【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(96) 「トランプ政権の誕生は日本にとってチャンス」って正気ですか?

ドナルド・トランプ政権は、日本にどんな影響を及ぼすのか? 色々な見立てがありますが、日本の一部論客(※主に右派)から漏れ聞こえる希望的観測――「トランプ大統領の誕生は日本にとってチャンスだ」といった軽々しい言説には危うさを感じます。特に首を傾げざるを得ないのが、“中露分断による中国包囲網”というストーリー。「トランプ政権とプーチン政権の急接近で、中国とロシアの仲が分断され、アメリカ・ロシア・日本等で中国を包囲するのである」と。…これ、本気で言っているんでしょうか? あらゆる国益が反する中、「ロシアとアメリカが結託できる」という前提もおかしいし、“米露接近”が何故“中露分断”となるのかもわからない。加えて、「トランプのおかげで日本とロシアの仲が改善する」だとか、「これを機に日米同盟を再解釈して自主防衛だ」等と妄想を膨らませている人もいる。

こういった言説のベースにあるのは、“敵の敵は友”という論理展開なのですが、国際社会はそんなに単純ではありません。どう考えても辻褄が合わない。抑々、「ロシアと中国がこれまで一枚岩だった」というのが事実誤認。また、仮にアメリカとロシアが“結託”と言えるほど近付くなら、アメリカの他の同盟国が黙っていません。例えば、既に報道されているレベルの話ですが、米露でインテリジェンスの機微に関わる情報(インテル)が共有されれば、イスラエルのインテルがイランに筒抜けになってしまう危険性がありますし、イギリスの情報機関が独自で行っている対ロシアの諜報活動が無意味になってしまう可能性もある。また、トランプ陣営が選挙戦でロシアの“協力”を得ていた可能性や、トランプ個人がロシア当局にスキャンダル情報を握られている可能性も指摘されている。更に、日本もアメリカも、経済面では中国の巨大市場に依存している。こういった多様な視点が、“米露接近→中国包囲網論”では完全に無視されています。今の国際情勢は、「欧米各国の右派ポピュリストたちが、ロシアを蝶番にして連携を夢見ている」という奇妙な状況です。




本来、ナショナリスト同士は自国の利益を主張してぶつかり合う筈ですが、“インターナショナルナショナリズム”とでも言うべき矛盾を孕んだ“同床異夢の同盟”を模索しながら、イギリスのEU離脱やトランプ政権誕生といった“お祭り”の神興を担いで大騒ぎしている訳です(それを様々な方法で焚き付けているのがプーチンです)。結局、日本の一部の右派論客も、こういったお祭り騒ぎに勇んで参加したいんだと思います。「国家あっての国民なんだ」「皆、伝統を大事にしろ」「中国は兎に角けしからん」といった乱暴な自説を、この機に乗じて言えるだけ言ってしまおうということかもしれません。しかし大前提として、今の欧米の右派ポピュリストたちの根底には“白人至上主義思想”があります。日本はそこから明らかに漏れていますが、大丈夫ですか? こんなお花畑全開の話に冷や水を浴びせるのが、本来の保守なのではないですか? 「トランプ大統領就任は日本のチャンスだ」という言説には、くれぐれも気を付けましょう。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『ユアタイム~あなたの時間~』(フジテレビ系)等に出演中。


キャプチャ  2017年2月13日号掲載



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テーマ : 国際政治
ジャンル : 政治・経済

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