【私のルールブック】(80) “間の悪さ”から見える若者の身勝手

今時の若者にイラつくのである。今時の若人たちに歯痒さを覚えるのである。こんな男の子がいた。年の頃は20代前半で、とある番組のAD君である。ロケの移動中に、女性タレントさんが恥ずかし気にトイレ休憩をお願いした。「では、近くのコンビニに寄りましょう」ということになり、5分ほど走った先で見つかったのだが、ドライバーさんが駐車をしようとハンドルを切ったその時である。問題のAD君が、か細い声で言ったのだった。「あと10分ほど先のコンビニのほうが大きくて、トイレも綺麗ですよ」と…。ロケバスの車内が一瞬、静寂に包まれた。すると、ディレクターさんが戸惑いながら女性タレントさんに「我慢できますか?」と訊くと、「は、はい」と彼女は頷いた。いや、頷かざるを得なかったのだと思う。

っていうかね、私が問題視したいのは、「何故、そのタイミングで中途半端に気の利いた情報を流さなければいけなかったか?」って事なんですよ。女性タレントさんが「トイレに行きたい」と言った時点で、堂々と言えばいいだけの話でしょ。確かに、言いそびれたのかもしれません。道中も悶々としていたんでしょう。「言うべきか? 言わざるべきか?」。でもね、ロケバスは既にコンビニに着いていた訳です。なのに、「何故、そのタイミングで?」ってね。正直、ディレクターさんにも多少イラつきましたよ。「この期に及んで『我慢できますか?』なんて訊き直してどうすんだよ」って。やっぱり、優先順位ってあると思うんです。何より大事なのは、ロケをスケジュール通りに進めること。でも、生理現象は仕方ない。となると、次に優先しなければならないのは排尿でしょ。綺麗だろうが汚かろうが、溜まったモンを出せばいいんですよ。抑々、日本のコンビニなんてどこも綺麗なんだから。まぁ、百歩譲って「より綺麗なトイレを」とAD君なりに気を利かせたのかもしれませんが、「いやいや、だとしてもこのタイミングでの発言は無しだ」と私は言い切りたい。




例えるならば、「僕、実は浮気をしてしまいました。彼女にずっと申し訳ない気持ちでいました。悩んで悩んで、悩んだ末に『やっぱり打ち明けるべきだ』と思い、勇気を奮って告白しました。すると彼女も、『実は私も伝えたいことがあったの』と、眉間に皺を寄せながら言いました。『何?』と訊くと、『私、妊娠しているの』と。『貴男の子供をお腹に宿しているの』と。だから余計に、『何故、このタイミングで貴男が浮気を告白し出したのかわからないの』と憤りました。『貴男が欲望に負けて勝手にしてしまった浮気を、貴男自身が隠していることに耐えられないからといって勝手に打ち明けられても、確かに貴男は多少楽になるかもしれないけど、私には苦しみしか残らないって事がどうしてわからないの!』と、彼女は激高しました」。果たして例えになっているのかどうか疑わしいところですが、私はそれぐらいの間の悪さと身勝手さをAD君に感じてしまったのです。序でなんで、AD君の言い訳の続きを、私の勝手な想像で綴らせて頂きます。「でも、僕には今一わからないんです。何故、あそこまで彼女は激高しなければならなかったのか。だって、僕は妊娠の事なんて聞いてもいませんでしたから」。どうかひとつ、この想像がハズレていますように…。


坂上忍(さかがみ・しのぶ) 俳優・タレント。1967年、東京都生まれ。テレビ出演多数。子役養成に舞台の脚本・演出等、多方面で活躍中。


キャプチャ  2016年12月15日号掲載



スポンサーサイト

テーマ : 俳優・男優
ジャンル : 映画

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR