【私のルールブック】(63) 親父から教わったいくつかの大切なこと

数日前に、ご近所さんに鯵の干物を頂いた。めちゃめちゃ美味しかった。因みに、自分で言うのもなんですが、私は魚の食べ方が結構巧いのである。何故かというと、子供の頃に親父に煩く躾けられたから…。魚は種類によって骨の硬さは勿論、骨の入り方が異なる。釣りキチの親父はとても詳しく、食べ終わった後は見事に頭と骨と尾が残るだけ。そんな作法を知る由もない幼き時分の私は、毎回身をかき集めるように食べ散らかし、親父から「魚に失礼だ」と言われ、一から食べ直しを命じられていたのである。正直、嫌でした。面倒臭いったらありゃしない。食べた気が全然しなかった。でも今思えば、教わっておいてよかったかなと…。そんなことを、鯵の干物をつまみに焼酎をやりながら、何とな~く思い出しちゃったのよね~。で、「他にも親父に教わったことってあったかな~」と記憶を辿ってみると、これが意外とありまして…。

食繋がりでいうと、味噌汁ですかね。親父が作る味噌汁で一番驚いたのは、オカラをしこたま放り込んだ味噌汁。初めて目にした時は「ウチってそんなに貧乏なのかな?」と暗い気持ちになりましたが、食べてみると美味いのなんの。何とも言えないトロトロ感とザラザラ感が舌の上で絡み合って、その上、かさましではないですが、オカラですから満腹感もあり、今でも偶に作るほどの美味でございます。後は…そう、親父は下駄や雪駄を履いていたので、鼻緒が切れた際の応急処置の仕方も教わったな。それと物書きだった為、万年筆のインクの入れ替え方や筆先の走らせ方も…。日本酒の燗のつけ方も教わりました。「特級はぬる燗で充分だけど、2級酒は熱めがいい」とかね。それと…「お酒が行き過ぎると女性に手を挙げる腐った男もいるんだな」ということを、実演でも見せて頂きました。勿論、加害者は親父で、被害者は私の母でございます。競艇行って勝てば焼肉、たとえ負けても母に無理矢理お金を出させて、寿司屋の暖簾を潜る。「勝っても負けても変わんねぇじゃねぇか!」ってね。




かなり脱線してしまいましたが、「幼き頃に親から受けた手解きは、成人してかなりな影響力を残すものだな」と改めて思う訳です。そして、それらの影響という種がどのように、どの方向へ育ち、蔦を伸ばしていくかによって、人生が決まってしまうこともあるのだろうなと…。親父のおかげで魚が捌けるようになり、恥ずかしくない食べ方もできるようになりました。下駄の鼻緒の応急処置法は、時代劇等に出演する際にそこそこ役に立っております。万年筆の筆先の走らせ方を教わりましたが、ごめんなさい、パソコン使っちゃってます。貴方に負けず劣らず毎夜酒を嗜んでおりますが、貴方のおかげで飲み過ぎて女性をぶん殴るような真似はできませんし、相変わらず競艇も楽しんでおりますが、借金してまでという気には到底なれません。焼肉も寿司も大好きですが、他人様に奢って頂くのは気が引けるので、ほぼ自腹でしか行っておりません。貴方は堅気でしたが、生き方は堅気とは言えないものでした。でも、そんな貴方のおかげで、私はギリギリ堅気として仕事をさせて頂いております。


坂上忍(さかがみ・しのぶ) 俳優・タレント。1967年、東京都生まれ。テレビ出演多数。子役養成に舞台の脚本・演出等、多方面で活躍中。


キャプチャ  2016年8月11日・18日号掲載




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