【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(68) “マスターカード”に“スーパーマン”…死を呼ぶ合成麻薬が世界で大流行中!

人間の欲望というものは底が知れず、いくら「危険だ」とわかっていても、「冒険したい」と一歩を踏み出してしまう人は、どの社会にも一定の割合で現れます。「全ての危険を排除する! ダメ、ゼッタイ!」――道徳の標語としてはいいかもしれませんが、実際は夢物語に過ぎません。日本では、元プロ野球選手である清原和博さんの覚醒剤問題が世間を賑わせましたが、今、世界中で“それどころじゃない”レベルの薬物汚染が急拡大しています。コカインやヘロイン、そして何よりMDMA等の合成麻薬。最早、国連でさえも「根絶することは難しい」と認めている。リスクコントロールをしながら、社会全体として“上手く付き合っていく”しかないというのが実情です。批判を恐れずに言うならば、一口に“麻薬”と言っても、比較的軽いものと、本当に手を出してはいけないものがあります。例えば、“ソフトドラッグ”と呼ばれる大麻は、世界各地で合法化の動きが活発化。アメリカのコロラド州・ワシントン州・オレゴン州・アラスカ州では、既に嗜好品として個人使用が認められていますし、ウルグアイでも栽培や使用が合法化済み。来春にはカナダでも合法化される見通しです。しかし、その一方で、どのような社会でも倫理的に止めなければいけない薬物もある。それが、新種の“死を呼ぶ合成麻薬”です。2000年代後半以降、世界の“ドラッグ地図”は大きく変貌しており、過去の常識は通じません。特に、合成麻薬はまさに日進月歩で進化を遂げ、常に新種が出回る為、その危険性が知れ渡る前に広く蔓延してしまう。

日本のメディアでは、新種の合成麻薬を“危険ドラッグ”と一括りに呼ぶこともありますが、あれが全て覚醒剤より安全だと思っていたら大間違い。覚醒剤・ヘロイン・コカイン・LSDといった“古典的な麻薬”は、何十年にも亘って多くの人々が使用してきた為、危険性や対処法に関しても、人類としてある程度の“知見”が蓄積されています。しかし、新種の合成麻薬には、それが全く通用しないのです。一例を挙げるなら、数年前にアメリカ等で流行した『バスソルト』。これを使用した人は屡々非常に暴力的になり、またゾンビのような状態になる為、“ゾンビドラッグ”とも呼ばれます。2012年、マイアミ州でバスソルトを使用したとみられる全裸の男が、ホームレスの男性を襲い、顔面の一部を食い千切った『マイアミゾンビ事件』で、その存在は一気に知れ渡りました(その後、バスソルトは日本にも上陸)。バスソルトが落ち着いたと思ったら、今度は昨年あたりから『フラッカ』の流行が大きな問題になっています。これもバスソルトと同じカチノン系の薬物で、異常行動を誘発し、死に至ることも少なくない。フロリダ州では昨年、フラッカ使用者の死亡が数十例確認されています。フラッカの取引価格はコカインの15分の1程度とされ、「5ドルの狂気」「コカインより危険でビッグマックより安い」等と報じられました。また、MDMA――所謂“E(エクスタシー)”に類する錠剤合成麻薬の“粗悪品”の蔓延も留まるところを知りません。1980年代から1990年代にMDMAが流行した頃は、妙な言い方になりますが、きっちりした品質の“ブランド”があった。ところが最近は、通称“スーパーマン”“マスターカード”等、数々のネーミングで安価な錠剤が流行。これらは品質が一定せず、中には体に入れたら一発で激烈な症状を引き起こす物質が混じっていることも多い。気軽に手を出した若者の死亡例も後を絶ちません。最近、イギリスやオランダのクラブでは、客の持っているブツが純度の高いものか、それとも混ぜ物の入った危険度の高いものかを検査するキットが置かれていることもあるようです。「最早、使用を止めることはできないが、せめて死なないでくれ…」という苦肉の策です。




こうした安価なドラッグの世界的蔓延の背景には、中国という“新興生産国”の台頭があります。違法業者のみならず、時には中国共産党関係者のファミリーがビジネスとして覚醒剤や合成麻薬を大量に密造し、それを世界中の“顧客”に売り捌いている。数年前、広東省の製造拠点が摘発された際には、覚醒剤約3トン、原料約23トンが押収されました。規模感が桁違いなのです。近年のヤバい合成麻薬は、かなりの割合が中国で製造されたか、或いは中国内から原料が提供されたと言われます。前述のフラッカ等は殆どが中国産で、複数の中国企業が「フラッカを自宅へ直接送り届ける」とインターネット上で謳っていたほど。『ヨーロッパ刑事警察機構(ユーロポール)』は、「中国はヨーロッパの麻薬の間屋になりつつある」と名指しして批判しています。更に最近では、中国を追ってインドも“生産力”を上げており、メキシコの巨大麻薬密輸組織『シナロア・カルテル』は、フィリピンや中国に拠点を構えました(フィリピンの次期大統領に過激な言動が目立つロドリゴ・ドゥテルテ氏が選ばれたのも、同組織への強硬姿勢が評価されたからでもあります)。違法薬物の製造拠点は、残念ながら中国のみならず、アジア各地に広がりを見せているのです。こうした現状を考えれば、日本だけが“潔癖”でいられるというのは夢物語です。「ダメ。ゼッタイ。」と言うばかりで、麻薬に関する具体的な知識・現実を見据えた議論がなされないまま、暴力団が流通を取り仕切る新種の合成麻薬が水面下で蔓延していく――。これが最も無責任、且つ危険なシナリオであることは言うまでもありません。数ある違法薬物の中で、本当にやってはいけないものは何か。それはどんな結果を生むのか。それでも来るべき“流行”と、どう向き合えばいいのか――。堂々と議論する時期が来ています。無鉄砲な若者たちが、何の知識も無いまま、覚醒剤より遥かに手軽な“死を呼ぶ麻薬”に飛び込んでしまう前に。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『ユアタイム~あなたの時間~』(フジテレビ系)等に出演中。


キャプチャ  2016年7月4日号掲載




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