【慰安婦・靖国・戦争責任】(04) 慰安婦問題、日本だけを処罰する歪んだ“論理”

朝日新聞は2014年8月5日付朝刊で慰安婦問題特集を掲載し、過去32年間で16回掲載した吉田清治氏の「慰安婦を強制連行した」との証言を虚偽と判断して記事を取り消した。また、女子挺身隊と慰安婦は別であることをはじめて認めた。そこで朝日新聞は、「朝鮮や台湾では軍などが組織的・強制的に連行した資料は見つかっていない。しかしインドネシアなど日本軍占領下にあった地域では資料が確認されている。いずれにしても、本人の意に反して慰安婦にされる強制性があったことに変わりはない」としたのである。ようするに、「国家による強制連行はなかったが、各種の強制性があったことは確かだ」としたのである。『河野談話』とほぼ同じ見解である。しかし、そうした見解は韓国にもアメリカにも以前からあったもので、朝日新聞も先刻承知だったはずである。

韓国の『国定中学校国史教科書』1996年度版では、「女性までも挺身隊という名目で引き立てられ、日本軍の慰安婦として犠牲になったりした」としていた。しかし2002年度版では、『勤労報国隊』『女子勤労従軍挺身隊』と『軍隊慰安婦』とをはっきり区別して叙述している。アメリカでは2007年6月、下院外交委員会で“従軍慰安婦”に関わる対日非難決議がなされた。その際、米国議会調査局は審議資料として提出した調査報告書のなかで、「日本軍や日本政府による組織的強制徴用はなかった」との見解を示している。彼らが現在問題としているのは、強制連行でも慰安婦制度そのものでもない。日本軍は人身取引によって慰安婦たちを性奴隷とし、慰安所をレイプセンター(性暴力の場)にした――ということである。アメリカ下院外交委員会(及び下院本会議)の対日非難決議文では次のような表現となる。「日本政府による強制の軍隊売春制度“慰安婦”は、集団の性的暴行や強制流産・辱め・身体の切断や死亡・究極的に自殺を招いた性的暴行など、残虐性と規模で前例のない20世紀最大規模の人身売買のひとつだ」。また同決議文は『下院の共同意見』のなかで、「日本軍が強制的に若い女性を“慰安婦”と呼ばれる性の奴隷にした事実……」と、明確に性奴隷との認識を示している。何を根拠とする主張かというと、国連人権委員会が1995年3月8日に採択した『クマラスワミ報告書』である。この報告書は複数の元慰安婦たちの“証言”を載せているが、きわめつきは平壌で一北朝鮮人元慰安婦が語ったとされる次のような内容の“証言”である。




「日本人守備兵の1人に襲われ、トラックで警察に連れていかれた。そこで数人の警官にレイプされた」
「恵山市の日本陸軍守備隊に連れて行かれた。そこに朝鮮女性が400人くらいいた」
「毎日、5000人を超える日本兵のため性奴隷として働かされた。1日に40人の相手をした」
「少女を裸にして手足を縛り、釘の出た板の上にころがし、釘が彼女の血や肉片でおおわれるまで止めなかった。最後に少女の首を切りおとした」
「(日本軍兵士が)『朝鮮人の女たちが泣いているのは食べるものがないからだ。この人間の肉を煮て食べさせてやれ』といった」
「少女の局部に熱した鉄の棒を突っ込んだ」
「少女の半数以上が殺害された」

北朝鮮政府の命を受けての作り話なのは明らかで、とうてい信用できるものではない。にもかかわらず、こうした類の不誠実で検証もされない“証言”が、性奴隷・性暴力・人身売買などの根拠とされている。それはなぜなのか、というところに“従軍慰安婦問題”の本質が潜んでいる。

国連人権委員会・アメリカ・韓国などの日本非難のやり方は、かつて連合軍諸国が一方的に東京裁判で、また確かな証拠もなしにBC級戦犯裁判で、日本人の戦争犯罪・人道的罪を裁いたのと同じ性質のものである。あるいは、米占領軍の日本占領政策の1つ、『ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム』(日本人に戦争犯罪の意識を刷り込む情報宣伝計画)の延長にある対日政策ともいえる。かつて連合軍諸国は日本の性奴隷制を問題にできなかったが、“被害者の声”が上がってきた今、これを受け止めて日本にその責任を問わなくてはならない……。そうしなくては“日本帝国が犯した罪”のすべてを裁いたことにはならない……。東京裁判史観、あるいは戦勝国側に立つ“連合国イデオロギー”は今も厳然と生きている。戦時中に日本が犯した非人道的な罪を裁くのが主旨だから、BC級戦犯裁判と同じに不確実であろうと何かの証言や伝聞があれば十分なのである。アメリカも韓国も、日本の“従軍慰安婦問題”はなんとしても「残虐性と規模で前例のない20世紀最大規模の人身売買」と位置づけておかなくてはならない。そうでなくては、日本だけを処罰することができないからだ。他の諸国の慰安婦は、強制や人身売買ではなく個人の自由意志でなったものと見なす。だから国際法に違反していないと自分たちを問題の外に置こうとする。“従軍慰安婦問題”の中心にあるのは日本だけを特別に処罰しようとする対日政策であり、その思想が“連合国イデオロギー”である。

“連合国イデオロギー”は意図的に無視しているが、正しい意味で問題の根本にあるのは、「貧困であり続けてきたアジアの農村」と「戦場における男の性の暴発」という2つの歴史的事実である。貧困アジアの農村では、どこでも飢饉のたびに失政のたびに、また国土が戦争や内乱の被害を受けるたびに、家族の女たちが身体を売らずには生きてはいけなかった。そんな歴史が何百年も続いた。いや、今なお現実のものとしてある。アジア諸国の都市の街角に立つ無数の女たちが、そしてアジア各地から先進諸国に出稼ぎにやって来る多くの女たちが証明していることだ。アジア的な貧困の極致では、ごく普通の娘たちが自分の力をもって家族とともに生きようとしたとき、必ず性の問題が出てくるという歴史と現在を真摯に見つめなくてはならない。いうまでもなく、自らの性を売ることによって自分と家族の生活を支えることができるからである。決して私的な金銭が欲しいからではない。近現代でいえば、父親が病気のため自分が家計を支えるとか、兄や弟を上の学校に行かせるとかが主目的の、家族のために彼女たちが選択した(させられた)人生なのである。人身売買が法律で禁止されていたとしても、娘の身体を売る以外に家族がともに生きる方法をもたない多数の人々があった。だから悪質な不法ブローカーが横行した。日本軍・政府が彼らを厳しく取り締まった証拠はいくらでもあるが、彼らを利用した証拠は見当たらない。韓国も“連合国イデオロギー”もそのことをあえて無視している。

戦場という異常空間のなかでは、男の性が慰撫されることがなければ、兵士による強姦など性暴力が蔓延し、兵士による民間人虐殺事件が多発する。これが過去現在にわたって人類が共通に体験してきた現実である。朝鮮戦争中、韓国は『特殊慰安隊』という米韓兵士用の慰安婦制度を設けていたが、その設置目的には「……長期間の対価なき戦闘で後方来住がなくなることにより異性に対する憧憬が惹起され、その生理作用により性格の変化などの憂慮症及びその他の支障をきたすことを予防するため」とある。その通りである。だからこそ日本軍も韓国軍も諸国の軍隊同様に慰安所を設け、極力性暴力などが起きることを防いだのである。慰安所のなかった朝鮮戦争初期には、米韓兵士による非道な強姦事件が多数起きている。ベトナム戦争のとき、米軍は慰安所を設けなかった。韓国軍は設けようとしたが、米軍の反対で実現しなかった。ベトナム戦争時に米韓兵士、とくに韓国軍兵士による強姦・性暴力が、民間人大量虐殺があれほどにも多発したのは、慰安所がなかったことに最大の原因が求められるだろう。“従軍慰安婦問題”では、以上の2つの歴史的事実が根本にある最も重要なことだ。しかし“連合国イデオロギー”は、この2つを自己正当化のための言い訳に過ぎないと切り捨てる。そうしなければ日本だけを処罰することができなくなるからである。 =おわり


呉善花(オ・ソンファ) 評論家・拓殖大学国際学部教授。韓国済州島生まれ。東京外国語大学大学院博士課程修了。著書『攘夷の韓国 開国の日本』(文藝春秋)で第5回山本七平賞受賞。『私はいかにして“日本信徒”となったか』(WAC BUNKO)、『日本人として学んでおきたい世界の宗教』(PHP研究所)など著書多数。


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