【震災5年・復興】(09) 避難で離散、軋む家族

20161111 01
4世代11人で生活していた福島県大熊町の松永秀篤さん(63)一家は、2011年3月、東京電力福島第1原発事故によって散り散りになった。全町避難後、松永さん・妻・両親は同県会津若松市の借家へ。3人の息子とその家族は茨城・新潟・福井の各県へ、其々移り住んだ。認知症の母は、昨秋から夜に家族を起こす回数が増え、今年1月、止む無く福島県いわき市の特別養護老人ホームに入所させた。「大熊でなら皆で助け合えたのに」。松永さんは嘆く。4~13歳の娘3人がいる三男の秀俊さん(35)は、2014年9月に福井から茨城に移り、家族5人で住む家を建てた。子育ての為に仕事を辞めて専業主婦になった妻の寿子さん(34)は言う。「心細さはある。でも、一旦離れて生活の場を築いてしまうと、元に戻すのは難しい」。震災の避難者は、直後は全国で約47万5000人に達し、今年2月現在でも尚17万4471人に上る。長引く避難で進行する“核家族化”を窺わせるデータがある。昨年の国勢調査(速報値)に基づき、1世帯当たりの人数の減少率を都道府県毎に計算すると、福島は7.7%(全国最大)、岩手は5.3%(同3番目)、宮城は5.1%(同5番目)だった。

福島の場合、除染等で単身の作業員が流入した影響もあるが、内閣府の2014年の調査では、原発事故の避難世帯の約4割が家族の離散を経験していた。懸念されるのが、家族の軋みと孤立だ。DV(配偶者からの暴力)被害者を支援するNPO法人『ハーティ仙台』では今年度、DVの相談件数が震災前の1.4倍を超えた。福島県から相談業務を委託された『ふくしま心のケアセンター』でも、アルコール依存等の相談が年々増加。内山清一副所長は、「自殺に繋がりかねない深刻な事例が減らない」と話す。福島県では震災関連自殺が毎年2桁に上り、昨年は前年より4人多い19人が命を絶った。昨年8月、いわき市の公園で自殺した70歳代女性は、震災前は息子らと同居していたが、仮設住宅で独り暮らしだった。離散家族が同居に戻るのは難しい。津波の被災自治体は高台造成等を急ぐが、戸建て住宅の再建は被災者にとって負担が重い。福島県で避難指示区域外から避難した自主避難者約1万8000人(昨年10月現在)にとっては、住宅の無償提供が打ち切られる来年3月が大きな区切りだ。会社員の渡辺加代さん(40)は、仕事で福島市を離れられない夫を残し、山形県米沢市で娘3人と暮らす。避難先で授かった三女(1歳11ヵ月)らが病気になる度に、「助けが欲しい」と感じた。住宅提供の打ち切りと娘の進学を機に、「福島に戻るしかないかな」と思い始めている。福島大学災害復興研究所長の丹波史紀准教授(社会福祉論)は、「行政は、離散した家族が再び同居したり、近くに住んだりする場合は税金等で優遇する等、家族の関係性を取り戻す為の支援を行うべきだ」と指摘している。


≡読売新聞 2016年3月9日付掲載≡



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テーマ : 東日本大震災
ジャンル : 政治・経済

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