FC2ブログ

【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(139) メディアが拡散に加担したヒラリー・クリントンの“ウラニウムワン疑惑”

元来、人は信じたいものしか信じない――。このコラムで何度も指摘してきたことですが、その“習性”がSNS等の普及で、より強固になっていると感じさせられた1年でした。日本でも、マスメディアまでもが数字(※視聴率や部数)欲しさにその流れに迎合し、事実がねじ曲げられることが往々にしてあります。それを改めて実感したのが、ヒラリー・クリントン氏の“ウラニウムワン疑惑”に関する騒動です。詳細は後述しますが、この疑惑ははっきり言えば単なる陰謀論。しかし最近、ドナルド・トランプ政権とその提灯持ちの極右メディアが、まるでイカが墨を吐くように自身の疑惑から世間の目を逸らせようと、過去のヒラリー氏の疑惑を蒸し返しているという構図があります。先日、僕はこの問題を日本のあるテレビ番組で解説することになったのですが、正直言って困ってしまいました。あまりにもワイドショー的で真実が置き去りにされた“物語”に、逐一反論しなければならなかったからです。

ウラニウムワン疑惑とは、バラク・オバマ政権時代の2010年、カナダのウラン採掘企業である『ウラニウムワン』を、ロシア政府の原子力機関が買収したことに端を発します。アメリカのウラン鉱脈の5分の1を保有していた同社の買収を、当時のヒラリー国務長官が強く推し進め、その見返りとして『クリントン財団』は同社の大株主から多額の献全を手にした――という“物語”です。この陰謀論は、2015年に『ニューヨークタイムズ(NYT)』が記事にしたことで広く知れ渡りました。当時はヒラリー氏が大統領選挙への出馬を表明するタイミングでしたから、NYTはその注目度に乗っかることで記事が“ウケる”と判断したのでしょう。極右メディアの編集長による『クリントンキャッシュ』という乱暴な内容の書籍を基に、この“ネタ”を拾い上げたのです。ところが、インターネット上に公開された記事はいつまでも残ります。トランプ氏は昨年の大統領選でも、そして現在も、NYTのこの記事を頼りにヒラリー氏を攻撃し続けている。前述の日本のテレビ番組でも、ウラニウムワン疑惑は「あのNYTも認めた!」という売り文句で紹介されました。

NYTはつい先日、『国際原子力機関(IAEA)』元大使によるオピニオン記事を掲載し、ウラニウムワン疑惑をファクトベースで検証した上で明確に否定しましたが、最早後の祭り。アンチヒラリー派に根付いた風評は覆りません。番組終了後、『ツイッター』上では「クリントン擁護派のモーリーは信用できない」といった声が幾つも上がりました。それに対し、僕は「これだけの根拠があります」と英語記事のリンクを張ったり日本語訳をしたりと、20ツイートほどの反証を行ないましたが、それも読まずに攻撃してくる人もいた。「なるほど、“post-truth”はこうして生まれるのか」と身を以て知った次第です。凋落を食い止めようとセンセーショナリズムに走る大手メディア、そこに寄生するウェブメディア、それを娯楽的に消費する人々――。この時代においては、ごく小さな綻びが瞬時に広がり、ねじ曲げられた事実が拡散していくのです。メディア関係者はそれを肝に銘じるべきでしょう。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。『スッキリ』(日本テレビ系)・『みんなのニュース 報道ランナー』(関西テレビ)・『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)・『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送)・『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)等に出演中。近著に『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)・『悪くあれ! 窒息ニッポン、自由に生きる思考法』(スモール出版)。


キャプチャ  2018年1月8日号掲載
スポンサーサイト

テーマ : アメリカお家事情
ジャンル : 政治・経済

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR