FC2ブログ

【私のルールブック】(131) 福岡を訪れると蘇る親父との思い出

私は今、福岡にいる。勿論、仕事で訪れているのだが、福岡に足を踏み入れると必ず子供の頃の記憶が蘇るのだ。私の亡き父親は福岡県大牟田市の出身でして、私が小学生の頃は福岡でも仕事をしていたらしく、よく連れて来てもらっていたのです。晩飯は必ずといっていいほど中洲の焼鳥屋でした。恐らく、行きつけにしていたんでしょうね。同僚の方と親父と、私。書き手として出版社の手伝いのような仕事をしていましたから、政治関係の難しい話を同僚と論じ、意味がわからない私は黙々と焼鳥を頬張る。ですが、一頻り話し終えると、同僚の方が親父の昔話をするのです。「君のお父さんは水泳が上手くてね、高校の頃は海に泳ぎに出掛けたもんだよ」。そうか、親父は水泳が得意なんだ。「喧嘩も滅法強くてね、4~5人ぐらいだったら1人で叩きのめしていたから」。そうか、親父は喧嘩も強かったんだ。

父親の武勇伝を聴いて喜ばない息子はいません。福岡競艇場にも連れて行かれたっけ。下駄の音を響かせて舟券を買う親父。横目で親父の舟券を覗き見ると、大体2点か3点の絞り買いでした。なので、当たれば儲けは大きいですが、払い戻し所に向かわずに終わることのほうが多かったように記憶しています。それでも親父は表情ひとつ変えない人でして、当たったのか外れたのか、負けたのか勝ったのか読み取ることが難しかった。焼鳥屋も競艇場も、私は只々親父の後をついて行くだけ。下駄の音を頼りに、はぐれないように親父は振り返って私の生存確認をするような人ではありませんでしたから。ただ、子供ながらに不思議に思うったのは、アパートを借りて住んでいたにも拘わらず、何故か私は近くのホテルに宿泊。まぁ、現地妻といいますか、親父にとって都合のいい女性がいたんでしょうね。当時のことは朧げにしか覚えておりませんが、今、ホテルの一室から見下ろす福岡の街並みとは、大きく違ったように思います。




何かこう、もっと雑多というか、危険な臭いがするというか、街全体に荒々しさがあったような気がします。景色というよりは、街を覆う臭いや空気の違いなのかな? そりゃそうか、競艇場ひとつ取っても、昔は現金を手渡しでやり取りしていた訳で、今じゃ券売機ですからね。話し相手もいなければ、八つ当たりをする相手も存在しない。私と親父も然り。東京に居を構えていながら、福岡や沖縄に仕事と称して足を運び、妻と2人の息子を持ちながら地方のアパートに現地妻を住まわせる。一方、息子も成人すると、親父を真似て無頼振ろうとするものの、中途半端なやんちゃで周りに迷惑を掛ける程度が精々で、気がつけば12匹のワンちゃんに愛情を注ぐ日々。親父が犬を飼っていたら、どんな面倒の看方をしていたんだろう? 毎朝散歩に連れて行くことは到底考えられず、気が向いた時に遠出に連れて行き、それでも「世話はお前がやれ」ってパターンかな? なんだよ、それじゃ私に対する接し方と違わないじゃないか。でも、恐らくそんなのでいいんでしょうね。いや、その程度で済ませるべきなのかもしれない。私にはできませんけど…。


坂上忍(さかがみ・しのぶ) 俳優・タレント。1967年、東京都生まれ。テレビ出演多数。子役養成に舞台の脚本・演出等、多方面で活躍中。


キャプチャ  2017年12月28日号掲載


スポンサーサイト

テーマ : 俳優・男優
ジャンル : 映画

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR