【私のルールブック】(70) 私のシフォン論(下)

前号では…ぶらっと入ったカフェで、シフォンケーキを巡ってウェイトレスさんとやり合いかけたところ、隣に座っていた女の子のミクちゃんにシフォンケーキを譲ることで一件落着か?――までを綴りました。「僕のシフォンケーキ、ミクちゃんに食べてもらってもいいですかね?」とウェイトレスさんに尋ねたところ…までを。しかし、ウェイトレスさんから返ってきた言葉は、私の想像を遥かに超えたものだったのです。「申し訳ありませんが、お客様が頼まれました物を他所のお客様にお譲りし、万が一何かがあった場合のことを考えますと、ご遠慮願いたいのですが…」。ほぉ~、何だか尤もらしい言い分に聞こえなくもないですが、万が一って何なんですかね。

例えば、私が譲ったシフォンケーキでミクちゃんが食中りしたとしましょう。でもそれは、私が食中りしようがミクちゃんがしようが、そんな腹を壊すような物を出す店側に問題がある訳で、じゃあ、私が腹痛を起こす分は構わないってことですか? そうではないとするなら、お金を支払った当人が腹痛を起こす分には対処のしようはあるけれど、客同士で譲った物に関しては対処のしようが無いってことな訳? えっ、全然よくわからないんですけど。そりゃあね、今や日本は1億総クレーム社会の世知辛いを通り越したウンコみたいな時代ですから、怖いのはわかります。最悪のことを想定して客対応をしなくてはならないのでしょう。でもね、私は「お腹が一杯でシフォンケーキが食べられない」と言っている訳です。なので、テイクアウトをお願いしてみたのですが、「アイスクリームがトッピングされていることからテイクアウトはできない」と言われ、シフォンケーキが宙ぶらりんの状態になってしまった。しかし、そこへ隣のミクちゃんが、アイスがトッピングされたシフォンケーキに興味を示しました。けれど、ミクちゃんが頼んだオムライスは単品だったようで、セット注文ではないことから、デザートは付いてこないと。




一見、「登場人物全員が不幸に陥ってしまった!」みたいに映りますが、事は極々単純で、シフォンケーキをミクちゃんに食べて頂くことで、全ての人間が幸せになれる訳ですよ。私の苛立ちも収まる、ミクちゃんの胃袋も満たされる、シフォンケーキも捨てられずに済む。これの何がいけないって言うのよ! こんなことも許されない世の中ですか? 私とミクちゃんのお母さんとの間でも折り合いはついているのに、それでも許されませんか? っていうか、このウェイトレスは何者なんだ! えぇ、要はそこなんですよ。抑々、何でこのウェイトレスさんがそこまでの発言権・決定権を持っているのだろうか? 恐らくですが、オーナーの娘さんだったと思われます。なので、オーナーさんを呼んで頂きました。すると、お父さんらしき人の良さそうな方が現れました。で、経緯を説明したところ、「どうぞどうぞ」と即答。「お気遣い頂き有難うございます」と低姿勢。商売って何ですか? 時代に即すことも大事ですが、一番はお客様に満足して頂くことじゃないんですか? 別れ際にミクちゃんが、「有難うございます。いつも観ています」と笑顔で…。シフォンケーキも美味しいってさ。その笑顔が、何よりの宝物なんじゃないんですか?


坂上忍(さかがみ・しのぶ) 俳優・タレント。1967年、東京都生まれ。テレビ出演多数。子役養成に舞台の脚本・演出等、多方面で活躍中。


キャプチャ  2016年10月6日号掲載



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