【儲かる農業】(14) 127農協を独自指標で評価! 首位『JAいなば』の“お節介力”

今や、農家が農協を選ぶ時代である。本誌では、担い手農家が格付けした“JA支持率ランキング”を作成した。農家に寄り添った農協と、そうでない農協との格差が浮き彫りになった。

2015年は、農協界が大揺れに揺れた年だった。第1の震源は、『JAグループ』の頂点に君臨してきた『全国農業協同組合中央会(JA全中)』を解体する農協法改正。もう1つの震源は、昨年8月、約700ある地域農協を束ねるそのJA全中の会長に、改革派の奥野長衛氏が就任したことだ。奥野会長は予て、全中による統制的な組織運営に疑問を呈しており、ボトムアップ型の意思決定を目指している。現在、地域農協の組合長らにヒアリングを重ねているところだが、未だに新機軸は打ち出せていない。全中会長選挙で票を奪い合った改革派と守旧派との間にシコリが残っていることも、その一因ではある。だが、それだけではない。本来ならば、地域農協は、上部団体である『全国農業協同組合連合会(JA全農)』を下から突き動かすことで、肥料や農薬を安くしたり、農産物に付加価値を付けて販売したりする改革を主導する立場にある。そうした改革こそ、経営感覚がある担い手農家からの支持に繋がるのだが、農協によって危機感の度合いが全く異なる。今や、農家が農協を選ぶ時代である。農家支援に注力している農協は生き残ることができるし、それを怠っている農協は、農業協同組合としての存在意義を失い、金融事業の分離等、組織の解体が待ち受けている。その意味では、農協にとって農家は“お客さん”。農家からの支持率は、農協が生きるか死ぬかを分ける生命線なのだ。農家にとっても、農協改革の成否は死活問題になり得る。農薬や肥料等の生産資材の価格は、農協と民間企業との競争で決まる。農協が、農家を束ねてきた過去の支配構造に胡坐をかき、民間企業と競い合うことを放棄したならば、自ずとその地域の農業は弱体化する。高い生産資材を買わされることが常態化し、高コスト体質が染み付いてしまうからだ。“負け組の産地”のレッテルすら貼られかねない。

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本誌は、国内初の試みとして、規模拡大意欲のある担い手農家を対象にアンケートを実施し、1925人の農家に農協を格付けしてもらった。“農産物販売力”“肥料等の供給力”“農業への融資力”等、5部門15項目で評価を行い、指数化し、127農協をランク付けした。上表が、JA支持率ランキングの上位10農協だ。首位に輝いたのは富山県の『JAいなば』。強みは、「農家の懐に飛び込み、経営を支援する姿勢が徹底されている」(JAいなば管内の農家)。例えば、コメ農家が1年で最も忙しい田植えシーズンには、農家のサポートを担当する農協職員(営農指導員)が農場に現れ、頼んでもいないのに苗の準備を1時間ほど手伝っていくのだという。ある農家は、JAいなばの営農指導員について、「抜群の学歴ではないかもしれないが、勉強熱心。100点を付けてもいい」と太鼓判を押した。アンケートでは、別の農協に対して「農協が農家から離れている」ことを批判する声が多く寄せられた。そんな中、JAいなばの営農指導員の驚異の“お節介力”は異彩を放っている。その営業力は、財務強化にも直結している。営農指導員と農家とのコミュニケーションが円滑で、農産物の販売や肥料・農薬の供給の仕事が増え、多くの農協にとって赤字部門となっている農業関連事業の収益が改善。2013年度の全国の農協の農業関連事業は平均2億円の赤字だったが、JAいなばの農業関連事業は6000万円の黒字だった。JAいなばは、“農業への融資力”部門でも全国トップの支持を得た。営農指導員が普段から農家の経営を把握しているので、農業融資もスムーズにできるという訳だ。実は、JAいなばの高支持率の秘密は役員構成にある。一般的に、農協役員は“地域の名誉職”ポストであり、行政OB等が就任することが多いのだが、JAいなばの場合は、組合長・常務クラスが大規模農家のリーダーで占められており、農家のニーズを直接吸い上げることができるのだ。




2位に輝いた秋田県の『JAあきた白神』は、“農産物販売力”部門でトップになった。コメしか特産物が無かった地域で、新たに『白神ねぎ』の産地作りを主導。野菜単品の農協販売額で、秋田県初の10億円を達成した実績が評価された。アンケートでは、多くの農協に対して、農産物の販売を全農に委託するだけで、独自に高値で売る工夫が無いことを批判する回答が目立った。それに対してJAあきた白神は、コメの7割を全農を通さずに独自の販路で売っていることも、支持率アップに繋がった。3位となった長野県の『JA上伊那』は、“新規就農支援力”部門で高い評価を得た。実際に、45歳までのIターン・Uターン者らを研修生として積極的に受け入れており、農協と行政がコストを折半して農家の独立を支援している。効果は覿面で、研修生の8割が地域に根付き、農業に従事していることが評価されているという。因みに、新規就農支援力部門の1位は長野県の『JA松本ハイランド』(総合12位)。長野県全体で新規就農をバックアップする姿勢が見て取れる。農家が農協を選ぶ時代が到来した。農協は、地域で農地面積を拡大させている担い手農家の存在を無視できなくなっているのだ。今回のアンケートで、4~5年前から一部の農協が、経営規模が大きい担い手農家に対して、生産資材の大口割引を実施していることがわかった。「大口割引がある」との回答のあった農協は、“肥料等の供給力”部門トップである新潟県の『JA新潟みらい』を始め、総合首位のJAいなば、新潟県の『JAえちご上越』、群馬県の『JA利根沼田』、茨城県の『JA竜ヶ崎』、石川県の『JA松任』、三重県の『JAみえきた』等だ。従来、農協には組合員を平等に扱う原則があり、規模の大小があろうとも組合員毎に異なる条件で取引することはあまり無かった。尚、JA新潟みらいの組合員によれば、同農協は地域の畜産農家から出る堆肥を使った安価なオリジナル商品を開発。肥料メーカーから農家へ直送したり、農家が直接、メーカーに取りに行ったりすることで運送費も抑えられるという。一方で、40haの大規模農家でも、「肥料の購入量が10袋でも1000袋でも同じ値段なのはおかしい」(JA香川県管内の農家)と不満を訴える事例もあり、「全体の3割の農協は大口割引を実施していない」(農林水産省)ようだ。担い手農家の中でも、本連載の(02)に登場するような有力農家たちは、自然災害等のリスクを分散する為に、本拠地から離れた地域で農産物を生産する“飛び地農法”を始めている。彼らは、進出先地域の農協に、農地の確保等で協力を求めることも多い。また、農協の肥料・農薬が高ければ、別の地域から調達する事例も出てきている。農家が農協を選別する時代になった。彼らに相手にされない農協・JA支持率の低い農協は、生き残ることができないのだ。

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キャプチャ  2016年2月6日号掲載




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テーマ : 農政
ジャンル : 政治・経済

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