【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(70) フェスで政治的な主張を叫ぶのは自由…でも今更ロックで反体制?

今月下旬に開催される『フジロックフェスティバル』が思わぬことで話題になりました。『SEALDs』の奥田愛基さんらがステージでトークショーを行うことに対し、一部から「ロックに政治を持ち込むな」という批判が出たのです。昔話になりますが、僕は若かりし頃、ウィリアム・バロウズという小説家に入れ上げていました。ハーバード大学の図書館には、彼の一般的な出版物のみならず、未公開の著作や朗読音源も所蔵されており、僕はそれらを貪るように掘り起こした。バロウズ本人に手紙を送り、直筆の返事を貰ったこともありますし、大学の卒業制作は、彼の“カットアップ”と呼ばれる手法を用いて作った前衛的な映像作品でした。

バロウズは、生涯を通じて“反体制”であり続けました。猥褻でグロテスクな作風、ドラッグ塗れの退廃した私生活。更に、当時は違法だった同性愛を公言。その全てがロック的であり、1950年代から1990年代に至るまで多くのミュージシャンから信奉されました。ミック・ジャガー、デヴィッド・ボウイ、ルー・リード、そしてカート・コバーン…。パンクの黎明期にも、多くのミュージシャンが“バロウズ詣で”をしていました。僕も嘗てバロウズの熱に浮かされた人間ですが、今ならわかります。彼は体制や商業主義を真っ向から否定しながら、気付いた時には“反体制・反商業主義というビジネス”のど真ん中にいたのです。率直に言って、彼の小説は処女作から進歩せず、キャリアを通じ、最初のテンプレートを使い回し続けただけです。しかし、それを各時代の若者が「これぞ反体制」と偶像化し、いつしか神輿に乗るだけで、皆が有難がる存在になった。一方、神輿を担ぐ側は「バロウズと一緒にいることこそがアートだ」「自分たちは商業主義に汚れていない」と言うことができた。つまり、お互いに利用し合っていた訳です。その構造が見えた時、僕のバロウズ熱は急激に冷めた。同時に、「ロックで社会を変えていこう」というメッセージにも、まるでピンとこなくなってしまいました。




フジロックに話を戻せば、抑々、音楽フェスが政治性を帯びるのは珍しいことではありません。40万人以上の若者がドラッグ、セックス、ロックンロールに酔った伝説的な1969年の『ウッドストックフェスティバル』(ニューヨーク州)も、ベトナム戦争反対という明らかな政治主張がありました。しかし、未だ嘗て“音楽の力”が政治を動かしたことはありません。凄まじいエネルギーに満ち溢れたウッドストックでさえ、政治に対しては1mmも影響を及ぼさなかった。当時のニクソン政権が倒れたのは音楽の力ではなく、『ウォーターゲート事件』で自爆しただけです。しかも過去20年間、ロックというジャンルは音楽面で革命を起こすことができず、最早古典になりつつある。今のフジロックに、ウッドストックのような異様なエネルギーは無いでしよう。フェスで政治的な主張を行うことは、いくらでも自由にやればいい。しかし、この件に関する本質的な問いかけは、「今更、ロックで反体制ってどうなの?」ということではないでしょうか。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『ユアタイム~あなたの時間~』(フジテレビ系)等に出演中。


キャプチャ  2016年7月18日号掲載

バカの壁 [ 養老孟司 ]
価格:734円(税込、送料無料)


超バカの壁 [ 養老孟司 ]
価格:734円(税込、送料無料)




スポンサーサイト

テーマ : サヨク・在日・プロ市民
ジャンル : 政治・経済

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR