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【異論のススメ】(31) 小池劇場の意味するもの…“改革”の出し物で終わるな

安倍首相が衆議院を解散したその日に、民進党議員の希望の党への合流が決定した。民進党の無残な崩壊である。唖然とする他ないのだが、こうなると、民進党も些か哀れを誘う。他方で、この間、メディアを殆ど意のままに動かして話題を独占した小池百合子氏の、いってみれば無責任な興行師のような荒業には驚くべきものがあろう。本紙を中心とした幾つかのメディアは、安倍首相の解散に対して「政権の生き残りだ」とか「大義が無い」とかと批判していたが、反安倍連合のほうは最早大義どころではない。議員の生き残りと権力闘争を剥き出しにした感がある。小池氏は、繰り返し“改革”を唱える。“改革する保守”ともいう。“保守”には漸進的な改革も含まれるが、“リセット”となると“革命”に近くなる。しかも、“改革”とはいっても、一体何を改革するのかはよくわからない。少し振り返ってみよう。“改革”は、1993年に小沢一郎氏が自民党を飛び出して新生党を作った時から始まる。敵は自民党と官僚であった。自民の一極支配、官僚中心型政治の終焉を訴え、政治改革・行政改革を唱えた。「日本に民主主義を根づかせる」というのである。その為に、2大政党による政策選択・小選挙区制・官僚主導から政治主導へといった構想が打ち出された。続いて、2001年に誕生した小泉純一郎首相は、徹底した“構造改革”を唱えた。彼は自民党にありながらも、「自民党をぶっ壊す」と言い、“抵抗勢力”に対抗し、メディアを動員して国民の支持を調達するという“劇場型政治”を行った。その後、反自民勢力は民主党へと結集し、民主党政権が誕生する。民主党が訴えたマニフェスト選挙は、2大政党政治や政策選択選挙等の“改革”の中心であり、“民主主義の実現”を目指すものであった。続いて出現したのが、橋下徹氏の率いるおおさか維新の会と、その後継の日本維新の会である。ここでもまた、橋下氏は大阪市議会や市役所の既得権を敵として名指し、ひたすら“改革”を唱えた。

25年、つまり四半世紀にも亘って、日本の政治はひたすら“改革”によって動いてきたのである。しかも、メディアがそれを後押しした。で、それは何を齎したのだろうか? 2大政党による政策選択も小選挙区制も、ほぼ失敗であった。マニフェストも失敗した。官僚主導政治は随分と批判されたが、実際には「官僚機構が機能しなければ政治は機能しない」という当然の帰結に至っただけである。小泉氏の郵政民営化も上手くいっていない。経済構造改革は、景気回復どころか、寧ろデフレ経済を齎した。更に言えば、“国民の意思”を実現するという民主主義は、専ら“劇場型政治”と“ポピュラーリズム(人気主義)”へと帰着した。「“改革”は殆ど失敗してきた」と言う他ない。日本社会の将来へ向けた“希望”を齎したとはとても思えない。しかも、“改革”を唱えた人の多くは、元々自民党の有力政治家であった。小泉氏を除いて、彼らは自民党を飛び出して、反自民を掲げたのである。これが“改革”の実態である。言い換えれば、自民党や官僚に対する権力闘争こそが、その関心の中心だったようにも思われる。何故なら、反自民の側は、決して自らの国家像や日本社会の将来像等という大きなビジョン等に関心を持たなかったからである。しかも、“構造改革”を始め、自民党の側も“改革”を断行したのである。そして今、また小池氏の登場である。“改革”という演目の“劇場”が開かれた。そして、懐かしい面々もちらっとゲスト出演している。小沢氏から小泉元首相まで顔を並べている。一時は、小池氏が都知事を辞めた場合の後任に、橋下氏の可能性まで報じられていた。元々自民党に所属していた小池氏は、憲法や安全保障についての考えは自民党や安倍政権と大差はない。これでは、本当の意味で政策選択の2大政党政治など生まれる筈はない。“国民の支持”なるものを人質にした権力闘争のように見えてしまうのだ。端的に言えば、安倍首相を引きずり下ろし、軈ては自らが政権を取るという野望をここに見てしまうのは、穿ち過ぎだろうか?




今回の選挙は、実は大きな政策上の選択の筈であった。いや、日本の方向を左右する大きな論点があった筈だ。安倍政権は、兎も角も1つの方向を打ち出していた。国際社会の中で日本のプレゼンスを高める。その為に、グローバル経済や新分野のイノベーションを推進し、経済成長を可能にして、日本経済の国際競争力を強化する。また、日米関係の強化によって北朝鮮に対抗し、安全保障を万全にすべく憲法改正へ向けて準備する――。これが安倍政権の基本方針である。それに対抗する政策を打ち出すのが野党の役割であろう。その為には、「少子高齢化へ向かう日本社会の将来像や、混乱する国際関係の見取り図や、戦後日本の国家体制(※憲法と安全保障)等をどうするか?」という極めて重要な問題がある。野党はそれから逃げている。それを避けて、「“改革”の出し物で“劇場”を作って国民を動員すればよい」等というのでは、政治は茶番になるだけである。


佐伯啓思(さえき・けいし) 1949年生まれ。京都大学名誉教授。保守の立場から様々な事象を論じる。著書に『反・幸福論』(新潮新書)等。


≡朝日新聞 2017年10月6日付掲載≡



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テーマ : 小池百合子
ジャンル : 政治・経済

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