【働きかたNext】第10部・世界が問う(04) 外国人労働者迎えるドイツ――活力維持へ根付いた覚悟

20160704 01
人口減で働き手が減る日本。外国人労働者は社会を混乱させる存在なのか、それとも人手不足を補う救世主なのか。受け入れに積極的なドイツにヒントを求めた。シュツットガルト郊外の『ボッシュ』本社。スペイン出身のラウル・ゴンザレス(21・左写真)が金属加工を学んでいた。技術者を目指す研修生で、会社紹介のアパートで1人で暮らす。月に3週間は社内で実習、残りは職業学校で理論を学ぶ。「スペインには仕事が無い」と2014年に応募。1日6時間の語学教室に3ヵ月通い、その後、社員の自宅に6週間ホームステイして、ドイツの仕事や生活を体験した。ここで意志を再確認された。研修は3年間。最初は銀行口座の作り方もわからず、一時帰国を待ち望んだ。だが、社員が生活相談にも乗ってくれ、ドイツ語が上達すると友人もできた。今は「ボッシュに就職したい」と強く思う。ドイツの企業が手厚く外国人を迎えるのは、労働力不足への危機感からだ。ドイツは、1972年から死亡数が出生数を上回る。外国人受け入れで人口を維持し、移民やその子孫が占める割合は20%に上る。シリアからの難民も“金の卵”だ。南部の自動車部品メーカー『イービーエムパプスト』は昨年6月に、「意欲が高い」とハレド・ミルハニ(32)を採用した。社長のレーナー・フンズドルファーは、「地方では他に人手を確保する方法が無い」と話す。移民流入には異論もある。保護に多額の税金がかかる。テロを起こさないか――。それでも受け入れるのは、経済活力を維持する為に、外国人を社会の一員として迎える覚悟が官民に根付いているからではないか。

日本はどうか。歴史的な人手不足に直面する企業は、外国人受け入れに知恵を絞るものの、国の対応はその場凌ぎだ。「袋はもっと広げて品物を入れて」。東京都新宿区の『ローソン』店舗。ベトナム人のグエン・フー・チュン・グエン(21)が指導を受けていた。ペットボトルは、蓋がオレンジなら保温する。寿司のパックは温めない。日本の常識を外国人にどう教えるか。ローソンの答えは、教育を店任せにせず、本部で一括することだった。専門社員が計30時間の研修を担う。だが、年200人以上も育てる外国人は優秀でも、長くは働けない。日本は高度人材以外の外国人労働者を受け入れておらず、“留学生アルバイト”という建前だからだ。自動車クラッチ大手の『エクセディ』は、海外工場で働く外国人300人を来年までに日本に受け入れる計画。約20億円かけて宿泊施設も設けた。ただ、研修名目の技能実習制度で働けるのは3年間。会長の清水春生(69)は、「企業の自助努力では限界だ」と危機感を強める。国の建前と外国人が働く現場の乖離は、放置すれば益々広がる。それこそ社会不安の温床にならないだろうか。『大和総研』の山崎加津子は、外国人の働き方について「現実を直視し、長期的な視点で議論すべきだ」と訴える。 《敬称略》




「ほら笑顔、笑顔」「ストロー(を入れるか)聞かなきゃ」。東京都新宿区内のローソン店舗。外国人研修生の隣に立って呼びかけるのは、トレーナーの吉岡由美子さん(46)だ。コンビニエンスストア業界では、店員の採用や研修をフランチャイズ店舗毎に行うのが一般的。これは、外国人を雇う場合も同様だ。だが、ローソンは2014年に外国人の採用と研修を手掛ける子会社を設立。本部が外国人育成を一括して担う仕組みを作った。吉岡さんは、ここのトレーナーだ。研修は1回3時間で10回行う。多彩な商品・サービスを扱うコンビニは、ただでさえ業務内容が複雑。それを、言葉も文化も異なる外国人に教えなければいけない。床に落ちた商品は包装されていても客に渡してはダメ、新聞の朝刊と夕刊は価格が違う、おでんはバーコードが付いてないので具を全部覚えないといけない――。コンビニは、外国人にとっては“当たり前”でないことだらけだ。ちょっとした習慣の違いもある。例えば、ベトナム人は袋を広げる時、バサッと振って空気を入れてしまう。日本では不快に感じる客もいる動作だ。吉岡さんは、こうした習慣の違いを1つひとつメモしていき、指導に生かした。留学生たちは20歳前後が多く、「自分の子供のよう」。温かい視線を注ぐが、時には厳しく指導する。特に、時間を守らない研修生には「何で連絡しないの!」と叱る。研修生は、時間に大らかな国から来た人が多い。フランチャイズ店舗が困らないように、しっかり教え込む狙いだ。ローソンで働く外国人店員は、全国に5000~1万人程度いるとみられる。全店員に占める割合は数%程度だが、都市部等では外国人が大半を占める地域もあり、最早彼ら無しには成り立たない。文化の違いを埋められずに店に定着しないようだと、店舗運営に支障を来しかねない。「外国人は、日本人の単なる“穴埋め”ではない」。ローソンクルー人材開発部の千葉寛之マネジャーは、こう話す。留学生は母国語の他、日本語とある程度の英語が話せることが多い。「近い将来、外国人の利用客が大幅に増えれば、店は留学生を貴重な国際人材として積極的に雇いたくなる筈」。急増している訪日客の多くは日本でコンビニを利用しているとみられ、英語で接客できる人材が店にいれば、競合店に対して優位に立てる。こうした“先行投資”の期待もあり、ローソンは外国人採用にも力を入れている。日本語レベルが中級以上の学生がターゲットで、語学学校等約20校と提携し、学校内にポスターを貼り、説明会を開いている。外国人に特化した研修と人材紹介は、現在は東京・大阪だけで行っているが、今後は研修ノウハウを動画等にして、全国どこからでもインターネットで利用できるようにする計画だ。吉岡さんがこれまでに送り出した“卒業生”は、ベトナム人・中国人等200人を超える。「先生、お客さんに褒められた」「ご飯食べに行こう」。SNSの『LINE』は、卒業生たちのメッセージで一杯だ。 (木寺もも子)

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多様な価値観や文化を持った人材を受け入れ、共に働き、成果を出すにはどうすべきなのか。『Google』が約5万人全員に実施するダイバーシティー(多様性)研修について、『グーグル日本法人』でダイバーシティー統括責任者を務める山地由里さんに語ってもらった。

20160704 02
グーグルが全社員に実施しているダイバーシティーのトレーニングを紹介しましょう。お洒落をして出社したエンジニアに、別の社員がこう言います。「今日は綺麗な格好しているね。エンジニアっぽくないね」。扨て、貴方がそこに居合わせたら、どんなリアクションを取るでしょう? 研修では、こんなロールプレーイングを行います。「ダイバーシティーとどう関連があるの?」と思った人も多いでしょう。ダイバーシティーというと、日本では女性・外国人・障がいを持った人と思われがちです。しかし、日本人男性しかいない職場にもダイバーシティーは存在します。例えば、朝が強い朝型の人と夜型の違いです。「朝型の人しか認めない」となると、その部署の夜のパフォーマンスは落ちるリスクがあります。しかし、両方の人がいれば、1日を通してチームの力を発揮できます。人間が同質なものを好むのは、本質的な傾向です。しかし、異質なものに意識を向け、その多様性を受け止めれば、違う考え方ができ、組織には大きな刺激になります。グーグルでは、無意識に「こういうものだ」と考えるステレオタイプな見方を“アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)”として、それがどんなものなのか、職場にどう悪影響を及ぼすのか、理解する取り組みを進めています。冒頭にあるエンジニアの話は、グーグルで実際にあった事例です。これは、「エンジニアとは普段、お洒落をしない」というアンコンシャスバイアスが元になっています。言った人は、何の悪意もありません。でも、お洒落が好きなエンジニアは、そんな風に言われたら居心地が悪くなるかもしれません。その結果、遠慮を感じたり、退職してしまったりするかもしれません。また、別のロールプレーイングでは、マネジャーが「チームの中に新しくフレッシュな考えが欲しいから、若い人を入れたい」と言ったというものもあります。ここには、「若い人はフレッシュなアイデアを持っている」というアンコンシャスバイアスがあります。でも、その場に中高年の人が居合わせたら、「このマネジャーは、フレッシュなアイデアは若い人しか持っていないと思っている」と感じて、持っている折角のアイデアを出し難くなります。一方、若者には「目新しく新鮮な知恵を出さねば…」とプレッシャーがかかります。何れも、組織としては損失に繋がりかねません。こうしたロールプレーイングでは、「その発言は間違っている」と指摘することではなく、その発言で居心地の悪い思いをする人がいることに気付いてもらうことが大事です。日本固有のアンコンシャスバイアスとしては、年齢とその人の知見を結び付けて考えることが多いように思います。例えば、「このポジションは深い知識が必要だから、40代以上の人にやってもらいたい」等です。また、子供がいる女性に対して、「この人はバリバリ働きたくないのだろう」という思い込みを感じることもあります。もっとカジュアルなもので言えば、「関西人は面白い」とかもそうですね。勿論、バイアスに気付いてアクションを取れる人ばかりでもないし、皆が自分を曝け出している訳でもありません。ただ、アンコンシャスバイアスが基となる悪気の無い発言で、居心地の悪さを感じている人が一定数いることも事実です。周りにいる人が、多少なりともそれに気付いて、発言することで、その人たちが救われることがあればいいかなと思います。 (聞き手/松本史)

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「お電話ありがとうございます」――。『ユニクロ』アトレ亀戸店(東京都江東区)で客の問い合わせに答えるのはチン・ハウルンさん(27)。2008年に来日したミャンマー難民だ。大学で政治活動に参加して国内に居辛くなり、日本に来た。当初は東京都内の蕎麦店で働き、少しずつ日本語を覚えた。難民認定を受けて日本人と同様に働けるようになってからは、支援機関を通じてインターンで同店に入り、今は社員として働く。“限定解除漏れ”“劣位置”。店には聞き慣れない業務用語が多いが、日本人の同僚に1つひとつ尋ねて覚えた。今は店長代行として、スタッフに言葉遣いや笑顔等を助言するまでに馴染んだ。引き継ぎはタブレット(多機能携帯端末)にアルファベットで打ち込み、日本語に変換し、メモに写す。地道な努力に、同僚の小向緑里さん(29)は「外国人には教えるのを諦めることもあったが、彼女を見て考えが変わった」と話す。『ファーストリテイリング』は、今年4月から難民社員をアフリカ系を中心に7人増やし、20人にする。中長期的には100人にする計画だ。外国人社員が働き易い環境の整備を急いでおり、店の資料も英語併記が増えた。新田幸弘執行役員(50)は、「ビデオを使う等、よりビジュアルに指示を伝える工夫がいる」と語る。


≡日本経済新聞 2016年3月23日付掲載≡

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テーマ : 働き方
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