【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(80) ドナルド・トランプを操る新極右“Alt-right”はフェイスブックで広がった!

最近、欧米メディアによく登場する“Alt-right”という言葉をご存知でしょうか? 少し前から一部で話題になっていましたが、アメリカ民主党大統領候補のヒラリー・クリントンが、先月末の演説でその存在に言及し、一気に注目されたキーワードです。嘗ては“オルタナティブライト”の呼び名で通っていた“Alt-right”は、インターネットを主戦場にするアメリカの極右ムーブメントです(“Alt”と聞けば、アメリカ人のWindowsユーザーなら誰もがキーボードの“Altボタン”を連想するでしょう)。白人至上主義の色が濃く、“多様性への嫌悪感”を隠そうともしない攻撃性が特徴です。従来の保守(共和党主流派)に取って代わり、“強かったアメリカ”を復活させる――。そんな大義名分を掲げるこのムーブメントのコアにいるのは、公務員や有名企業勤務を含む30代から40代の高学歴白人男性。彼らは、現在のアメリカが「多様性を重んじるあまり弱体化した」と主張し、人種差別・反フェミニズム・反ポリティカルコレクトネス等の過激な言説を匿名でインターネット上にばらまき、人々を扇動しています。その下には、10代・20代の白人大学生らの“突撃部隊”がいます。彼らは、“Alt-right”の象徴的ビジュアルとなったカエルのミーム(ネタ画像)やネットスラングを駆使し、『4chan』や『reddit』といったインターネット掲示板を中心に、ヘイトや陰謀論を日々拡散。一度攻撃対象を見つければ、SNSで集中砲火を浴びせます。こう聞くと、「まるで日本のネトウヨ(ネット右翼)のようだ」と思う人もいるかもしれません(実際、日本語メディアでは“オルタナ右翼”と訳され、ネトウヨと同一視するような言説もあります)。しかし、“Alt-right”はそんなレベルではない。ジャーナリズム的な手法とミーム等のビジュアルを使って、多くの若者を取り込み、戦略的に動いています。そのプラットフォームになっているのが、攻撃的な保守系ウェブメディア『ブライトバートニュース』。右寄りで有名な『FOXニュース』よりも更に過激で、かなりの集客力があり、当初からずっとドナルド・トランプを支持してきました。その甲斐あって、ブライトバートニュースのスティーブン・バノン会長は今夏、何とトランプの選挙対策本部の最高責任者に就任しました。つまり、“Alt-right”は既にアメリカ大統領選の中枢に入り込んでいる。だからこそ、ヒラリーは彼らを名指しで批判した訳です(当然、ヒラリーも以前から彼らの攻撃対象になっています)。

そんな“Alt-right”を支持する若者たちのアイドルになりつつあるのが、ブライトバートニュースの編集者であるマイロ・ヤノポロス。彼はゲイで、「セックスは黒人男性としかしない」と公言する一方、人種差別・イスラムヘイト・女性蔑視発言を繰り返しています(彼の煽り芸については次回、詳しく分析する予定です)。ヤノポロスの言動に代表される“Alt-right”思想は、『クー・クラックス・クラン(KKK)』等の“ガチ差別団体”にも支持されており、リベラル系メディアもその点を批判しています。しかし、“Alt-right”の主力層は、逆にそれを「過剰反応するバカ」とネタにして冷笑。トランプの選対を取り仕切るバノンも、「レイシストや反ユダヤ主義者が我々の思想を支持したとしても、それは極一部だ」と一笑に付しています。この二重構造(陰謀論を真正面から信じる“情弱”を釣り上げつつ、もう少し知的な人々も満足させるという構造)も、“Alt-right”の1つの特徴です。若し、ドナルド・トランプが11月の大統領選で敗れたとしても、“Alt-right”の勢いは暫く続くでしょう。その主力エンジンとなるのは、恐らく『フェイスブック』です。最近では、相当数のアメリカ人が、紙の新聞や特定のニュースサイトではなく、フェイスブックの“トレンディング”(話題になっているニュースのリスト)からニュースを読む生活習慣へとシフトしています。それに従って当然、フェイスブック内でのアクセス数拡大を意識したページ作りをするニュースメディアも増え、センセーショナルな見出しの記事が量産される傾向にあります。大統領選で言えば、中道のヒラリーを冷静に評価する記事は盛り上がらず、拡散されるのはヒラリーと民主党候補の座を争った急進的左派のバーニー・サンダースを支持する記事、そしてトランプを支持する記事ばかり。勿論、その中には“Alt-right”のムーブメント参加者が関与しているものも少なからずあるでしょう。こうした“極端な記事”を好む人々の中に、情報の真偽を自ら確かめる“検証型読者”は殆どいません。自分の価値観を補完してくれる記事やミームを見つけると、長いコメントを書き込み、只管に拡散する。それが更にシェアされ、出鱈目が際限無く広がっていく…。




「こうした行動パターンを持つフェイスブックユーザーが億単位にまで膨れ上がると、幾つかの“世論”が生まれるに至るのではないか」と私は見ています。“Alt-right”も、そういう右寄りの人々が価値観を共有し合ううちに、世論に影響を及ぼすほど肥大化したのかもしれません。因みに、フェイスブックのトレンディングで取り上げられるトピックスは、嘗ては外注のキュレーターチームが調節していました。ただ、今年5月、匿名の内部告発で「左派寄りの記事を意図的に取り上げている」との疑惑が浮上すると、フェイスブック側は火消しの為にキュレーターを排除。無人のアルゴリズム方式へ移行したという経緯があります。ところが、このアルゴリズムは、導入直後にいきなり“ガセ記事”を拾ってトレンディングに表示してしまう等、その精度には大いに疑問が残ります。今後は改善が図られるでしょうが、何れにしても“ユーザーを左右両極に振り分ける”というフェイスブックの基本設計が変わらない以上、“Alt-right”はそれを最大限に利用して、勢力拡大を図っていく筈です。アメリカ社会の多様化に対する反動で生まれた“鬼っ子”は、どこまで広がっていくのでしょうか?


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『ユアタイム~あなたの時間~』(フジテレビ系)等に出演中。


キャプチャ  2016年10月10日号掲載



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テーマ : 国際政治
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