もう1つの火薬庫…『吉田調書』“誤報”で朝日はもはや生き残れない

従軍慰安婦報道に続き、朝日の新たな火薬庫になりつつあるのが、『吉田調書』“誤報事件”だ。福島第1原発の吉田昌郎所長に取材し、現場の壮絶な死闘を描いたノンフィクション『死の淵を見た男』の著者・門田隆将氏が朝日の欺瞞を糾明し、その終焉を予見する。

「日本のマスコミも、まだまだ捨てたものではない」。私は今、しみじみとそう感じている。そして同時に、マスコミ・ジャーナリズムの世界が、“新しい時代に入った”ということを改めて認識させられている。それは、“真実”をそっちのけにして、自らのイデオロギーや主張に沿って大衆を誘導しようとする“朝日的手法”が通用しなくなった、という意味である。その点で、ここのところのマスコミ各社の朝日糾弾記事の意義は大きいと思う。






朝日新聞が、政府事故調による『吉田調書(聴取結果書)』を入手したとして、「所長命令に違反して9割の所員が撤退していた」という大キャンペーンを始めたのは、5月20日のことだ。以来、3ヵ月。事態は急展開した。それは、おそらく当の朝日新聞も予想しないことだっただろう。8月18日からの産経新聞、そして8月30日からの読売新聞と共同通信……。各メディアは、近く政府から公表される吉田調書を独自に入手し、次々と中身を報じ始めたのだ。そしてそれは、はからずも朝日報道の“全面否定”となった。朝日の最初の報道を見て、ただただ溜息をついていた私は、この各メディアの踏ん張りに少しほっとした。

従軍慰安婦報道の一部撤回につづく、吉田調書の“誤報事件”は、朝日の致命傷になると私は思う。それは、ひたすら日本と日本人を貶めることに血道を上げてきた朝日新聞の本当の姿が国民の前に明らかになるものだからだ。私は朝日新聞が今後、日本で生き残ることは「もはや無理だ」と思っている。なぜなら、中国や韓国の報道機関ならいざ知らず、朝日のこの姿勢が真面目にこつこつ努力してきた大多数の日本人に今後、「受け入れられるはずがない」からだ。今回の朝日の『吉田調書』報道がいかにひどいものであったか。私はそれを具体的に記しておきたい。

私は大々的に始まった朝日新聞の5月20日の吉田調書の記事を見て仰天した。1面トップで《所長命令に違反 原発撤退》《福島第1 所員の9割》と報じ、2面にも《葬られた命令違反》という特大の活字が躍っていた。私は吉田氏当人と部下たちから証言を得て、『死の淵を見た男――吉田昌郎と福島第1原発の500日』を震災翌年に上梓している。そこで、有史以来最大の日本の危機となった2011年3月15日朝の模様を詳述している。私が取材した現場の人々は、約90名に及んでおり、そのため、あの2F(福島第2原発)への退避が命令違反でないことを私は知っている。

あの時、1F(福島第1原発)で最も安全な免震重要棟には、総務・人事・広報など、女性を含む700名ほどの所員がいた。急速に進んだ外気の放射能汚染のために、脱出の機会を失っていたからだ。だが、前日から2号機の圧力が急上昇し、注水も叶わず、格納容器爆発の危機が刻々と迫り、吉田所長は、「一緒に死んでくれる人間」の顔を思い浮かべ、これを選別するところまで追い詰められていた。この時、現場で作業に従事する者以外を一刻も早く退避させたかった吉田氏は、東電本店と2Fとの間で繰り返し協議をおこなっている。そして2Fへの退避について、当日の午前3時過ぎには、本店で“退避の手順”が決められ、「健常者は2Fの体育館へ」「けが人は2Fのビジターへ」という具体的な退避先への“建物”まで指示する文書が伝えられていた。つまり、2Fへの退避は、すでに“決まっていた”のである。

しかし、これを所員の“全面撤退”だと誤解した官邸が菅首相を筆頭に東電本店に乗り込み、「東電は撤退したら、100%つぶれる」「逃げてみたって逃げ切れないぞ!」という有名な演説をぶつ事態となる。そして、その直後に、衝撃音と共に2号機の圧力抑制室(サプチャン)の圧力がゼロになり、吉田所長は、「各班は最少人数を残して退避!」と叫び、決められていた手順に沿って退避が始まったのである。これらの現場の事実を知っている私には、朝日が「命令違反の撤退」という真逆のことをなぜ書くのか、理解できなかった。

そしてその朝日の記事をじっくり読んだ私は、さらに驚いた。その吉田証言の中に、「命令違反による撤退」という朝日が主張する“ファクト”が存在しなかったのだ。命令違反というなら、吉田所長によって、「2Fには行くな」、つまり、「1F構内にいろ」という命令が出て、それが部下たちに伝えられたことが必須条件となる。それを無視して部下たちが“2Fに撤退”して、初めて“命令違反”が成り立つのである。しかし、当の朝日の記事が伝える吉田証言には、「本当は私、2Fに行けと言っていないんですよ、ここがまた伝言ゲームのあれのところで、『行くとしたら2Fか』という話をやっていて、退避をして、車を用意してという話をしたら、伝言した人間は、運転手に、福島第2に行けという指示をしたんです」というものがある。しかし、具体的に部下たちにこれが伝えられ、それが拒否されて、所員が2Fに撤退したというファクトが、いくら記事を読んでも、“ない”のである。それどころか、2Fへの退避について「その方がよかった」と吉田氏は証言している。すなわち、最初から「所員の9割が命令違反をして撤退した」という根拠は、朝日の伝える吉田証言の中にすら“存在しなかった”のだ。朝日の報道は、吉田調書の“言葉尻”を捉えたものであることは想像できたが、その言葉尻ですら“命令違反による撤退”は成り立たないのである。

そして私は、8月上旬、産経新聞が入手した『吉田調書』でコメントを求められ、調書の全文を読ませてもらった。その中には、部下が命令違反で“撤退”したどころか、部下の勇気を讃え、さらにはバスを用意して2Fに向かわせたことが繰り返し出てくる。「関係ない人間(筆者注:その時、1Fに残っていた現場以外の多くの所員たち)は退避させますからということを言っただけです」「バスで退避させました。2Fの方に」……そんな吉田証言が次々と出てくるのだ。「これは、なんだ……」。私は吉田調書を読んで、吉田さんの真意を踏みにじり、その部下を貶める朝日の手法に怒りが湧いてきた。こういうジャーナリズムが果たして存在していいのか、と。私が予想していた通り、吉田さんは、調書の中で部下たちをこう讃えていた。「本当に感動したのは、みんな現場に行こうとするわけです」。命を落とすかもしれない現場にそれでも行こうとする部下たちを讃える吉田証言を見た時、どこまでも彼らを貶めようとする朝日新聞に、私は言葉を失った。

《パニックになった作業員が命令に反して原発から逃げ去っていた》。世界中のメディアが朝日の報道を受けて、そう報じた。なかには、「これは日本版“セウォル号事件”だ」とするメディアもあった。朝日は、それで満足かもしれない。しかし、私は事実を捻じ曲げて日本人を貶めようとする新聞が今後、日本で生き残れるはずはないと思う。朝日新聞社長の『国会招致』が一刻も早く実現することを私は望む。


キャプチャ  2014年9月11日号掲載
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