【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(113) ウォーターゲートとトランプの疑惑を繋ぐ“アメリカ政界の黒幕”

ドナルド・トランプ政権とロシアとの関係を巡る疑惑は、1970年代にリチャード・ニクソン大統領が任期途中で辞任した政治スキャンダルの経緯との類似性から、“第2のウォーターゲート事件”と言われつつあります。その結末は事態の推移を見守るしかありませんが、40年以上の時を超えて、第1・第2の双方の“事件”に関わっているロジャー・ストーンという人物をご存知でしょうか? 自信満々なフィクサー然とした態度。ボディービルで鍛えた筋肉が隆起する背中には、ニクソンの似顔絵のタトゥー…。最近では保守系メディアに登場する“陰謀論オヤジ”という扱いをされていますが、1952年生まれのストーンは10代の頃からアメリカ政界で暗躍し続ける“選挙屋”です。ウォーターゲート事件では口止め料の“配布役”を務め、起訴された当時は未だ20歳の若者でした。その後は政治家向けのコンサルティング組織を設立し、1980年の大統領選でロナルド・レーガンの勝利に大きく貢献。政権発足後は「カネを払えばレーガンに話を通す」と吹聴する等、ロビイストとして君臨します(※ストーンが若き日のトランプと出会ったのもこの頃で、両者を引き合わせたのは保守政界の大物フィクサーで“赤狩り弁護士”のロイ・コーンでした)。

ストーンの特徴は、“どれだけ汚いことをしても選挙は当選した側の勝ち”という徹底した方針です。テレビCM等で対立候補に対する虚実綯い交ぜのネガティブキャンペーンを大々的に展開したのも、彼が初めてのようです。その意味では、ストーンは昨今流行のフェイクニュースの生みの親とも言えるでしよう。1990年代に下半身スキャンダルで表舞台から姿を消したストーンですが、2000年の大統領選では共和党のジョージ・W・ブッシュの当選を“ウルトラC”で後押しします。民主党の人気者であるアル・ゴアと戦う共和党にとって最大の懸念は、右派少数政党である改革党の支持票を最終的にブッシュが得られるかどうかでした。そこで、ストーンは先ず、共和党員だったパット・ブキャナンを焚きつけて、改革党から立候補させます。そして、ブキャナンが支持を広げたタイミングで、今度は同じ改革党から“ライバル候補”としてトランプを出馬させたのです(※これがトランプの初の立候補でした)。トランプはマスコミの前で徹底的にブキャナンをこき下ろし、散々場を荒らすと、あっさりと出馬を撤回します。つまり、最初から当選する気など無く、ただ改革党そのものを“茶番化”する為の当て馬だったのです。




結果、改革党に幻滅した人々の票はブッシュへと流れ、共和党は政権奪還に成功しました。昨年の大統領選でも、ストーンは一時、トランプ陣営入りしていました。途中でクビを言い渡され、表向きは“下野”しましたが、その後も実際にはトランプの政治活動をバックアップしているとみられ、ロシアとの関係についても彼が“一枚かんでいる”と強く疑われています。ウォーターゲート事件の時代から今に至るまで、民主主義は時にストーンのような“陰の存在”を生み出す。そして、民主主義であるからこそ、人々はストーンのような“汚い政治”に対する免疫を持てない。これは、いくら社会が進歩しても残る、人類の永遠の課題なのかもしれません。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『ユアタイム~あなたの時間~』(フジテレビ系)等に出演中。


キャプチャ  2017年6月19日号掲載
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