【タブー全開!政界斬鉄剣】(47) 霞が関が造った会見用原稿を新大臣が棒読みする本当の理由

池田「地味な内閣改造も終わりましたね。今週は、大臣に就任した人が味わう高揚感と現実について解説しましょう。私自身も、秘書時代に長年仕えた松岡利勝さんが農林水産大臣を務めたので、その前後の舞台裏を間近で目撃してきました」

――「入閣濃厚だ」と噂されても、実際には指名されないパターンもあるんだよね?
池田「まさに。“郵政解散選挙”の直後、第3次小泉内閣の時がそれでした。当時、松岡さんは農水大臣就任が確実視されていました。報道だけではなく、松岡さん本人が親しくしていた農水省の官僚からも『ほぼ間違いない』と聞かされていた。最後まで安心はできないのですが、周囲以上に本人の期待感は膨れ上がっていきましたね」

――どんな風に?
池田「例えば、大臣指名に備えて新調したモーニングを、未だ一度も着ていないのにクリーニングに出したりとかですね。内閣改造人事の発表が行われる当日は、官邸からの電話を待つしかありません。しかし、松岡さんは大物の族議員だったので、通常時でも1日300本以上の電話が事務所にかかってくるんです。大臣指名の日も、他の電話は鳴り続ける。その度に本人から『俺にかっ!?』と大声で問われ、秘書たちは『違います…』と返す重苦しいやり取りが数時間続きました」

――自分が大臣になれないことを知るのは、どの段階で?
池田「官邸から、大臣に指名しない旨の連絡が来ることは無い。松岡さんの場合、官房長官が新閣僚名簿を持って記者会見場に入る様子がテレビに映し出された瞬間でしたね。本人が『今回は無いな…』と呟き、大臣指名の電話を受ける瞬間を撮影する為に集まった取材陣に『待たせて悪かったね…』と話しかける背中は、明らかに意気消沈していました。今でも鮮明に覚えています」

――逆に、大臣になれた瞬間は?
池田「翌年の第1次安倍内閣の時、官邸の塩崎恭久官房長官から電話があり、『農水大臣に』と打診がありました。勿論、その瞬間は親分も私も喜んだ。しかし、驚かされたのは、その電話から5分も経たない内に、農水省の官房長や秘書課長等の幹部たちが、事務担当の大臣秘書官を伴って議員会館の事務所にやって来たことだった。本人でさえ5分前に大臣就任を知ったのに、官僚たちは随分前から知っていた訳です」




――閣僚の人選には、首相や官房長官に加え、霞が関官僚も深く関わっているってことだね。
池田「人選に加えて、内閣改造時に各省庁が熱心に取り組むのは、大臣就任会見の原稿を用意することです。当然、省益に沿った内容で、それをそのまま新大臣に読み上げさせることが狙いです。公式の場で発した言葉は、その後の大臣自身の言動をも縛る効果がありますから」

――でも、会見での発言は、新大臣の裁量で変更可能だよね?
池田「考えてもみて下さい。官邸からの電話が来る前は不安で一杯なのに、正式に大臣就任が決まった訳です。官邸に行けば大量のカメラフラッシュを浴び、皇居に移動すると天皇陛下から直々に認証を受ける。各省庁の大臣室では、霞が関のトップである事務次官以下から丁寧な挨拶を受ける。その気分の良さたるや、想像だけで恍惚ものですよ。そんな心理状態で、官僚から就任会見前に“レクチャー”という名の講義を受ける。自分が代表することになる組織を否定するような方針の演説を即興で作れる人なんて、そうはいませんよ」

――こうして、大臣が霞が関のコントロール下に置かれるのか。
池田「本人が入閣を直前まで知らず、決定後は圧倒的な晴れ舞台の連続。そして、当日夜に記者会見ではあまりに時間が無い。これを変える為には、就任当日に会見をする慣習を即刻止めることです。時間さえあれば、独自の方針を打ち出す新大臣が出現するかもしれません」


池田和隆(いけだ・かずたか) 元農林水産大臣秘書官・政治評論家・『池田和隆国家基本戦略研究会』代表・一般社団法人『社会基盤省エネルギー化推進協会』主席研究員。1967年、熊本県生まれ。法政大学在籍中に松岡利勝氏(農林水産大臣・故人)の私設秘書。公設第2秘書・政策担当秘書・農林水産大臣秘書官を経て現職。


キャプチャ  2016年8月29日号掲載




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