【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(138) 東南アジアに広がる仏教ナショナリズムが“ジハード”の引き金に?

苦境に立たされているイスラム教徒の少数民族・ロヒンギャの問題で融和を訴える為、先月末にミャンマーを訪問したローマ法王のフランシスコは、滞在中に“ロヒンギャ”という言葉を口にすることはありませんでした。後に法王自ら「対話の道を開ざしたくなかった」と明かした通り、ミャンマー政府や国民の心情を“忖度”したのでしょう。改めて説明すると、同国政府はロヒンギャという呼称を使わず、彼らを“ベンガル人”と呼んでいます。「あくまでもバングラデシュからの違法移民であり、国内で保護されるべき存在ではない」と。そして、その政府の立場を、仏教徒である大多数の国民が支持しています。長らくこの問題に関して沈黙を続け、今もミャンマー軍による“強制排除説”を否定しているアウン・サン・スー・チー国家顧問に対し、世界の活動家らは「ノーベル平和賞を剥奪すべきだ」と厳しく批判しています。

ただ、抑々スー・チー氏は半分お飾りのようなポストにいる指導者であり、軍主導で行われているロヒンギャ虐殺について何か手を下せる立場にありません。現在のミャンマーにおける真の権力者は、ローマ法王とも会談を行った軍最高司令官のミン・アウン・フライン氏。若い頃から武勲を上げて出世を果たした人物で、反政府デモが起これば直ぐに鎮圧。中国との国境付近で少数民族が反乱を起こせば、虐殺も辞さぬ姿勢で対処してきました。今はその“殺しのマニュアル”を、最高司令官としてロヒンギャの村々でも実行しているのです。国内外で人気のあるスー・チー氏という“看板”を立てて、欧米や日本の資本を引き入れ、経済成長を実現し、国民を掌握。そして、マジョリティーの仏教徒にとって“異物”であるロヒンギャを徹底的に排斥しつつ、報道をコントロールして彼らの反乱を“テロ”と呼ぶ――。残念ながら、多くの国民は「これはイスラムテロとの戦いだ」というプロパガンダにまんまとハマっています。更に、ミャンマーと同じく仏教徒が多数を占めるスリランカでも悲劇は連鎖しており、先日もミャンマーから逃れてきたロヒンギャ難民の収容施設が、暴徒化した僧侶たちに襲われるという事件がありました。




スリランカでは、2009年まで続いた政府軍とイスラム反政府組織との内戦の過程で、“仏教ナショナリズム”が過熱。そこで生まれた過数派仏教徒組織『ボドゥバラセナ(BBS)』は内戦終了後、その矛先をマイノリティーであるムスリムの排斥運動に向けているのです。こうした流れを加速させているのが、ここ数年、東南アジアでも爆発的に広まった格安スマホによるインターネット環境の普及。“民族浄化”や“異教徒排斥”といったネタがマジョリティーの“娯楽”となり、それを一部の過数な仏教徒たちが実行動に移してしまっているというのが現状です。懸念すべきは、あの『アルカイダ』が既にミャンマー政府へ“宣戦布告”しているのに加え、『IS(イスラミックステート)』も近年は東南アジアのムスリムを煽動していたとみられること。仏教徒による排斥運動の反動で、一部のムスリムによる新たな“アジアンジハード”の機運が広がってしまえば、言うまでもなく、日本にとっても対岸の火事ではありません。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。『スッキリ』(日本テレビ系)・『みんなのニュース 報道ランナー』(関西テレビ)・『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)・『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送)・『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)等に出演中。近著に『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)・『悪くあれ! 窒息ニッポン、自由に生きる思考法』(スモール出版)。


キャプチャ  2017年12月25日号掲載


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テーマ : 国際問題
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