【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(98) トランプの黒幕が『ホロコースト記念日』に現した極右の本性

先月27日は、国連の定める『国際ホロコースト記念日』でした。1945年1月27日、旧ソビエト連邦軍によりポーランド南部(※当時はナチスドイツ占領下)の『アウシュビッツ強制収容所』が解放されたことに因み、2005年に制定された国際デーで、憎悪・偏見・差別感情の危険性を人類に警告することを目的としています。ところがこの日、僅か1週間前に就任したばかりの新大統領、ドナルド・トランプの言動は、控えめに言っても“相当ヤバい”ものでした。先ず、トランプは次のような大統領令に署名しました。「シリア難民の入国を禁じ、難民受け入れプログラムを4ヵ月間停止し、更に中東やアフリカの7ヵ国からの入国を一時的に完全に禁じる」。ホロコーストの時代、多くのユダヤ人が命辛々外国へ逃れたことは言うまでもありません。その記念日に、よりによって中東等からの難民を拒否する大統領令に署名した訳です。この記念日に際し、トランプが発表した声明の内容も非常に際どいものでした。問題は、“何が書いてあったか”ではなく、“何が書かれていなかったか”です。声明を隈なく読んでも、そこには“ユダヤ人”、或いは“反ユダヤ主義”という言葉が1つも見当たらなかったのです。日本人には理解し難いところかもしれませんが、国際ホロコースト記念日の大統領声明が、600万人以上が命を奪われた“ユダヤ人”や、その虐殺の元凶である“反ユダヤ主義”に言及しないのは極めて異例。“事件”と言っていいほどです(※昨年まではブッシュもオバマも当然のように言及してきました)。ナチスによるユダヤ人の大量虐殺(=ホロコースト)という歴史的事実の一部、若しくは全体を否定する――。こうした主張は“ホロコースト否認論”と呼ばれます。

多くは反ユダヤ主義に紐付いた“歴史修正主義”の発露で、「600万人も殺されていない」「ガス室で大量殺戮した事実は無い」「アドルフ・ヒトラーの指示は無かった」等、様々な流派があります。その1つに、「殺されたのはユダヤ人だけじゃない」というタイプがあります。戦争とは多くの人の命を奪うものである→ユダヤ人が多く亡くなったのは事実だが偶然だ→ナチスはユダヤ人を殲滅しようとした訳ではない→ユダヤ人の被害だけを特別視するのは如何なものか…といった具合に、このタイプの主張はどんどん転がっていきます。そして、こんな疑念が出始めています。「国際ホロコースト記念日の声明で、“ユダヤ人”や“反ユダヤ主義”に一切触れなかったトランプ政権は、こうした“歴史修正”を試みているのではないか?」。これは決して、根拠の無い邪推ではありません。トランプ政権のホープ・ヒックス報道担当は、声明の真意を問われ、こう回答しています。「ホロコーストでは非ユダヤ人も500万人殺されている」「ユダヤ人だけでなく、全ての犠牲者に配慮した」。一見、正論のようにも思えますが、これは反ユダヤ主義者がよく使う詭弁です。“多くの非ユダヤ人も殺された”のは事実でも、その根底にはナチスの優生思想・反ユダヤ的思想があった訳ですから。では、この声明の裏に潜む黒幕は誰か? それは恐らく、遂に『国家安全保障会議(NSC)』の正式メンバーにまで出世した“トランプ旋風の仕掛け人”ことスティーブ・バノン首席戦略官でしょう。何度も紹介してきましたが、バノンは極右系ニュースサイト『ブライトバートニュース』の元会長で、昨夏にトランプ陣営の選対本部長に就任し、そのまま政権中枢に入り込んだ人物。彼に対するトランプの信頼は特別なものがあると言われます。しかし、過去の言動を見ても、バノンの思想が極めて危険であることは疑いようがありません。白人至上主義・反ユダヤ主義・反LGBT…。あらゆる差別のオンパレード。彼がホワイトハウスの中枢にまで入り込んだことで、今後はその極右思想が政策の端々に顔を出し、徐々に“ノーマライズ”されていく(人々がそれに慣れていってしまう)ことでしょう。「その第一歩が、あの国際ホロコースト記念日の声明内容だったと考えていい」と僕は考えます。




「トランプの娘婿であるジャレッド・クシュナーはユダヤ人で、彼と結婚したイヴァンカも改宗ユダヤ教徒になっている。トランプが反ユダヤ主義者である筈がない」。こういった反論も予想されますが、問題はトランプ個人の思想ではありません。トランプを支持したアメリカの“不寛容な白人層”に反ユダヤ主義的な思想が浸透しており、そこに訴えかけるポピュリズムの道具として、バノンが選挙期間中からこうした“スパイス”を加えてきたことが極めて危険なのです。例えば、バノンが会長を務めたブライトバートニュースには、「祖父がユダヤ人で自らはゲイだ」と公言しつつ、ユダヤ人やLGBTを攻撃するという“芸風”のマイロ・ヤノポロスというスターコラムニストがいます。自分の属性が“攻撃される側”であることを敢えて公表し、それを免罪符とすることで、差別発言がより人々に浸透していく…という構図です。「ユダヤ人だけが特別視されるのはおかしい」。この“ユダヤ人”を、例えば“黒人”や“女性”や“LGBT”といった言葉に置き替えてみれば、今後のトランプ政権の動きが予想できるかもしれません。バノンのブライトバートニュースは、人種にしろ男女問題にしろ宗教にしろ、“差別用語を使わず巧妙に差別心を煽る”という手法を確立し、人々の怒りをエンジンにして巨大化してきたメディアなのです。「アメリカ国民が民主的に選んだのだから、先ずはトランプのやることを見守ろう」。このような“一見真面な論調”は、嘗てイタリアのベニート・ムッソリーニやドイツのアドルフ・ヒトラーに対してアメリカのメディアが向けた視線と同じ。中立を意識するあまり、過激な主張をノーマライズさせてしまったことが、ファシズムへの国際的な警戒心を薄れさせたのです。傍観者のふりをし続けるのは止めて、きちんと批判したほうがいい――。心からそう思います。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『ユアタイム~あなたの時間~』(フジテレビ系)等に出演中。


キャプチャ  2017年2月27日号掲載




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テーマ : 国際政治
ジャンル : 政治・経済

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