【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(108) 北朝鮮やシリアの肩を持つ“どっちもどっち論”に惑わされるな!

“False Equivalence”という英語の言い回しがあります。日本語に訳せば、“誤った等価関係”という感じでしょうか。要するに、全く釣り合わないものを並列に論じることで“中立な両論併記”を装うような一種の詭弁のことですが、日本では特に戦争や軍事の分野で、この“False Equivalence”を平気で口にする政治家や専門家が少なくありません。例えば、バッシャール・アル=アサド政権が化学兵器を使用したという理由で、アメリカのドナルド・トランプ大統領がシリア空軍基地をミサイル攻撃した件。アサド政権側は“不当な侵略”とアメリカを非難し、同政権を擁護するロシア政府も「国際法違反だ」と反発していますが、まぁ、彼らの立場ならそう言うわな…という話です。ところが、驚くのは、日本の“中東専門家”を名乗る人物や著名な論客までもが、アサドやロシアの言い分と同じように“アメリカの暴走”ばかりを指摘したり、大量破壊兵器の有無が問題となった2003年のイラク戦争開戦と重ねて論じていることです。

アサド政権による民間人の大量虐殺をスルーしておきながら、アメリカの攻撃は“侵略”ですか? 欧米メディアでは「シリアやロシアの当局や政府系メディアの発表が如何に“政治的”か」という警告がなされているというのに、そのプロパガンダを丸呑みするんですか? 「アメリカにだってクラスター爆弾等の使用疑惑がある。アサド政権を一方的に責めるのは欺瞞だ」「抑々、今日の中東の混乱は欧米による植民地支配から始まった」等の“どっちもどっち論”も散見されますが、これは一見フェアなようでいて、実際は最も悪辣な人間を擁護しているのと同じです。いくらなんでも、アメリカとアサド政権を同レベルで語ってはいけない。メディアがその意見を無検証で垂れ流してどうするんですか? アメリカの軍事力行使を巡って緊張感が高まっている北朝鮮情勢に関しても、状況は同じです。「戦争はやってはいけない」「外交努力で解決を模索すべきだ」。まさに、ジョン・レノンとオノ・ヨーコがベッドで抱き合うラブ&ピースな世界観。美しい。でも、それができるなら誰だってそうします。現実に存在する深刻な問題を無視した論説は最早、報道やジャーナリズムの範疇にはありません。




耐え難い緊張とリアリズムに直面した時、空想や理想に浸りたくなるという心理は誰にでもあります。ただ、専門家やメディアで働くプロは、努めて客観的に事実と対峙する必要がある。この状況下でも、大手メディアの報道が“有事モード”に変換されず、シリアスな議論を深掘りできないのは嘆かわしいことです。恐らく今後、北朝鮮情勢に関して、「日本にアメリカ軍基地があるからミサイルの攻撃目標になる(=悪いのはアメリカ軍基地だ)」「抑々、朝鮮半島が分断されたのは嘗て大日本帝国が…」等と言い出す人も出るでしょう。既に、「金正恩よりトランプのほうが何をしでかすかわからない」等という論説も聞こえてきます。しかし、これ以上の現実逃避は自分たちの首を絞めるだけ。“本当に起きるかもしれない危機”と正面から向き合っておかなければ、いきなり来る“核”や“テロ”や“大量難民”にパニックになってしまいますよ。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『ユアタイム~あなたの時間~』(フジテレビ系)等に出演中。


キャプチャ  2017年5月15日号掲載
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