【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(133) “現状維持”の与党と“反安倍”だけの野党…この国にリアリズムはない?

前回のコラムの最後で、「自民党がこれまでやってきたこと、そして今回の衆院選で掲げた公約の多くは、日本の現状を打開する本質的な施策ではなく、“延命治療”に過ぎない」と述べました。その点について、もう少し掘り下げてみましょう。例えば、「消費増税分を子育て支援に回す」という話。勿論、やらないよりはやったほうがいいでしょう。ただ、実際には少子化問題の構造は相当複雑、且つ深刻です。敢えて厳しい言い方をしますが、皆さん、本当に“この程度のこと”で「子供を産み易くなる」「少子化は解決へ向かう」と思いますか? 或いは、“自衛隊を憲法9条に書き加えるだけ”の消極的な改憲案もそうです。自衛隊の存在を憲法で認めるかどうかという、外国から見れば全く訳がわからない議論に終止符を打つことには、1つの意味があるのかもしれませんが、それで何かが打開できる訳でもない。あくまでも「現状を追認しましょう」というだけの話に過ぎません。

つまり、自民党は“国難突破”と言いながらも、提示しているのは“現状維持案”なのです。「今日と同じ明日が永遠に続いてほしい」という切なる(※しかし現実的ではない)願いを抱く人々に向かって、「これだけは食べましょうね」と説得しながら、元の形がわからなくなるほど煮込み、栄養価も大半が失われた流動食を与えているようなものでしょう。では、それに対して野党は何を国民に提示したかといえば、残念ながら突き詰めれば“反安倍”という点で熱くなっていただけでした。例えば、日本を取り巻く経済的問題は、先ずグローバリズムによる世界的な格差の拡大があり、そこに少子化が加わって複雑化しているというのが基本線の筈です。これは、安倍政権がい良いとか悪いとかいう類いの問題ではない。また、憲法改正の議論にしても、その背景には北朝鮮問題や中国の軍拡という地政学的な変化があるのに、立憲民主党は「安倍政権には改憲させるな」という奇妙な論陣を張るばかりでした。安倍首相を嫌うのは構いませんが、「安倍政権のせいで日本社会が悪化している」と言うのは、率直に言えば『ドン・キホーテ』の風車に向かって突撃する主人公のようなものです。




こんな物言いで若し政権交代を実現したとしても、安倍政権に不満を抱く人々が幸せになるような社会を実現できる筈がありません(※首相が安倍さんではなくなっただけで幸せを感じる人はいると思いますが、その幸せは長続きしません)。与党も野党もそんな状態ですから、選挙戦で小泉進次郎氏の言動があれだけ注目されたのも無理はありません。マスコミの追及から逃げる安倍首相と、ある程度本音を言う(※少なくともそう見える)自分をコントラストさせて、“党内野党”的な立ち位置を確保していますから。「格差? 縮まりっこありませんよ。少子化? もう移民しかありませんね。戦争? まぁ、この時代ですから起きるかもしれませんね」――。このくらい“現実的”なことを言って議論を焚き付けるニュータイプの政治家が出てきたら、たとえそれが筋金入りのポピュリストだとしても、日本社会は一気に揺さぶられてしまうのではないか? そう思えるほどリアリズムの無い選挙戦でした。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)等に出演中。


キャプチャ  2017年11月20日号掲載

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