【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(100) フリン辞任は第2の“ウォーターゲート事件”に発展するか?

ドナルド・トランプ大統領の“側近中の側近”の1人、マイケル・フリン国家安全保障問題担当大統領補佐官の辞任劇が、政権の行く末に暗い影を落としています。事の発端は昨年12月29日。ロシア政府がアメリカ大統領選にサイバー攻撃で介入していたとして、当時のバラク・オバマ政権が報復制裁措置を発動したのですが、何とその同じ日にフリンは駐米ロシア大使と接触し、“トランプ政権後の制裁解除”に関する“交渉”をしていたのです。当時は未だ“民間人”だったフリンが外交政策に関与することは、明らかに連邦法違反です。更に、その事実を直ぐ認めず、マイク・ペンス副大統領ら政権内の人間にさえ嘘を吐いたことで、問題は拗れに拗れ、辞任に至ってしまいました。

抑々、フリンは“曰く付き”の人物でした。イラク戦争やアフガニスタン戦争に従軍した元陸軍中将として、『国防情報局(DIA)』長官にまで上り詰めたものの、イスラム教を“悪性の癌”とまで言い切る過激な差別論者で、オバマ政権の途中でその職を追われます。その後はコンサルティング会社を設立してロシア政府と接近し、ロシア政府系放送局『ロシアトゥデイ(RT)』でオバマ政権の外交政策を批判したり、RT主催のパーティーに出席してプーチン大統領と同じテーブルについたり…。そんな人物が、“どういう訳か”アメリカ大統領選でトランプ陣営に潜り込み、同陣営の対ロシア政策に影響力を及ぼしていた――つまり、彼の背後にはずっとクレムリンの影がちらついているのです。辞任劇の争点は、「フリンが独断でロシアと交渉したのか、或いは誰かの指令があったのか?」です。大統領本人の関与が明らかになれば、嘗てリチャード・ニクソン大統領を辞任に追い込んだ『ウォーターゲート事件』の再来。逆に、「独断だ」と本人及びトランプ政権が主張し続け、それを覆すだけの証明ができなければ、『イランコントラ事件』のように真実は闇の中です。1986年に発覚した同事件は、当時のロナルド・レーガン政権が、武器輸出を禁じていたイランに対し、極秘裏に武器を売却し、その資金の一部をニカラグアの反政府ゲリラの支援に流用しようとした秘密工作。




かなり複雑な話なので詳細は割愛しますが、事件の中心にいた人物は、トランプ政権におけるフリンと同じく、国家安全保障問題担当補佐官を務めていたジョン・ポインデクスターと、『国家安全保障会議(NSC)』のメンバーだったオリバー・ノース中佐の2人です。彼らは「独断でコントラ援助を実行した」と主張し続けましたが、レーガン大統領、及び後に大統領となるジョージ・H・W・ブッシュ副大統領の関与が今でも疑われています。ウォーターゲート、イランコントラ、そして“クレムリンゲート”とも揶揄されるフリンの辞任劇。この3つに共通するのは、汚れ仕事を実行する人問と大統領の問に“バッファ”があること。つまり、後になって事件が発覚しても、大統領本人は“知らぬ存ぜぬ”を突き通せるだけの絶妙な距離があるんです。このままフリンが“フォールガイ(生贄)”となって終わるか、それとも本丸まで追及が及ぶか。何れにせよ尾を引きそうな事件です。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『ユアタイム~あなたの時間~』(フジテレビ系)等に出演中。


キャプチャ  2017年3月13日号掲載
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