【私のルールブック】(59) 指導者たるもの相手に伝わる言葉を持て

先日、とある芝居絡みのお仕事をさせて頂いた時のこと。作品名等、詳細をお伝えすることはできないのだが…。何故ならば、少々揉めたからである。先ずは初日、和やかにスタッフさんたちと挨拶を済ませると、ディレクターさんから作品や私の役柄の方向性を伝えられた。これはある種の慣例というか、大切なお互いの意思確認・意思統一の作業でもあるのです。ただ、実は私、この 時点で既に不安を覚えたのである。何というか、ディレクターさんのやる気はひしひしと感じたのだが、やる気があり過ぎて押し付けられそうな臭いがしたと言いますか…。案の定、芝居作りが始まると、間もなくしてぶつかったのである。

先ず、私の気に障ったのはタメ口。えぇ、私のタメ口嫌いは有名ですから。だったら、それぐらいは事前にリサーチしておいて下さいよ。っていうか、どう見ても私より年下だし、私が敬語を使っているのに向こうがタメ口じゃダメでしょ。次に、中途半端な横文字を混ぜ込んだダメ出しである。どこの大学出たんだか知らないけどさ、あんたが知っている単語を全員知っていると思ったら大間違いなんですよ。それ以前に、ディレクターの仕事は、自分がやりたいことを誰もが理解できる言葉で伝えて人を動かすのが最優先事項とされる訳で、自分が話したい言葉で話し切っちゃっている時点で機能を果たしていない訳です。で、極めつきは言葉足らずでした。要するに、ボキャブラリーに乏しいということ。わかり易く説明致しますと、何かっていうと「この作品はコメディーですから」って言うんですよ。「そこを忘れないで下さい」と…。いやいや、子役からの芸歴なんて意味も無いですが、それでも四十数年芝居作りに携わってきた訳で、普通に漢字も読めますからね、コメディーってことぐらい重々わかっていましたし、わかった上で私なりに芝居を作ってディレクターさんに判断して頂こうと思って演じていた訳ですから。それを根幹から正すような言い方をされちゃうと、「手前え、喧嘩売ってんのか!」って話にもなっちゃうじゃないですか。




あのね、思うんです。生意気な言い方をさせてもらえば、「言葉を持ち合わせた指導者が少なくなったな~」って。芝居作りに拘らず、どんな仕事であれ、物作りの出発点は熱い想いの筈。その熱い想いを様々な言葉に換えて、不特定多数の方々の理解を得ていき、形の無いものが少しずつ形をなしていく。でも、時に適切な言葉が思い浮かばない時もある。そんな時に最も効果を発揮するのが、人柄なんじゃないかと…。とはいえ、人柄を交えた成功は飽く迄も結果論ですから、やはり肝は言葉なんです。どんな業界であれ、第一線で活躍している方々は海千山千ですから、俄かの言葉で通用すると思ったら大間違いですし、誤魔化しはリスクが大き過ぎる。結局のところ、狂ったように伝える作業を繰り返して話術を身に着けるしかないんじゃないでしょうか? まぁ、私も道半ばなんで、あまり偉そうなことは言えないんですが…。それにしても、久しぶりに心底腹が立ったな~。「コメディーですから」って、そんなもん台本読みゃあ小学生だってわかるわボケ~!


坂上忍(さかがみ・しのぶ) 俳優・タレント。1967年、東京都生まれ。テレビ出演多数。子役養成に舞台の脚本・演出等、多方面で活躍中。


キャプチャ  2016年7月14日号掲載

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テーマ : 俳優・男優
ジャンル : 映画

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