【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(102) “ミニトランプ”が掲げる「リー将軍像を取り戻す」という公約の意味

19世紀のアメリカ南北戦争は、現在に続く北部(=合衆国)と、奴隷制存続を訴える南部(=連合国)が激突した内戦です。あれから約150年経った昨年のアメリカ大統領選で、ドナルド・トランプはアメリカ社会の“分断”を煽って勝利を収めましたが、その深刻な余波が訪れ始めています。当時、南部連合の軍司令官を務めたロバート・エドワード・リーという人物がいます。彼は南北戦争以前には合衆国軍の大佐でしたが、郷里のバージニアが合衆国脱退を決めると、(※奴隷制には反対しながらも)強い郷土愛から南車の指揮官となり、北軍を最後まで苦しめました。“リー将軍”の愛称で、今も多くのアメリカ人――特に南部の白人から尊敬されています。地元バージニア等南部諸州には、彼の名を冠した公園や銅像・記念碑等が無数にありますが、近年はそれを撤去する動きが広がっています。「リー将軍を“顕彰”することは、人種差別を助長しているのではないか?」というのがその理由です。

大きな契機となったのは、2015年にサウスカロライナ州チャールストンの黒人教会で発生した銃乱射事件でした。襲撃犯の男が白人至上主義者で、南軍の象徴である南部連合旗を“信奉”していたことが判明し、各地の南部連合旗撤去と並行して、“リー将軍を称えること”に対する反対運動も拡大したのです。しかし、白人至上主義者や一部の保守層はこの動きに危機感を抱き、「黒人による歴史修正だ」と反発しました。「“被害者たる黒人の目を通した歴史”しか語ることが許されないのはおかしい」と。勿論、歴史に対する姿勢として、“現在の価値観に合うものしか残さない”というのは過剰です。白人であれ黒人であれ、大人が子供に「過去にはこういうことがあった」と語り継ぐことも必要でしょう。ただ、リー将軍や南部連合旗の存在が白人至上主義者の“よりどころ”となっているのも事実で、リー将軍を称える年に一度のパレードには、ネオナチや南軍兵士のコスプレをした連中も集まってくる。こうした“差別の源泉”を断つ為の対処療法として、仕方なくリー将軍の痕跡を撤去しているという事情もあるのです。




最近も、バージニア州シャーロッツビルの市議会でリー将軍の銅像撤去が決定されたのですが、その過程で象徴的な動きがありました。トランプ大統領を後押しする極右メディア『ブライトバートニュース』が、撤去賛成派の黒人議員を酷い人格攻撃で執拗に非難。今年行われる同州知事選に出馬予定の“ミニトランプ”とも呼ばれる泡沫候補もこれに便乗し、「リー将軍像を取り戻す」との公約を掲げているのです。彼はつい先日も、「俺はリー将軍を称える為に“リー公園”に行く」と態々宣言し、撤去賛成派のデモ隊との衝突をスマホ動画で生中継。「こんな罵声を浴びせるヤツらから、民主主義を守らなければいけない」と尤もらしく語りかけるフェイスブックの投稿には、保守層から“いいね!”の嵐…。トランプ大統領やブライトバートニュースが罪深いのは、“アメリカ人の本音”を盾に人間の差別意識を炙り出し、社会の分断を深めたこと。これはそう簡単に元に戻せるものではありませんが、どう落とし前をつけるつもりでしょうか?


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『ユアタイム~あなたの時間~』(フジテレビ系)等に出演中。


キャプチャ  2017年3月27日号掲載

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