【タブー全開!政界斬鉄剣】(54) アメリカの大統領候補たちがTPPに反対する本当の理由

池田「今週は、アメリカの大統領選でドナルド・トランプとヒラリー・クリントン両候補がTPPへの参加に反対する裏事情を解説しましょう」

――アメリカはTPPで独り勝ちすることが確実視されているから、不思議に感じている人も多いだろうね。
池田「こんなに腑に落ちない現象なのに、日本の報道で解説されているのを見たことがない。そこからして大問題です」

――何で両陣営とも反対なの?
池田「主な理由は、製薬業界と畜産・酪農業界が反対しているからです。製薬の業界団体は“カネ”で、畜産・酪農の業界団体は“票”で、政界に絶大な影響力を持っている。特に、今回の大統領選は接戦状態の為、トランプとクリントンの両陣営共に無視できないのです」

――それは知らなかった…。
池田「しかもアメリカでは、大統領選がある年に下院の全議席と上院の3分の1議席の選挙も同時に行われる。つまり、今年はトリプル選挙イヤーなんです。だから、大統領候補のみならず、民主党も共和党も、カネと票で大きな影響力を持つ業界を絶対に疎かにできない」

――アメリカの製薬業界は、何でそんなに影響力が大きいの?
池田「意外に感じるかもしれませんが、製薬業はアメリカの花形産業であり、アメリカ人の誇りなんです。自動車や家電等の製造業が衰退して久しい中、軍事産業やIT産業と並んで、製薬業は世界をリードしている数少ない産業なのです。製薬会社の世界トップ10の内、5社がアメリカ企業。その売上額の規模は国家予算級です」

――製薬業界は、何でTPP参加で損をするの?
池田「新薬のデータ保護期間が短縮されてしまうからです。現状は12年間なのですが、TPPに参加すると実質的に8年間となってしまう。つまり、4年も早く安価なジェネリック医薬品を他社が販売できることになり、特許収入の内の約3割以上も失われてしまうのです」




――畜産・酪農業界の場合は?
池田「日本のJAをイメージしないで下さいね。規模が違い過ぎますから。アメリカの食肉輸出額は約2兆円という超巨大産業です。順調な業界としては、国に一切余計なことをしてもらいたくない。しかも現在、下院議長を務めるポール・デイヴィス・ライアン・ジュニア氏の地元は、畜産・酪農王国のウィスコンシン州。酪農分野も、ニュージーランドからの乳製品で打撃を受けるかもしれない為、絶対に反対なのです」

――そうだったんだ!
池田「更に、TPP加盟国からの外国人労働者が大量に流入することも予想される。東南アジアから安価な労働力が押し寄せれば、今以上にアメリカ人の職が奪われることにもなる。自由貿易の推進は、アメリカ全体にとってはメリットが多いのですが、損だと考えるアメリカ人も決して少なくないのです」

――とはいえ、国全体としては得が多いのなら、大統領選の結果に関係なく、結局はTPP参加の方向に流れるのでは?
池田「その通り。仮に無知なトランプ氏が勝っても、大統領になれば側近たちから詳細なレクチャーを受けるので、最終的には参加を決断する可能性は高い。でも、TPP参加に反対の立場で選挙戦を戦った直後の上下院議会が、直ぐに承認するかは微妙な情勢です」

――得をするアメリカが微妙な姿勢なのに、何で損をしそうな日本がTPP関連法案の採決に突き進んじゃうの?
池田「最早、無能の極みです。TPPで得をする日本の業界なんて、大量の外国人労働者を獲得して人件費をカットできる大手製造業くらい。彼らは今や、産業全体の中のほんの一握りの存在です。他の業界や日本人労働者たちは、全面的に損をする。なのに、今回の臨時国会で承認を急ぐなど、正気の沙汰と思えません。安倍首相は、アメリカの承認が不透明なことを理由にして、一旦立ち止まる勇気を持つべきだと思います」


池田和隆(いけだ・かずたか) 元農林水産大臣秘書官・政治評論家・『池田和隆国家基本戦略研究会』代表・一般社団法人『社会基盤省エネルギー化推進協会』主席研究員。1967年、熊本県生まれ。法政大学在籍中に松岡利勝氏(農林水産大臣・故人)の私設秘書。公設第2秘書・政策担当秘書・農林水産大臣秘書官を経て現職。


キャプチャ  2016年10月24日号掲載



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テーマ : TPP
ジャンル : 政治・経済

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