【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(120) アメリカの対北朝鮮最終オプションはまさかの“日本核武装”!?

「若し、ここで戦略的なバランスを劇的に変更したければ、韓国から1991年に撤退した(アメリカ軍の)戦略核兵器を再び持ち込むこともできる。また、もう1つのオプションとして、日本に独自の核抑止を作らせることも可能だ」――。これは、7月6日にアメリカの著名なコラムニストであるチャールズ・クラウトハマーが『ワシントンポスト』に寄稿した、『北朝鮮、ルビコン川を渡る』という題名のコラムからの抜粋です。恐らく、これを読んだら、「核兵器は絶対悪だ」と子供の頃から習ってきた多くの日本人は、拒絶反応を起こすでしょう。しかも、ここで論じられているのは、所謂“核共有”ではない。日本の独力による核武装という“禁断のシナリオ”が、既にアメリカでは現実的なオプションの1つとして論じられ始めているのですから――。何故、こんな話題が俎上に載るようになったのかといえば、アメリカが北朝鮮に対して打てる手がほぼ無くなってきたからです。北朝鮮が7月4日に発射実験に成功した大陸間弾道ミサイル(ICBM)の推定射程は6700㎞程度。アラスカやハワイ島、アメリカ領土の一部に届く数字です。そして今後については、「核ミサイルがアメリカ西海岸を攻撃できる能力を2年以内に獲得する」との予測もある。つまり、アメリカは間もなく、自国民が北朝鮮の“人質”となってしまう状況に追い込まれるのです。これで、アメリカ軍を頂点にした日米韓の軍事同盟は、大きな岐路に立たされます。そのキーワードは、欧米メディアに最近度々登場する“Decoupling(離間)”という概念です。アメリカは当然、同盟国を守るよりも、自国民の被害回避を最優先に考える方向へシフトする筈です。例えば、北朝鮮が韓国や日本に軍事攻撃を行った場合、これまでならばアメリカ軍が瞬時に迎撃、或いは反撃したでしょう。しかし、今後はアメリカ本土への核攻撃を恐れる大統領が、一瞬の判断に逡巡するかもしれない。たとえ、その一瞬の遅れにより、同盟国が火の海となるリスクが生まれたとしても。

こうなると、同盟国の間には疑心暗鬼が生まれます。日本や韓国からすれば、本当にアメリカは守ってくれるのか? 逆にアメリカからすれば、日本や韓国を守ることで自国が攻撃されるのではないか? これが、軍事同盟に亀裂が生まれるデカップリングという現象です。これは机上の空論ではありません。敵側の新たな核兵器の登場が、」同盟のデカップリングを誘発し、各国が独自の核保有を模索するという動きは、過去にも例があります。東西冷戦初期、ヨーロッパの『北大西洋条約機構(NATO)』加盟各国は、アメリカの“核の傘”の下にいました。ところが、旧ソビエト連邦(※現在のロシア)の核ミサイル技術が発達し、核弾頭を搭載したICBMがアメリカ本土を射程に捉えるようになると、ある疑念が生じます。「若し、ソ連から軍事侵攻を受けた場合、アメリカは集団的自衛権を直ぐに行使してくれるだろうか?」。こうして、1950年代から1960年代にかけ、イギリスとフランスはソ連への抑止力を高めるべく、相次いで核保有国となったのです。「集団的自衛権の行使は合憲か違憲か?」といった内向きの議論ばかりの日本には刺激的過ぎる話でしょうが、客観的に見れば、今の日本も当時の英仏と似た状況に置かれている。だからこそ、こんな話がアメリカメディアのど真ん中で提示された訳です。冒頭で紹介したコラムは、更にこう続きます。「日本の核武装(に関する議論や政治動向)こそ、何よりも中国政府の注意を惹くだろう。中国は嘗てないジレンマに直面する。『中国にとって、北朝鮮(の金正恩政権)を存続させることは、核武装した日本(を誕生させてしまうこと)ほどに大事なのか?』というジレンマに」。北朝鮮問題に関し、ドナルド・トランプ政権は「中国の圧力が必要だ」と主張していますが、当の中国は北朝鮮に圧力をかけるどころか、軍事転用可能な物資を輸出する等、寧ろ核開発を裏からバックアップし続けています。このように、北朝鮮・中国主導で進む“ゲーム”を一変させるには、もう日本の核武装くらいしか手が残されていない――。それが、このコラムの主張です。




北朝鮮や中国は、アメリカの動向に関しては、あらゆるシナリオを考えていますが、恐らく、日本の核武装については「あり得ない」という認識です(※皮肉にも、殆どの日本国民と同じように)。日本近海にミサイルを何発撃ち込んでも、尖閣諸島にちょっかいを出しても、或いは領海や領空をすれすれで侵犯しても、“遺憾の意”を表明するだけ――。そう高を括っている。それだけに、核武装に関する現実的な議論が日本国内で持ち上がれば、それだけで大きな脅威となり、戦略の再考を迫られるでしょう。僕は何も、「日本は今直ぐ核武装すべきだ」と言いたい訳ではありません。しかし、アメリカでこんな議論が提起されているというのに、当の日本では幼稚園だとか獣医学部だとか、そういった話ばかり報じられているのは流石に奇妙だと感じます。忘れてはならないのは、トランプ政権の外交姿勢です。これまでのアメリカ政府は、少なくとも表向きは理念や大義を掲げてきた。ところが、トランプ大統領にとっては、全ては“Transaction(取引)”です。これはある意味、ロシアや中国の外交に通じる考え方ですが、アメリカまでもが“取引外交”に突入し、多極化した現代の国際社会に、日本国憲法が謳う“恒久平和”は存在し得ません。平和とはその都度、取引や駆け引きの結果として掴み取るものになってしまったのです。戦争が起きないことを平和と呼ぶのは昔も今も同じですが、それを望むなら、アメリカの核の傘の下で折り鶴を折り、「憲法9条を守れ」と唱えればいい時代ではない。戦争は向こうからやって来る――。だからこそ、その可能性を減らすことで平和を勝ち取るという思考回路が必要です。こうした現実を見据え、日本人があらゆるシナリオを本気で議論し始めた時、膠着した東アジアのゲームは動き出すのかもしれません。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『ユアタイム~あなたの時間~』(フジテレビ系)等に出演中。


キャプチャ  2017年8月7日号掲載



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