【私のルールブック】(112) 捨てたモノがあるとすれば…それはプライドです

若かりし頃、とある監督さんに「君がこれまでのキャリアの積み重ねで得たモノを捨てろ」と言われたのに、捨てることができなかった私。しかし監督は、「捨てたとしても拾いに戻ればいいんだよ。捨てる行為を恐れ過ぎてはいけない」と私を論しました。その言葉が、その後の私にどれほどの影響を与えたか。私は、この歳になって演出等をする際、良いモノは持っているのに売れる所まで行き切れていない役者さんに対し、もれなく監督の言葉を引用させて頂いております。簡単に言うと、もろに真似をさせて頂いている訳です。でも、実際は私も捨てられなかった訳で、捨てるふりをして逃げてしまったのですから、容易な作業ではないんです。それは、キャリアを積めば積むほど困難になります。だって、無駄に知恵が付いてしまう訳ですから。そういった観点から見ると、子役さんを扱うほうが楽なんですよね。

だって、持っているモノが無いんだから。真っ新な上に素直ときたもんだ。与えれば与えるだけ、スポンジのように吸収してくれますからね。でも、突き詰めると役者さんって、その作業を延々と繰り返すことが本来の仕事なのかもしれません。だって、子供は素直だから何でも吸収してくれると言いながら、結果的に私の色は付く訳です。で、その後に私が付けた色を大事にし過ぎると、間違った形で大事にし過ぎてしまうと、次に出会った監督が違和感を覚えるかもしれない。で、私が付けた色を何とかして真っ新に戻し、そこから新たに色付けしていく…。何年か前に、『シャ乱Q』のつんく♂さんと「どんな子をオーディションで選びます?」という会話になった際、色が付き過ぎていない子、余白がある子…で意見が一致しました。やはり演出、プロデュースする側の生理といいますか、足りないモノ、欠けているモノの穴埋めをしたがるのが、演出する者の本能なのかもしれません。




となると、演出される側、プロデュースされる側の役者やタレントさんは、どんなにノウハウを知ろうが経験を積もうが、いつでもどこでも限りなく真っ新な、白に近い状態に戻せる能力を持つに越したことはない。とはいえ、どうにもならない監督さんもいらっしゃいますからね。そういった時は素直なふりをして、実際は右から左へ聞き流すという大人な術も必要になりますが…。素直さと純粋さを維持しつつ、大人な術も時には必要か…何か面倒臭いな。偉そうなことを2週にも亘って書き連ねてしまいましたが、以前にも綴ったように、私が捨てる作業が何とな~くできたと思えた瞬間は、バラエティー番組でしたから。40年近く役者として培ったモノを捨て、バラエティー界に身を委ねる。要は、役者という肩書きを一度捨ててみる。もっと言えば、裏切り者になるぐらいの気持ちでしたかね。でも、今になって思えば、単に役者として培ったモノをバラエティーで自分なりに生かしていただけなんですよね。捨てたモノがあるとするならば…それはプライドです。私、恐ろしいまでにプライドが高いクソ野郎なので。でも、一回捨ててみました。そしたら新しい同志ができました。新たな闘う場所を頂きました。嬉しいですが、とっても怖いです。


坂上忍(さかがみ・しのぶ) 俳優・タレント。1967年、東京都生まれ。テレビ出演多数。子役養成に舞台の脚本・演出等、多方面で活躍中。


キャプチャ  2017年8月10日号掲載

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