【私のルールブック】(86) 面倒だけど可愛らしい“酔っ払い”を楽しむ

恐ろしいほどの二日酔いである。というのも昨夜、私が演出する舞台に出演して下さった常連組の方々を集めての飲み会がありまして…。30名ほどお集まり頂いたと思うのですが、その中に1人、酒癖の悪い方がおりまして。とはいえ、酒癖が悪いと言ってもレベルは様々です。しかし、その御仁は、100人中97人は「悪い」と思えるほどの、正真正銘の酒癖の悪さでございます。簡単に、どのような酒癖の悪さかと言いますと、面倒臭いことを言い始める→協調性が無くなる→意固地になる→帰ってしまう…といった感じでしょうか。で、そのおじさん、1軒目の居酒屋まではマシだったのですが、2軒目に行ったカラオケ屋さんの暖簾を潜ると、様子がおかしくなり始めます。俗に言う、目が据わる状態でございます。私はすかさず、そのおじさんと馬が合う芸人君を呼び寄せ、「そろそろ酔ってきたみたいだから、カラオケでも唄わせて発散させてくれ」と頼みました。ところが、です。ここからなんですよ、このおじさんの面倒臭いところは。

私から命を受けた芸人君は、何とかおじさんに唄わせようと試みますが、おじさんは一向に首を縦に振ろうとはしません。どうやら、「俺が唄っても白けるだけだから」とのこと。因みに、私もカラオケは好きではありません。ですが、このような宴席の場合は嫌でも唄いますよ。好きとか嫌いとかじゃないんです。飲みの席での礼儀と言ってもいい。よって、そんな時用の曲も決めてあります。ちまちま時間をかけて選ぶことすら失礼に値すると思っていますから。盛り上げるなら『ガッチャマンの歌』、少々場の雰囲気を落ち着かせたい時は『雪国』です。っていうか、曲なんて何だっていいんですよ。だって、1回唄えば済むんですから、それだけのこと。なのに、おっさんは頑として唄うことを拒否するのです。そんなやり取りを見ていたら無性に腹が立ってしまい、気が付けば芸人君とおっさんの間に割り込んでしまったのです。店内に緊張感が走ります。私が参戦したということは、“これから説教が始まる”ということですから。




ただ、説教だけなら問題はありません。緊張が生まれた最大の要因は、“おっさんが素直に耳を傾けるのか否か”という1点に尽きるのです。で、結果はといいますと…話を聴いて頂くことは叶いませんでした。おっさんは帰ってしまいました。私としては、「何だかな~」ですよ。「いい歳こいて融通の利かない野郎だな」って話です。でも、どこかで「それでいい」とも思っているんですよね。冷静に振り返れば、態々説教する私も私ですから。放っとけばいいだけな訳で、見方によっては“私が事を大きくしてしまっている”と言えなくもない。それに、最早おっさんと私のやり取りは恒例行事化しておりまして、端から見れば「またやっているよ」ってね。そして何より、酔っ払いって嫌いじゃない。面倒臭いけど、どこか可愛らしく思えてしまう。色んな酔い方があって、癖があって、強いところと弱いところが見えて…。実際、私だって飲んでいる訳で、私も酔っ払いですから。さ、次はいつ、あのおっさんと飲もうかな。


坂上忍(さかがみ・しのぶ) 俳優・タレント。1967年、東京都生まれ。テレビ出演多数。子役養成に舞台の脚本・演出等、多方面で活躍中。


キャプチャ  2017年2月2日号掲載



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