【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(83) もはや世界的潮流へ…麻薬の“非犯罪化”にはどんなメリットがある?

麻薬撲滅を掲げ、“超法規的措置”による密売人の大量殺害を奨励するフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領が国際社会から批判されていますが、同じく深刻な麻薬問題を抱える東南アジアのタイでは、全く別の“麻薬対策”を考えているようです。その対策とは、一言で言えば麻薬の“非犯罪化”。モデルケースとなるのがポルトガルです。ポルトガルでは2001年以来、大麻からヘロインまで、殆どの薬物の少量所持に対して刑罰を科していません。これにより薬物使用率は下がり、過剰摂取による死亡事故や注射器の使い回しによるHIV感染件数も減少。更に、中毒患者の治療や社会復帰も含め、包括的な施策が効果を上げていると言います。勿論、人口1000万少々のヨーロッパの民主国家と、7000万近い人口を抱える軍事独裁政権で、しかも隣国(ミャンマー)で大量の覚醒剤が製造されているタイとでは、事情があまりにも違う。同じやり方で上手くいくかどうかはわかりません。ただ、麻薬の非犯罪化という方向性は、今や『世界保健機関(WHO)』も推奨する世界的潮流なのです。

1990年代、国際社会は麻薬を取り締まり、厳罰を科すことで根絶やしにしようとしました。しかし、麻薬は地上から姿を消すどころか、寧ろ世界中に蔓延してしまった。言い換えれば、人類は麻薬との戦争に既に負けている訳です。できる筈のない“根絶”を目指すより、人間社会が麻薬というものの特徴や危険性を“咀嚼”できるよう、時間をかけて浸透させていくベきだ――。近年、世界各地で麻薬の非犯罪化や合法化が検討されているのには、そんな背景があります。非犯罪化のメリットの1つは、薬物が“普通に流通する”ことによる品質の向上です。日本では終戦直後、闇市に出回ったメチルアルコールを飲んで失明した人もいたそうですが、酒と同様に薬物も、品質管理の行き届いたものが出回れば、危険な“混ぜ物”を摂取して命を落とす人はかなり減るでしょう。また、非犯罪化して取引がオープンになれば価格は劇的に下がり、闇市場に巣食うカルテルやマフィアに大打撃を与えることができる。健全化されたマーケットで得られた税収を元に治療プログラムを組めば、薬物で身も心も減ぼしてしまうような人も減る…といった効果も当然、期待されています。




ところが、日本はこうした世界の潮流に乗るどころか、今も尚“ダメ。ゼッタイ。”の世界。大麻合法化の議論さえタブー視されています。代表的なのはこんな意見です。「抑々、日本には深刻な麻薬問題が存在しない。何故態々、問題を作る必要があるのか?」。今の時代、こういう現状認識を間違えたような態度は物凄く危険です。世界中に薬物は蔓延し、グローバル化で物理的なハードルは低い。いつ何時、日本に津波が襲ってくるかわからない状況です。その第一波が2020年に来るのか、もっと前かはわかりませんが、何れにせよ、完璧な防波堤など作れないことは過去の世界中の事例が証明しています。となれば、できることは波の衝撃を緩和する――つまり、“麻薬のある社会”への準備を進めること。先ずはタブー無き議論を!


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『ユアタイム~あなたの時間~』(フジテレビ系)等に出演中。


キャプチャ  2016年10月31日号掲載



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