロン』にも出資提案中だ。そして、サンディスクと東芝は提携関係にある。財務に苦しむ東芝が仮に半導体を上場させ、そこに紫光等が出資すれば、メモリを巡って東芝・サンディスク・マイクロン・紫光という一大連合が誕生し、韓国の『サムスン電子』に対抗する巨大勢力ができる。東芝にとっては、強みを持つNANDフラッシュメモリの次である次世代不揮発RAMの技術を強化する為には、絶好の連携だ。紫光は、RFのモジュール化にも触手を伸ばす。この分野の雄はクアルコム。これに対抗すべく、紫光は中国の『スプレッドトラム』や『RDA』に資本参加した。この2社には『インテル』も出資しており、そこに台湾の『メディアテック』が加わればクアルコムに匹敵する勢力になり、RFやアナログも含めた設計技術が手に入る。紫光は、業界再編の台風の目だ。インテルは中国を利用しつつ、将来は『アルテラ』買収で強化したFPGA(プログラミングできるデバイス)で、本格的なIoT時代にノイマン型とムーアの法則を超えることがゴールだろう。残る大きな再編は、車向け半導体・国内でのCMOSイメージセンサー・アナログ系の再編である。『ルネサスエレクトロニクス』は、大株主であるINCJが株式売却を決め、ドイツの『インフィニオン』等が車向け強化戦略の中で買収を提案したが、これにユーザーの『トヨタ自動車』等が難色を示しているという。現在は、車市場に関心が高い『日本電産』が有力のようだ。電機業界では、あらゆる分野で上位3社への集中が進む。半導体は台湾の『TSMC』・サムスン電子・インテル、スマホなら『Apple』・サムスン・『ファーウェイ』という具合だ。上位から脱落したメーカーを中心にした再編が更に加速するのは間違いない。


若林秀樹(わかばやし・ひでき) 『サークルクロスコーポレーション』主席アナリスト。1984年に東京大学工学部、1986年に同大学院卒。『野村総合研究所』に入社し、技術調査部を経て企業調査部主任研究員。その後、『JPモルガン証券』マネージングディレクター・『みずほ証券』主席アナリスト等を歴任し、2014年から現職。著書に『日本の電機産業に未来はあるのか』(洋泉社BIZ)・『経営重心』(幻冬舎)等。

               ◇

「彼は表に出せる人物ではなかった。在任当時は極力、機関投資家の前に出さないようにしていた」――。あるソニーOBが取材で漏らしました。ハワード・ストリンガー前会長のことです。「エレクトロニクスに造詣が深くない」との指摘は多々ありましたが、会計や経営指標についても「殆ど理解していなかった」。若し事実なら、そんな経営者が7年も在任し、人や資産をリストラし続けた事実に、改めて恐ろしさを感じます。そんな人材を登用・留任したソニーの企業統治構造は、今も変わりません。経営者次第で企業は変わります。言い換えれば、トップ選出の仕組みが健全か否かが企業の運命を決めるのです。ソニーの真の復活は、取締役会の12人次第です。 (本誌 杉本りうこ) =おわり


キャプチャ  2016年1月30日号掲載




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